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恒星間艦隊vs魔法王国 −2つの文明の相克−  作者: 林海


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第55話 魔術師の惑星規模での連携


 魔術師たちは、魔法技術のブレイクスルーに満足しなかった。

 というより、嬉々としていろいろとやってみずにはいられなかったのだ。

 魔素自体の移動ではなく、体内魔素の消費情報の波を共有することで擬似的に仲間の術を体験できるとなると、当然他心通以外の術を使う魔術師たちの間でも、同じ方法論でなにができるかの検討が始まった。


 まずは天眼通のアベル、その弟子のクロヴィスが中心となり、セビエやカリーズ、さらにはコリタスの天眼通の魔術師のディルクまで、この惑星の全天眼通の魔術師が簡易魔素炉に手を置き、体内の魔素の消費状態の波を遠隔共有し、複数の視界が共有された。

 直接手を取り合わなくても、簡易魔素炉を使えば魔素の波を送れるはずである。手紙程度までなら召喚と派遣を行えるのだから、より軽い手に現れる魔素の波など至極簡単なはずだった。そして、異なる術の組み合わせで質的相乗効果があったのだから、同じ術同士ならさらに高い成果が望めると考えたのだ。


 当然のこととしてリスクも考えられたが、多数で視界を共有しても、術に目覚めた時の暴走状態に比べれば負荷は軽いという見込みもあった。

 実験的試みではあったのだが、これによりこの惑星を周る天からの敵の偵察機はすべて、極めて短時間のうちに洗い出すことに成功した。


 魔術師といえど、1人の人間にできることは限りがあった。

 ましてや、月軌道の内側を隈なく見るなどとてもできない。どうしても、漫然と眺めることになってしまう。

 それが、エリアごとに注視し、怪しいものがあれば複数の目でしっかり観察するという体制ができあがったのだ。

 注視の質が上がり、見落としがなくなるのは当然の帰結である。


 天足通の術を使い、思いどおりに外界のものを変えることのできる力も、具体的なイメージが転送されることにより、遥かに精度が高いものが形作られるようになった。

 元々天足通の術は高度だったのだが、この惑星にはその高度さを活かすための完成した作図法や写真はない。作りたいものを、複数の人間で正確に共有する(すべ)はなかった。


 とはいえ、具体的なイメージを司る役のフォスティーヌが科学技術を理解していないのだから、偵察用ドローンそのものの複製などできはしない。形だけ真似て作れば動くほど、科学技術は甘いものではない。たかが電池1つとっても、化学の知識なしには作り上げることはできないのだ。

 それに、たとえハードが作れても、それを動かすソフトについては完全に魔術師たちの理解の外にあった。からくりが自ら判断するなど、一足飛びに思いつくはずがない。

 だが、それでも、天を廻る敵の偵察のからくりを欺く、風景の偽造をするのには十分な精度だったのだ。


 ここで初めて、ゼルンバスの王のからくりを騙すという考えが実行できる目処が立った。

「天を巡る敵の偵察機全部に、欺瞞の風景を流し込め。

 天から降る岩に送る風景との連携を忘れるな」

 ゼルンバスの王命で、簡易魔素炉に手を置き繋がった、各王室の玉座の間に集った天足通の魔術師が呪文の詠唱を始める。

 そのイメージは、同じく簡易魔素炉に手を置いたフォスティーヌの頭の中でまとめられており、各国の天足通の魔術師に分配されていた。


 フォスティーヌのイメージを転送された天足通の魔術師が、天眼通の魔術師の誘導に従って、天からの大岩に取りつけられたカメラの前に擬装風景を作り出す。

 当然細かい齟齬はあるもの、そんなことは構わない。たかだか数十秒騙せればよいのだ。

 同じものを繰り返し見るなどということは、できるはずもないことのだから。



 そして、ついに……。

 天からの大岩をゼルンバス王都の外れに落とし、完全な欺瞞と無被害を達成してまもなく、クロヴィスが叫んだ。

「初めて、初めて敵を見ましたぞ。

 大きな金属でできた2つの長細い箱に、500人ずつほどが乗り、こちらにまたもや6つのなにかを送り出して来ております」

「なにかとはなにか?」

 大将軍フィリベールの問いは早かった。


 おそらくこの瞬間、全天眼通の術の魔術師の目が、対惑星地表用弱装弾に向いていた。

 そして、即座にそれがなにか看破された。

 簡単なことである。

 敵の目的は破壊なのだ。とすれば、なにが送り込まれてこようとも、どう壊すかの差しかない。

 詳しいことはわからなくても、そこに莫大な力が秘められていることはわかる。

 爆発物。

 それで十分だった。


「こちらの街を破壊する兵器。

 ただし、天からの大岩に比べ、大きさは小さいものの遥かに早く、対処できる間は極めて短し」

 アベルが答えると、ゼルンバスの王が即座に命じた。

「引き続き、天を巡る敵の偵察機全部に、欺瞞の風景を流し込め。

 敵の目標の、6つの街を破壊して見せてやるのだ。

 それから、その6つの来たりくるものへの欺瞞はできるか?」

「天からの大岩と違い、残された時間があまりに少なく、そこまでは……」

 王の問いに、今度はフォスティーヌが答える。


 こちらに飛んでくる6つの飛翔体にも、やはりガラスの目がついていてこちらを見ているのだろう。だが、その場所を見つけ、欺瞞の材料を召喚派遣魔法で送るには、今の態勢をもってすら間が足りぬ。しかも、数が6つもあるのだ。

 フォスティーヌとて、練り上げねば6つも同時にイメージが作れぬ。


「では、この地に墜ちる寸前で、その場所をずらせ。

 被害を出さぬ、ぎりぎりの距離でよい」

「御意!」

 フォスティーヌの声が凛と響き、即座に各国の魔法省やそれに相当する組織の持つ魔素の吸集・反射炉で待機していた魔術師の呪文詠唱が始まる。彼らには、フォスティーヌの声と同時に、王の命令をどう具体的に果たすのかの指示も簡易魔素炉を通じて伝えられていた。

次回、ついに攻撃……

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― 新着の感想 ―
[良い点] 気になる所はありますけど、それ以上にこの先の激突が気になります。どう決着するんだろう… [気になる点] これだけ未来的な文明だと映像情報のファクトチェックは自動でAI解析してそうだけど、ア…
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