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将希の異世界日誌  作者: 雄太
勇者編
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怒り

 

 先代勇者の墓石の前に埋葬された勇者ディグラス。いや墓石の前に仰向けに置かれている。傍から見れば今から埋葬されると勘違いするだろう。それほどまでに勇者ディグラスを囲む3人の顔は浮かばれない。


「これ、このまま、埋葬しましょうか?」


 勇者の頭を持っていたブラムは墓石を見ながらそう言う。


「それはそれで後処理が面倒では?」

「それもそうだな、後処理が面倒だ」

「なら起こすしかないか、こんな勇者捨て置いても良いと思うがな、野犬にでも漁ってもらえば証拠も消えるだろ」


 勇者の死体を運んでいた2人の会話に団長が割り込んでくるが邪険にされる


「張本人が何を言っているのやら、ため息しか出ませんよ」

「本当に今度こそ団長、首切られますよ、」


「わかったよ起こせば良いんだろ起こせば」


 団長は悪態をつきながら勇者を起こしに向かう。


「起きろ、おーい、起きろー・・・死んでるみたいだな」


「ぶっ叩いて良いのでは?」

「手を上げたら後が面倒だ」


 ブラムにそう言われ団長は考える。


「あっ!水着着た巨乳がいる。」

「なんだって!どこだおっぱい!おっぱい〜!」


 水着着た巨乳、少し語順がおかしいような気がするがそれが聴こえた勇者ディグラスは飛び起きる。


「ジーーー」


 3人はそれを冷たい目でおっぱいを探す勇者を見る。勇者ディグラスはその3人と目がバッチリ合うと言葉を失う。


「・・・お、お前ら・・・」


「勇者の性癖など私は知りませんが少しどうかと思います。」


 そしてしばし無言の状態が続く。両者の耳に入るのは小鳥のさえずりと風が木々の葉を揺らす音のみ。




 その沈黙を破る胡散臭い勇者がいる。ここ最近サンディはコイツが本当に勇者の血筋かと思い始めている。



「お、俺は何故ここに・・・墓場?・・・」


 勇者ディグラスは首トンの影響で記憶が飛んでいるみたいだ、サンディが偽りの真実を話そうとするがその前にディグラスは叫ぶ。


「!お前は黙ってろ。お前に聞くほどクズない」


 屑はどちらでしょうか?


「思い出して来たぞ!俺は先代勇者の墓参りに来たんだった俺は先代勇者なんか好きじゃないがな!なんであんな奴が信奉されねぇーといけねーんだよ!」


 呆れて物も言えないとはこのことを言うのであるサンディはそう思った。良い加減話を進めろとサンディは口を挟む。


「お前はそこですっ転んだんだよ」


「俺がか?そんな馬鹿な、俺は勇者だ!そんなところで転ぶわけない!何わけわかんないこと言ってんだよ!セバス!早く来い手当しろ!俺の手当しろ!おい聴こえないのか!セバス!」


 血も何も出ていないがセバスと呼ばれる者を呼ぼうとしているがここにはこの4人以外誰もいない。


「ディグラス早くしてくれ時間が押してる、そろそろ戻らないと不審がられるぞ」


「うるさいんだよ!黙ってろ!このババア!」


「チッ。ここまでの屈辱を受けたことは初めてです。種族と言うものへの差別はありましたが私個人にそんな口を聞いたのはあんたが初めてだ!、幸いあんたの命までは奪わない、陛下にそう言われてる。お前さん良かったな」


 今までの恨みがここに来て爆発し始めたサンディはさらにぶち撒けようとするがそれを勇者ディグラスが遮る。


「お、お前だと!俺は勇者の孫だ!俺の爺様は勇者だ!、その孫である勇者の俺様にどんな口聞きやがる!」


 サンディの挑発に勇者ディグラスは激昂する。


「お前、自分の立場がわかってるのか?

 さっきから先代勇者の孫だとかアホなこと抜かしているがよ!お前が何が功績を立てたか!」


「っ!・・・・」


 サンディの檄に勇者ディグラスは答えられない。


「立てたか!って聞いてんるだよ!・・・立ててないよな、いつまで先代勇者の脛かじってるんだ!お前は何一つ成し遂げたてない、今!お前の周りにいるセバスやらメイド執事は先代勇者がいたから居るんだろうが!」


