強制訓練
食堂の一角の壁には。
『リナスイーツ専門店』と書かれて小さな店舗がある。
しかしサンディの視線はその看板よりも先にある招かれざる客に向いている。
シュークリームを皿一杯に積み上げそれをバクバク食べている少し丸くなった将希が居た。
「あれ?サンディさんなんでここに?」
子供にとったら夢のような光景のお菓子の山から顔を上げる将希。サンディ目線では少し丸くなったように感じられる。そこまでの違和感は感じないが将希自身爪先が触りにくくなった自覚している。まぁつま先を触る事自体ほとんどないのだが。
「その言葉そっくりそのままお返しします。それで陛下まで何を?」
サンディが少し目を離した隙にマリアは将希と一緒にシュークリームを食べている。
何故こんなにも早く動けるのか謎だがほんの僅かな隙にサンディの監視を掻い潜りそこにいる。
そして多くのメイド部隊の隊員が休憩時間なのかスイーツを食べにきている。そのメイド達も少し太くなっているような気がする。そしてメイド用の戦闘服も何故か皆新品同様綺麗な状態だ。もしかしてここ最近新調したのかもしれない。
ここ最近メイド部隊が何故かサンディの元にやってきて騎士団の訓練に参加させてほしいと言われることが増えた。
サンディ自身、最初は不自然だと思っていたが害もないので参加させたが、今その疑問が解けた。
「来たら居たの、だから貰ってた」
マリアはまさしく前から居ました言った感じでサンディの問いかけに答える。その顔はきょとんとしていてより憎しみが湧く。
「餌付けですか・・・だからメイド部隊が訓練に参加したいって言っていたんですか。」
スイーツの食べ過ぎで太り始めたと・・・何をしているのやら。そんな理由で騎士団の訓練に参加してほしくないと思うがこれ以上太られてもまた別の意味で面倒ごとが増えるサンディはその狭間で悩む。
「将希殿、見てないうちに丸くなりましたね」
「え?」
自分では気づいてなかったのか将希は自分のフェイスラインを撫でるように触り、ぽこっと膨らんだ腹をつまむ。そしてその顔が一気に曇る。
「そう言えばそうですね、太りましたね」
あはは、とマリアは笑っているのがサンディの目には『同じだろ』と言う言葉が浮かんでいる。
「陛下もです。ここ最近メイド部隊が文句言ってますよ。採寸がズレてきて洋服を仕立てるのが大変だと、
」
流石のサンディもここは許容できないようだ。たとえ陛下であろうと、陛下のお身体を案じるのが臣下の仕事である。ついでに世継ぎもだがマリアにはまだその縁はない。
「さ。さあ?何の事。私知らない」
「わかりました。」
「わかってくれるサンディ。」
まるでサンディが慈悲深き天使のように見える。
「明日から食堂への出入りは禁止です。」
天使だと思って近寄って行ったら悪魔であった。マリアは逃げようとするがすでに捕まっていた。ついでに将希。
「リナちゃん居る?」
サンディはショーケースの向こう側にいるリナちゃんに声をかける。
「はい。はい?団長どうしてここに?」
サンディがここにくる機会はあまり多くない。食事を取る場合はほとんど自室に持ってきてもらうか外で食べている。たまに疲れた時にスイーツを食べにくる事はあるがお昼の時間帯にここを訪れる事自体が珍しい。
「悪いんだけど少しの間一人当たりの個数に制限掛けてもらっていい?」
サンディが食堂全体に聞こえるようにそういうとメイド部隊から『えっ?』と言う動揺の声が広がる。
それは波のように波及していく。
「メイド部隊が太り始めましたか・・・」
リナちゃんは何となく気づいていたのか、動揺のカケラも無い。自分の料理で太られるのは、困ると言った感じである。
「そう。ついでに陛下と将希殿も丸くなり始めてきたわ、坂道ならコロコロ転がっていきそうなぐらいに。」
サンディ達の脳内では転がる2人が再生される。
マリア達も同じような光景が浮かんだのか将希は自分の腹を摘む、マリアも同じようにフェイスラインを触る。
「わかりました、明日からは1人あたり1日2個程度でいいですか?」
あまり乗る気ではないが背に腹は変えられないそう即座に判断した。
「うん。そんな感じで良いや。悪いね、少しの間だから安心して」
「仕方ありません。もっとローカロリーなどを発明しますか。」
リナは次の料理に視線を向かす。
「「「サンディ様!横暴です!」」」
餌を奪われたメイド部隊は飢えた獣のような目つきでサンディに迫る。その中には将希や陛下も含まれている。
「痩せてから言いなさい。そもそも貴方達、ここ最近動きにくくなってない?」
押し寄せてきたメイド部隊の波はあけっなく散る。
思う節があるみたいだ。
「図星ね。」
メイド部隊が消えた、そして誰もいなくなった食堂に取り残された将希と陛下。
「陛下もメイド部隊の同じように騎士団の訓練に参加しては?」
