75話 語り酒
サンディの名前の由来。
サンディ・オレストという名前はまだサンディに名字がなかった頃、時の王によって付けられた。
名字というものに何の意味もないと拒否したサンディだが押し切られ、『サンディ・フォレスト』と名字をつけられた。そしてフォレストが発音しにくかったサンディはフォレストではなくオレストと名乗るようになった。
「最初は善意だったんです」
ギムレットは酒のせいもあってかふらっと呟く。
「だろうな」
「最初の目的は、騎士団員である我々はいつ死ぬかわかりません。だから飲めるうちに飲んでおこうと言う使命感で始めたんですがね、」
「なんの使命感やら、」
ワジルは自分の娘の店を贔屓にしているからかそこまで強くは否定は出来ていない。
「茶化すなワジル。ギムレット次だ。」
「今まではなんのために飲んであるのやら、3連覇やら、殿堂入り、大酒飲み大会、もう一種の、余興かなんかになってしまいましたね、」
「そうだな。俺だって初代殿堂入り者だ!あはは」
「うるさい黙ってろ」
ワジルの高笑いがうるさいからとすぐに団長が止める。
「で、団長、機嫌がよろしいことは承知ですが・・・そのですね、そろそろ前を見て頂いた方がよろしいかと」
やっと自分が何をしに来たのか思い出したギムレットは2人を現実に引き戻す。
「せっかく見ないようにしていたのに・・・なぜ思い出させる、ギムレット!お前はバカか?」
団長はこめかみを叩くとすぐにグテーと夏の猫のように伏せる。
「俺もどうかと思うな、せっかく酒のおかげで気分よく話してたのに、現実に引き戻すなんて酷だと思うが、例えるならば・・・・なんでしょう?」
たっぷりと間を取るが結局答えば出てこない。2人は鈍い声を出す。
「あぁ、はいはい、チッ、起きますよ、起きればいいんでしょ」
団長はその重い重い重い腰をゆっくりと上げるがまだ座ろうとする。
「団長」
「わかったよ、少し疲れただけだ、座っていい?」
「団長」
ギムレットは団長を諭すようにそう言う。
「お前ら!起きろ!」
団長が疲れた目で叫ぶと団員達は『うぅ〜。あーぁ。』とゾンビのように起き上がる。
「アンデットだな」
「ゾンビでは?」
「空想の話だろ、私はアンデットは好きだなすでに死んでいるから気分よく斬れる」
アンデットとゾンビ、一緒のような気がするが・・・まぁ、団長には明確な違いがあるのだろう。
「・・・だんー長。頭が痛いです」
団長は足元に這っている、ゾンビに目を向けると団長は驚いたような目線を向ける
「誰かと思ったらカール?お前いつの間に脱獄出来たんだ?」
「ガキなら開いてましたよ」
カールは震える指で牢獄の鍵穴を示す、サンディはその指の先を見ると・・・・破壊されて、無惨にも浮いている牢獄の扉が視界に飛び込む。
「壊したのか⁉︎・・・・」
「だ、団長」
「ギムレットこいつもう一回牢獄に入れとけ、ついでに2度と開かないようにしとけ」
「団長、!」
足元で騒いでいる蓑虫は放置してギムレットにそう指示を出すとすぐにギムレットはカールを捕まえ牢獄に投げ入れ開かないようにドアの前に椅子を噛ませる。
「団長!助けてください!『ガンガンガン!』たすけて!」
カールは必死に牢獄に飛びつくがその扉が開くことは2度となかった。その後その店の店主がそれを見て商売を思いついた。
その名も 監獄食堂
個室を牢獄風に改装し実際に国立刑務所で出ている食事と同じものを出すと言う奇抜なものであったが不良児を抱えている親からは3泊コースが大変大人気である。一泊あたり2万マキシアだがその更生効果はかなり高い。と風の噂で聞く事となる。
団長はしっかりとアイデア料をもらっていた。
そんなことは置いておきゆっくりと立ち上がる団員達。
一部の三馬鹿と将希は窓から顔を出し虹を吐く。
王立騎士団副団長エリシアは何故かテーブルの上で踊っている。それを王立騎士団長ブラムが囃し立てる。