 サンディはディグラスに近づくと襟元を掴み上げる。


「いつまで甘えてるだ!!自分に力がないなら勇者など辞めろ!先代勇者の名を穢すな!この馬鹿!」


 サンディはディグラスを放り投げると木の幹に激突する。


「なぁ、お前私の名前先代勇者アレクトから聴いていないか?まぁ、聴いていたらそんな態度は取れないな。」


「・・・爺様になんの関係があるんだ!どこぞのエルフが!」


「先代勇者の遺言お前も知っているだろ」

「俺には勇者の素質があるって事だろそれが先代勇者の遺言だ!先代は俺に力があるって認めた!」


「やはりそうでしたか、ならもうコイツに要はありません」


 サンディはディグラスを置いて立ち去ろうとするが勇者ディグラスは立ち上がる。


「要がないってなんだよ!聴いてるのか!このエルフが!」

「先代勇者まだ現役の頃私は勇者パーティの1人でした。アレクトは私にこう言いました・・・」




『サンディ、勇者とはなんだ思う?』


 丘の上に一本ポツンと生えた大木の元で勇者アレクトはサンディと共に寝転がる。

 サンディはその質問の意味がわからないのが答えを言わない。


『勇者とは力かそれとも人望なのか、それ以外の要素なのかどう思う?』


『・・・・力、だと思います』


 まだアレクトの言ったことを噛み砕いているがそれでも今思う答えをはっきりと口にする。


『サンディはそう言うか、うちの副隊長は人望と言った。1番の新人は全てと言った全てを兼ね揃えるギャハハ、面白いな勇者とは。見る人、見る所、見たタイミング、全ての要素によって変わる。サンディが力と答えのは間違いではないのだろう、実際私は強い、だが1人じゃ弱い。サンディや副隊長、大勢の部下そしてその多くの犠牲の上に勇者という存在はある。


 勇者である私が思うに勇者とは人を道具として見る事ができる狂気な奴のことなんだろ。』


 アレクトは反動を受けて起き上がり胡座をかく。その顔は笑っている。


『・・・アレクトは狂気などではありません』

『あぁ、そうだ俺は狂気などではない、だから俺は勇者ではない。』


『この世に勇者など存在しない。


 勇者は人為的に生み出される機械だ。


 本人の意思は関係なく、時の王、時の市民、時の流れによって勇者と言う存在が作られる。それはまるで風のように強く風のようにばらけるものである。』


『アレクトは勇者じゃないと、』


 サンディも起き上がるとそう言う。


『あぁ、そうだ俺は勇者じゃない。


 俺も一端の冒険者だ!昔は副隊長とよく考えもなしに山を歩き魔物と力比べをしてた。だが今じゃ王様の手足だ、あっちに行けこっちに行け、あっちの都市に魔物が迫ってるだから行けと、まぁよ困っているガキやら爺さん婆さんが居るなら俺はどこまででも駆けつけるが正直、あの王様うるさいんだよ。まぁ、だからこそ俺にもし子供が出来たならば、勇者にだけはしたくねぇ、いつでも正解を見通せる奴になってほしい。そうだ王様に楯突いた件は内緒なサンディ』


 あちゃーと言った顔を見せるその顔は若き日よりかなり年は取ったがまだその目には闘志が映り、笑顔を見せる。


 ガハハと独特に笑いサンディの肩を叩く。


『わかってます。』


『さぁ、これ以上遅くなるとあいつらがうるさい、ただでさえあいつら俺らをくっつけてたがってる。俺もサンディも誰かと一緒に暮らすなんて今は考えられん。』


 勇者アレクトは立ち上がるとサンディに手を差し出す。


 ●


「そんなわけない!爺様がそんな事言うわけない!」


 サンディの言った現実に頭が追いつかないのかそう喚き散らす。


「良い加減にしろ!私は先代勇者アレクトの全盛期に数年だが共に戦った。アレクトはお前が想像できないほど謙虚で誠実で自分の正解にだけ飛びつく馬鹿だったよ!

 謙虚でも誠実でもない、挙句の果てには、自分に力ないのを他人のせいにして努力を怠り他人に喚き散らかすだけしかできない。お前はなんなんだ。なぁ、」


 サンディはそれだけ言い残すともう言い残した事はないとそう言いたげに放心状態のディグラスをそこに置いたままその場を立ち去る。


「・・・・エルフと人間、寿命の違いが私たちを分けるアレクトはそう言いました。私がもし人間に産まれてアレクトと旅をしていたら・・・していたら・・・私が後悔することはなかったかもしれない。またいつかどこかで、アレクト。たらればに意味はありませんね。それを教えてくれたのはアレクト、貴方でしたね」


 サンディの目には涙は浮かばない。流すべき涙はもうあの日に置いてきた。


 流れるべき涙はその時すでに流した。


サンディが今代勇者を嫌っている理由かわかりますね。


サンディは先代勇者と共に旅をしていた。

サンディは先代勇者の人柄を知っている。

サンディは今代勇者と先代勇者を比べている。

だからこそ勇者ディクラスが嫌いなんだろう。

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