サンディは、問い詰めるようにマリアに畳み掛ける。
「私〜少し用事が」
マリアは逃げようとするが何故か身体が前に進まない。
「サンディ、肩。やめてくれない」
「将希殿も逃げないでください」
マリアの細い肩をつまみながら、もう一方の手でしれっと逃げようとした将希も捕まえる。
「では行きましょう。2人は私が直々にお相手しますので、」
笑みをこぼす。それは命を狩られる時を感じさせるほどに凶悪な笑顔であった。
2人の命の灯火は今この時ついあることになるのだろうと直感で感じ体感で触れる。
●
マリアはサンディが将希は何故か呼ばれたギムレットが監視として付き、着替えを覗かれていた。
着替え終わり外へ出るとすでにメイド部隊がワジルの元で訓練に勤しんでいる。
「今までの自分に別れを告げろ!。太った醜い体とおさらばするんだ!良いか!」
ワジルが訓練に参加したメイド部隊に向かって声を張る。
「「「はい!」」」
一瞬変な宗教にでも迷い込んだと感じさせられる雰囲気だったが見慣れた3人が倒れているのを見て、普通の宗教だと将希は思う。
「気合が入ってますね。皆さんも国のために頑張ってください。」
マリアはいかにも陛下の視察という雰囲気を醸し出すがその格好はメイド部隊と同じものであり動きやすそうだ。少しお腹が見えついでにその胸も今日は苦しく無いようだ。
「陛下も参加するんですよ。私が鍛え上げてあげましょう。」
あんたも参加するんだと心のうちでは思ったが流石にそれは無礼に当たる。理性が止める。
「だそうです。将希殿もご一緒に如何ですか?」
「俺に振らないでくれ殺される。」
「私の事はマリアと呼んでくださいな。」
笑顔で将希の袖口を掴む。下から見つめられた笑顔は全てを破壊するほどの笑顔であった。
「それが殺されるんだよ」
「将希殿。陛下の要望です。」
にっこりと笑い、その目が諦めろと言っている。
陛下がそう呼んでと言ったら呼ばないといけない。サンディなら拒否も可能だが。
「そうですか、・・・考えておきます。」
「ヘタレですね」
「ヘタレですな。」
ほとんど同時にマリアは言う。
「さて、では始めますか、」
「いーーー良いと思いますよ、」
何で俺は言えないんだ、あと一言が。はぁ。
「ではまずストレッチから将希殿は陛下に触らないように。なのでギムレットを呼びました。」
「そのために私は呼ばれたのですか・・・」
ギムレット自身何故呼ばれたのか伝えられていなかったようだ。
「ええ、将希殿が汚い心で陛下に触れて良いと思いますか?」
「俺そんな汚く無いけど」
将希は綺麗だとは断言出来ないようだ。
「まぁ、そうですね、わかりました、では将希殿はまずは基本的な事からやっていきましょう。イロイロ教えますので」
「それがマリアだったらよかったのにね」
「あっ、名前で呼んでくれたの初めてですね」
「陛下も急いでください」
隙あらば逃げようとするマリアを捕まえサンディは少し離れる。
「では陛下、私が監視してますので、ちゃんとしてください」
「女王命令よ、監視をやめなさい。」
いつになく凛々しい表情でアホなことを吐かす。
「陛下の健康を守ることが部下の責務です。大変心苦しいですが無視させて頂きます。」
サンディはいつも通り真っ向から対立しマリアの背中を押して前屈をさせる。
「痛い!痛い!」
「この程度まだ序の口です。」
マリアの体はかなり柔らかく手のひら爪先に届いているがサンディはまだ不満なのかさらに力を込める。
「なんかすごい光景だな」
将希はマリアの窮屈に押し込まれた胸を凝視している。ついでにお尻のラインから背中首筋にかけて全てを目に焼き付ける。
「殺されますよ。将希殿は私も見たい気分ですが。それは命あってのことです。」
ギムレットもちらっと見ているが気づかれる前に止める。
「ギムレット、やりなさい」
「わかってます。将希殿が拒否してて」
「おい!」
「どっちでも良いから無理矢理でもやらせなさい。」
ギムレットはすぐさま将希の背中を押して全体重をかける。
「ギャャャャャヤ!痛い!痛い!ギブギブ!」
将希の体はまだ半分も曲がっていないが痛いと叫ぶ。
「将希殿、動かないで」
「嫌ャヤ!」
「あはは」
「笑うな!ギャャヤ!」
先ほどより少し曲がりは下が未だ斜め45°には至らない。ギムレットは将希の柔軟に諦めをつけてメイド部隊と同じく練習用の刃を潰した剣を渡し、一方的な打ち込みを始める。
マリアと将希そしてメイド部隊は少し太り始めました。
なんとなく思う節があるのだろう。
俺もあるなー。痩せたくてもね甘いものの誘惑には負けるんだよそれが。目の前にお菓子があると食べたくなる。
なら買ってくんな!・・・でもねレジに着くと何故かお菓子が入ってる不思議だなー。なんでだろ。
三大七不思議だなぁ。
いつの間にか、カゴにお菓子が入ってる件。




