85話 団長室
「陛下、上に行きましょう。ここに居ては危険です。この者達がいつ襲ってくるかわかりません。私1人では全部斬り倒せないでしょう。」
「俺たちは猛獣ですか?」
「それ以外何があるの?。あっ、いや害虫ね、なら駆除しないと」
悪魔の笑い声と共に誰かの呟きは消え去った。
「では陛下上に行きましょう。」
「わかってるわよ、これで3回目よ」
「そうですか」
そしてなぜかマリアがサンディの事を先導し会場の外へ向かう。
「陛下、騎士団本部の見取り図をわかってらっしゃるのですか?」
「案内して」
そして飛び出てきた一言にサンディのストレス度がさらに高まる。
「そこを左です。階段を上がれば団長室が突き当たりにあります。私はその前にお花を摘みに」
と淡々に答える。
「サンディ?いつからそんな性格になったの?」
「今からですね陛下」
「なんかつまんなくなった。」
マリアは呟くがサンディはそんなこと耳に入れずにトイレに向かう。
マリアは言われた通り、右に曲がると急な階段を登っていく。
壁は誰かが破壊したのか蜘蛛の巣状の割れ目ができている。
「もしかしたら、サンディがストレスで?」
マリアの脳内に酔って殴りかかるサンディの姿が浮かんだが、そこまでするとは思えないと結論付けた。
「怒られる前に行かないとね」
階段を登り切ったマリアはそのまま突き当たりの扉に向かう。そこには団長室と白抜きで書かれたプレートが貼り付けられている。
「ここがサンディの自室?私も入ったことないのよね、遊びに来ても応接間に行かされるし。無駄に警戒心が強いのが玉に瑕ね」
恐る恐るその扉を開けるとマリアの視界には一面のガラスの窓が広がるこれが晴れていればどれほど良かったのだろうかと思うほどである。
サンディの自室は綺麗に整頓されているテーブルには使用履歴のない羽ペンが置かれている。その脇に普通のペンが置かれていることから愛用品はこちらだと思われる。
そしてその脇はマリアが絶対に視線に入れたくない物、つまり書類が置かれていた。サンディはこれを今日中に終わらせ残りを全てギムレットに押し付ける気である。
「私は何も見ていない。」
と言い書類から視線を逸らすとそこには棚がありその中にはいろんな茶葉が置かれている。
「王城の給湯室よりもいろんなものがあるわね」
王城の給湯室にもマリアが持ち込み夜な夜な、時々朝から飲んでいる紅茶やコーヒーがあるがここはそこよりも種類が豊富のようだ。
「まぁ、数で言えば私の方が多いけど」
サンディのコレクションはここに集中しているが、マリアのコレクションはいろんな隠れ家に置いてある。
給湯室も隠れ家の一つである。
大臣達が近寄らない場所は全て隠れ家みたいなものである。
メイド達の宿舎やこないだサンディを連れて行った隠し部屋、マリア以外知らない歴代国王の隠し部屋。
「触らないでいただけますか。」
そこへお花摘みからサンディが帰ってきた、入ってくるまでマリアは全く気づいてなかった。
紅茶のコレクションを手に取り眺めクンクン匂いを嗅いでいたマリアの背中は跳ね、口から出まかせに適当なことをほざく。
「サンディ、良いコレクションね、感動した、これほどの数集めるの大変だっでしょう」
「心にもないことを言わないでください。」
「そんな〜私だってコレクションはいっぱいあるわよ」
「私のはコレクションではなく実用的なものです。箱に入れたおもちゃや、ガラスケースに入った幻とは違います。」
「そんなことはどうでも良いのよね〜。さてどこ行く?」
「まずそれを置いてから話をしましょう。」
「頂いても?」
「はぁ、どうせダメと言っても聞かないのでしょ」
「ご名答〜」
とわかり切った拍手をしてストレス度を高める。
「どうぞ。淹れ方わかりますよね」
マリアは普段から自分で紅茶を淹れているがサンディのストレス度が高まった今そんな矛盾は関係ない。
「私を馬鹿にしている。一通り仕込まれてるわよ、それで、お湯どこ?」
技術はあってもブツがなかった。そもそも仕込まれているが気になるが。
