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将希の異世界日誌  作者: 雄太
第1.5部 その後
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テッシン

 

 野次馬と野次馬がアホの2人組の周りを取り囲んでいるとサンディの前のドアが開く。その影から赤茶色の髪がふわっと覗く。


「アマンダ遅くない?ギルド最高ランク冒険者を待たせる気?」


(これがサンディの本来の口調なんだへぇー意外)


 アマンダと呼ばれた女性はマリアより少し背丈は大きく胸は一回り小さいが女性が出ている。

 ベルに呼ばれて出てきたのか騒ぎを聞きつけてきたのか、わからないが面倒そうな顔でふらっと出でくる。


「サンディ様お久しぶりです。ギルドカードの更新ですか?」


 疲れた口調でビジネススマイルを見せる。


「アマンダ、疲れてるの?いつもより酷いわよ、いつもやる気はないけど目は生きてるのに今日は目も死んでる」


「後処理が大変だなーと思ったまでです」


 後ろで倒れているアホの二人組を見てつぶやく。


「あれは勝手に倒れたのよね大丈夫かしら?病気でも持っているのかしらね」


 アマンダもマリアはサンディが原因なのはわかっているがその物的証拠はない。

 サンディはアホ2人組にのみ殺気を飛ばす凄技を出し2人を殺気だけで失神させた。


 アホ二人組は自分が倒れたことに気づいてないし誰もサンディの犯行とは思わない。


「そうですか」


 サンディが殺人などやったらギルドの威信に関わるからとアマンドはそれ無視する。


 アホの2人などどうでもいいが、ギルド最高ランクのサンディが殺したとなるは話は別である。


「本部長呼びますか?」

「いえ、今日は下に行きたいの。」

「お連れ様は?」

「これもついでに」

「これって何よ」


「身分証は?」

「後で作るわ」

「ではこちらに署名を」


 アマンダはテーブルの下から紙切れを一枚取り出す。


「サンディ様のお名前とその下に陛下のお名前も」


 サンディはマイペンで全く読めない崩字を書いていく。


「マリーって呼んで」

「本名でお書きください。それと丁寧にお書きください」

「公的書類は全部こうなっているわ」

「左様ですか」


「私にも貸して」

「アマンダお願い」

「サンディのが良い」

「アマンダお願い」


 サンディは全く取り合う事はせず備え付けのペンを渋々借りるとマリアも本名を書いていく。


『マリア・K・マキシア』


 と丸っこい丁寧な字で署名する。


「職業もお願いします。」


 マリアはそれを『女王陛下』と自分で書く。


「何を悲しくて自分で自分が女王って書かないといけないの。」


「本来のお職業をお書きください」

「ビジネスジョークありがとうアマンダだっけ?」


「署名を確認しました。こちら入館書となります。」


 テーブルの上に設置されたカバーがかけられたボタンを押し立ち上がるとテーブルが二つに割れアマンダが出てきた扉が上に動き新たな扉が地面から昇ってくる。


「どうぞ奥へ」


 アホを取り囲んでいた野次馬からどよめきが広がる。


 ●


 壁の左側に暖色の裸電灯が等間隔に設置されている。サンディの足で約3歩で一個すぎていく。


 足音が後ろからも前からもカタっカタと反響し方向感覚を失わされていくが幸いなことにここは王城の隠し通路とは違い一本道である。


 そうこうしているうちに電灯は終わりを迎え室内と思われる白のライトに変わる。

 金属が金属にぶつかる甲高い音が前から響く。


 ドワーフが黒髭と白髭の2人が鍛治仕事をしている、黒髭のがハンマーを持ち白髭が地金を金属の棒で掴む。


「おう、サンディじゃねえか。女王陛下もご一緒とは珍しいなぁ。不吉なことでも起きそうだな、がはは」


 癖のある笑い方をしながら茶髭のドワーフが近づいてくる。


「テッシン久しぶりね。女王陛下に会えたのだから一生分の幸せを味わったと思うけど」

「俺の陛下じゃない。それにエルフの姉ちゃんにとっちゃ1年など一日に過ぎんだろか」

「失礼ね、私だってちゃんと日付感覚はあるわ」


 ドワーフのテッシンは立ち話は無駄だと言うように話を進める。


「そんなことより今日は何用だ?」

「こないだ手紙出したでしょ」

「あぁ、あれかスキル属性の入った小物が欲しいって話か」


 サンディはリベリシュに飛ばされる話をマリアから薄っらと聞いた時にドワーフ工房(サンディは便宜上そう呼んでいる)に防具の新調の依頼を出していた。サンディのプロモーションはサンディ本人の過酷な健康管理からかほとんど変わることがなく、採寸の必要自体ない。


「そうそれどうなった?」


 サンディはおもちゃを待つ子供のように目を光り輝かせるがテッシンの一言によりその瞳は光を失う。


「無理だ。その鎧は自分のスキルを上げる性能がある。変に取り付けらたおかしな事になる。だが代わり絶対必需品なら制作できた、見てみるか」


「見てから、決めよう」

「これだ」


 テッシンはテーブルの上からブレスレットのような元を取り上げる。


「これは?」

「着けて、起動と念じろ」


 サンディがその通り念じるとサンディの姿が一瞬にして黒い壁に覆われる

 サンディからはテッシンの姿が見えなくなり、テッシンからもマリアの姿が見えなくなる。


「おぉ便利ね」


 幕?と思われる物の中からはサンディの声が聞こえる


「そいつはまぁトイレ用に作ってみたんだ。やっぱりな、男だろうと女だろうと嫌なものは嫌だ。まぁ仕事柄仕方ねぇもんがあるからな。まぁ防音機能起動って念じろ、そうしたら音が漏れることもねぇし外から聞こえることもないついでに収納魔法も覚えていれば処分もできる・・・・」