そしてその周りでは両騎士団員達が輪になり回転しながら踊っている。
そしてそのまた周りには野次馬が持て囃す。
「起こした方が厄介だ」
「起こさないのも面倒ですがね」
「どの道事件事故は免れませんな・・・」
サンディの疲れた言葉にギムレット等が続く。
「よし、ギムレット、お前は王立騎士団の方を躾けろ、ワジルはうちの奴らを黙らせろ、私は会計してくる一体いくらになるんだ?50万か?もっとか?まぁ、私の金じゃない。」
「よし、2列に並べれ!」
ギムレットが手を叩きそう言うと騎士団で調教された精鋭はすぐに並ぶ。
「速い、なさずか王立騎士団だ、いい調教がされている。一方・・・我らは座り込んで・・・躾直す必要があるなそれは後日派遣された奴に任せるか面倒だ。」
王立騎士団員はすぐに立ち上がり、2列に並ぶ。一方陛下直轄騎士団はサンディの言う通りフラフラになりながら2列に並び一部の団員は座り込み、将希はまだ窓に寄りかかり、三馬鹿は何故か窓から脚だけが見える。窓から落ちたようだ。助けてと先ほどから言っているが無視してる。
そして投獄中のカールは脚で上手くビール瓶を掴み持ってきたが空であった。
「あははは。あの瓶は私が空にしといたザマーミロあははは。」
支払いをしに行ったはずの団長だが何故かここにいる。
「団長支払いは?」
「今行く」
ギムレットは団長に指示し先頭に立っているブラムに目を向ける。
「ブラム、何故お前がそこにいる。」
「私は一部部下であります」
ブラムは敬礼する。
「なら今からお前がここの騎士団長だ」
「お前等帰るぞ!」
ブラムがそういい先頭をある出すと部下達はついて行く。
「お前達は違う!」
その列について行こうとした自分の部下を止める。
「団長がイライラする理由もわかりますな」
「だなワジル。ほんと厄介だ。」
団長がいないのを良いことに2人は上司の愚痴で盛り上がる。普段からこの2人は団長に振り回され、団長を振り回し散々な目に遭っている2人だからこそお互いに気を許して本音で話しているのだろう。
それをわかっているからこそ団長は、自分の不満を言っていることに気がついても、聞こえてないふりをしているのだろう今も壁の裏で聞き耳を立てている。
「私のことをバカにして、せっかく騎士団長としての私の辛さがわかって褒めてやろうとしたのに水の泡だな」
団長はそう呟きやっと支払いに向かう。
「会計頼む」
「かしこまりました。
ビールが204杯
ビール瓶が53本
蒸留酒が8本
ワインが12本
ハイボール5杯」
店員が会計を始めると団長の眉間に皺がこれでもかと言う勢いで増えていく。
「カブロスの焼き鳥が179本
アルゴスの唐揚げが29皿
ダグンダグンの揚げ物が35皿
コーヒーが12杯
グラタンが5皿
スイーツリナからの取り寄せのスイーツが25皿
それと
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
合計64万6583マキシアと
あと清掃費と修繕費が別途で入ります。」
瞬きのスピードがどんどん早くなる。
「わ・・・わかった全部王立騎士団につけてくれ」
「かしこまりました。」
サンディはその場を立ち去る。
前書き続き。
まだ人に苗字という概念がなかった頃、ある1人の人が自分の名前は「マキシア」だ!と騒ぎ出し始めた。
それがマキシア国初代国王であった。それから数百年は名字=直系の王族にのみ許されていたが、時の王は名字にそこまで執着してなかったために市民の間にも名字という概念が広まった。
サンディはいらないと拒否していたが時の王が勝手に名付けた。
エルフの森にいたことからフォレスト、森の意味を込めて サンディ・フォレストと今ではそのことを知る者はサンディとサンディの身内のみである。