「今、取り寄せます。」
「取り寄せる?」
マリアの疑問に答えることなく行動で示す。サンディはそのまま窓に向かうとそこにはカイブロスで使われている連絡筒があり
「ギムレット!お湯持ってきて!急いで」
「古典的ね」
「最新鋭の間違いでは?」
『ただいま持って行きます。何人分でしょうか?』
とやる気のない声が連絡筒から聞こえる。
「2人分お願い」
『かしこまりました。深読みはしません。お二人で楽しい時間を過ごしてください。きゃっきゃうふふ、多少の音は気にしません。』
「死にたいの?」
『・・・』
返答がない死んだようだ。
その後すぐにギムレットが手配したお湯がギムレットとは別のものが運んで来る。そしてその者は入ってきた瞬間、サンディから殺気を浴びせられ、急いで逃げていった。もしくはここに陛下義いることを知らなかったのか。
「てっきり。ギムレットが来ると思ったけど逃げたわね。」
「可哀想に、入った瞬間殺されるって思ったわね彼。」
マリアそう言うが本音は隠れているみたいだ。
「ここに陛下がいることを知らずにいたので驚いて逃げたのでは?」
と、サンディはマリアの本音がわかるのかやれやれと首を振る。
「私の美貌から?良いわね、それ」
「はい。そうだと思います。誰しもが陛下の美貌を見たら逃げ出します。恐れをなして」
「私って女王だから仕方ないわね。」
うふふと口元を抑え、笑っているが・・・目の奥は全く笑ってない。
「そうですか。やはり自覚はお有りで。もう少し口角を上げると威圧感を下げられ親近感が増すかと思います。普段から威圧感を出してると表情筋が凝り固まり、悲惨なこととなりえます。」
サンディは座っているマリアの前にかがみ込みその頬に指を当て口角を上げさせる。マリアはそれを手で跳ね除けるとサンディの口角をわざと下げて上下に揺さぶる。
「うぅ・・・そう言うサンディももっと笑ったら?今も男達から逃げられているじゃないの?こうやって口角を下げると威圧感が増ヶ増すわよ。増す増す」
マリアが手を動かすと、その双丘も腕の動きに合わせてぷるっと揺れる。サンディは見たくないものを見たのか視線を背ける。
「どうしたの?明後日の方向いて?。まるで自分にはないものを持った子供を見た子供ね」
「陛下に子供はいないはずでは?」
わかっている、だが、「ん?」とわざと首をかしげる。
「サンディは?出来た?」
「それで陛下どちらに買い物ですか?」
サンディは強引に話を変える。これ以上話していても時間の無駄と判断したようだ。
「なんか、強引に話を逸らされた気がする。まぁいいやそんなこと後で考えればいいじゃない。」
サンディはまともな答えが返ってくるもの一切思っていなかったがそれをさらに超えた頭を抱えるほど斜め上の答えが返ってくる。
「旅の楽しみは造られた工程じゃ見つからないよ〜サンディ、真っ直ぐな道を歩いてるだけじゃ、新しいもの、面白いもの、可愛いものには出逢えないのよ彼氏もね。途中の寄り道が楽しいのよ〜。無駄に見えてもそれは無駄じゃなっいの。わかる?まぁサンディはエルフだし一年を1日にも感じないのかもしれないけどね」
「別に一年は一年ですが?エルフだろうと体感は一緒です。寿命が長い分体感はそうなるだけです。それを人間は面白がりエルフが一年を1日しか感じない薄情者と笑い飛ばしているだけです。そんな者、私は切り飛ばしてますが。しかし多くの者は普通に日付感覚はありますがやはり少しズレていますが。私のように人間社会に溶け込んでいる者達は人間と同じような体感時間を感じていますが」
「・・・そ、そう。」(なんか変な地雷踏んだかも。)
流石のマリアも種族を超えてくると話に頭の回転が追いつかないようだ。普段こんな呑気で抜けているような感じだが、これでも女王。頭の回転はかなり早く、その分、違うことにも使える。主に脱走だが・・・。よく毎回思いつくのやら、そのおかげで大臣達は何故か陛下の姿を見ていないのに王城を抜け出した事ことに気づくようになってしまったがどこに行ったのかまではわからない。