 テッシンはそこまで言うと何か重大な欠陥があったことを思い出す。


「おっと解除の方法教えるの忘れたまぁ良いか直にわかるだろ。」


「あぁ、そうだ聞こえてないと思うがその幕?か、まぁいっか幕でまぁ、その幕叩いても剥がれないからなもし魔物にでも襲われた時にそれを起動したら時間稼ぎにはなるぞ。って言っても聞こえてないな。バックドアでも付けておくべきだったな。失敗失敗だなあはは。」


 と大笑いしながら自慢の髭をさする手がふと止まる。


「まじかよ破りやがった。実験じゃドウジンが適当にやっても破れなかったのに」


 ドウジンとはそこで鉄を打っている茶髭のドワーフのことである。白髭がハクギンと呼ばれている。

 防音の幕が破れサンディの手が出てくるが2人ともその手を取る気はない。


 中で何か騒いでいるようだがまだ防音効果は有効であるみたいだ。


「おっ、産まれた。生命の神秘ね」

「笑うな!」


 マリアがつい笑うとこじ開けて出てきたサンディが怒鳴る。


「説明をしろ!髭面!」

「説明はしたさ、ただ防音が作動した後に説明した。あはは」


「笑うな!だからだよ!」


「なぁ陛下殿ちゃんと説明したよな」

「えぇ、していました。防音が作動した後にですが」


 テッシンはマリアも巻き込み証拠固めをする。マリアがテッシンに付いたらサンディが手出しする事は難しくなる。


「他の機能は」


 サンディはこれ以上問い詰めても埃は出てこないと踏み諦め、話を他のことに切り替える。


「ない。俺がそんな面倒なとこしない」

「まぁだけど面白そうね、10個騎士団払いで」

「毎度あり。20万マキシアだ」


 売れてホッとしたのか笑みが溢れる。ギルド本部の売店でも試験販売として売っているが20万マキシアは少し高いようだ。まだ一個しか売れてない。

 買ったのはギルド本部副本部長であるガーネットである。ガーネットは副本部長としてよく全国各地を飛び回っている。


「高くない?」


 一瞬いいもと脳裏に浮かんだが高いと思い始めた。


「安い方だほんとなら30万マキシアは欲しいが顔馴染み割だ、それに不足分はギルドからもらう。ついでにその20万マキシアも水増しするがな騎士団に直接おろしたって事にして。あんたからも金はもらう。」


「クズだね」

「策略と言え。」


 2人は普段から水増しや不正、サバ読み、錬金術、いらない物の整理としてかなりの金をポケット入れているだからこそ相当共に密告などしないとわかっている。

 そうでなければこんな会話する事はないだろ。


「ねぇ、私がいるのわかってる?」


「今日持っていくのか」

「明日までに騎士団本部に届けてくれる。」

「ギルドの速達便を使うか、金はどうする。」

「今20万は払う。陛下の買い物の予算から少し出すわ、陛下の予算は国の予算よ」


「ねぇ、私が稼いだお金」


 実際マリアのお金は国庫から出た金ではなくマリアが裏でやっているファション系の仕事からのお給料である。流石に国庫の金を自分のために使うのは外聞が悪いと考え裏稼業をし始めた。それがかなり売れている。


「はい金貨20枚」

「1.2.3.4.5.6.7.8.9.10 ぴったりだ毎度あり。ついでにこれ持ってけ」


「これは?」

「俺が作った最高傑作」


 テッシンが取り出したのは短剣である刃渡り20センチほどだがサンディがそれを持った瞬間見た目からは考えられないほどの重量を手に受ける。


「重い」

「素材は?」

「それは言えねぇ。まぁドワーフの国の激レアな素材とだけ言っておこう。」


「じゃ貰っていくわ」

「そいつは使うのが難しいぞ」

「大丈夫よ私団長だから」

「それなんのアレにもなってねぇぞ」


 テッシンは少しばかし最高傑作の行方に心が揺れ動く。(取り返した方がいいかもしれないな)

 テーブルの上に乱雑に置かれた小物を片付けながら説明していると


「まぁ、そいつの特性は他にもあってな、自分の思ったように刃渡りが変化する。短くもなり長くもなり盾としても機能して剣のように噛ませた時に伸ばすこともできる。・・・サンディ?またか・・・逃げ足だけは早い奴らだ、あははは」


 ふと、テッシンが視線を上げるとそこには2人の姿はなかった。




『注釈』 


自分の思っているように変化すると言っても限度はあります。

刃渡りを長くし過ぎるとどうしての腹の部分が細くなり耐久性が落ちます。


一方剣の腹を太くすると斬ると言うよりも叩き潰すに近くなります。


盾としても使えるテッシンの最高傑作。


まぁサンディの使い方次第と魔力の純度や込め方で幾重にも変化します。



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