密会
「失礼します。ワインにコーヒーです」
開いている扉からテレシアが帰ってくる、その手にはさっき頼んだ飲み物を持っている。
「ありがとう。テレちゃん」
「その名前で呼ばないでください」
真顔で拒否する。
「そうよ〜サンディ」
その声が聞こえた瞬間ギムレットとテレシアが振り返る。
「陛下。失礼したしました」
「気にしない、気にしない」
戻ってきたマリアは先ほどの苦しそうなドレスではなくジーンズに黒シャツの普段着ている。側近からはうるさく言われたが黙らせた。いつも通りである。側近もここ最近は公務以外の場であれば普段着でも諦めるようになっていた。ある意味躾けられたと言っても過言ではない。
「陛下、お飲み物は如何しましょう?」
「私もコーヒー、今日は何にしようかしらガレリアのオールドクロップ残ってる?」
「はい、残っています。」
「それお願い」
「かしこまりました。」
テレシアはすぐにコーヒーを淹れに行った。それを確認したマリアは三人のカップをじっくりと見る。
「サンディはウォールワインね、ギムレットと将希殿はギルストのカレントクロップ。どう?当たってる?」
「なんでわかるんですか?」
将希はそう呟くがやって傍の2人はやれやれと言った表情である。
「また。盗み聞きですか、マリア?」
「人聞きが悪いわよ、たまたま、そこに居たら聴こえたの、ついでに泳がせたけど」
「え?やらせ?」
「そういう事です。」
ギムレットがそう言う。
「じゃあ、テレシアが戻ってきたら始めますか」
●
すぐにテレシアが陛下にコーヒーを持ってきてその場を後にするとすぐにギムレットが扉を閉める。閉めたのを確認してサンディが盗聴防止の魔法をこの空間一体にかける。
「いつ見ても便利ね。さぞいろんな事に使っているのでしょうね、」
『さぞいろんな事』それには様々な意味合いが含まれているがサンディはそれを無視した。将希はなんとなく想像したがサンディさんのそんな光景があるわけないとバッサリと切り捨てた。
「・・・ええ。陛下もこれを使用し後継ぎを考えては如何でしょう?」
一度は文句を行くのをやめたがやはり口は禍の元である。
「サンディは?早くしないと寿命が来るわよ。ただでさえ数の少ないエルフがまた少なくなるわよ、」
「王家の血筋を残しては如何でしょう?将来のために」
「私とサンディの子?」
「それは生物学上不可能です」
「冗談よ、だけど私の子供とサンディの子供を許嫁にすれば私たちの子供になるわね、その子は私たちの孫、子供同然ね」
それで問題ないマリアはそう言ったように言う。
「凄いわ。その飛躍する想像力がどこから来るのかしらね」
将希の目には怖いと言う単語が浮かぶ、ギムレットはこの2人に付き合わされるといつも爆弾発言が毎回出るからともう諦めコーヒーを啜っているように見せかける。
「で、サンディ。彼氏の報告は?」
「チッ、マリアが女王じゃなかったら殺したいわね」
歯がバキっと折れそうな勢いで食いしばる。
「私、女王だから」
「報告します、我々騎士団は先々週王都を出た後パルクに向かいその後リベリシュに向かいました。そして今日王都に帰還しました。以上です」
サンディは全て無視して必要な事だけを言う。
「短くない?恋バナは?」
「陛下はどうですか?側近から政略結婚の話もかなりあるのでは?」
自分だけ突かれるのが嫌になったサンディはマリアの嫌がる部分を突くがそれをふわっと躱す。
「そうそう、多いのよ〜だから全部断ってる。そう言うね〜政略結婚で来る男なんて変な奴しかいないわ、私の実権を奪い取って国王になりたいみたいね、国王なんて大変だと思うけど。まぁ婿入りだって言った瞬間逃げるように帰っていくわよ。その後2度と顔を見たことはないわ。サンディは?自由恋愛でしょ見つけた?」
「みんな死に別れました。」
「そ、そう、」
気不味そうな顔を浮かべると同時にサンディにそんな相手が居たんだとへぇ〜と言うニヤケも出ている。
「そうなんですよ。6人ほど子供はいますが」
「え⁉︎」
マリアの目が光り輝く、テーブルを叩き前のめりにサンディに近づく。
「いるの?出来たの?、初耳!なんで言ってくれないのも〜サンディのケチ、フン、ケチなの、教えてくれてもいいと思うけどね〜」
不貞腐れるマリアだがそれは演技である。
それをわかっているからことサンディは次なる一手を仕掛ける。
「そういえばこの間、王城から抜け出していたと部下から報告があるましたね、逢引、ですか?ネタになりますね、」
「そのネタならそこら中で噂になっているわよ、残念。強請れなかったわね」
「そう。まだネタはあるので結構です。」
「将希殿、こうなってはいけませんよ」
「将希殿、サンディ見たいな女に捕まらない方がよろしいですよ」
「は・・・はい・・・」
普段であれば美人2人に見つめられればすぐ勘違いするが今日の2人は冷たい眼差しに冷たい瞳、そして冷たい声。簡単に言えば怖い。
「それで報告の続きは?」
「先ほどので以上です。」
「短いと思うけど約1週間の話が1分経たずに纏めていいと思う?」
「長々と語られるよりマシでは?」
「どんなものにも限度というものがあると思うけど?」
「私は長いのが嫌なので短く纏めました」
「短すぎるの、もっと丁寧に」
「わかりました。
王都を出た後特に魔物や野生動物に襲われることなく順調な足取りでカイブロスと我々騎士団は進みました。
道中カイブロスの持続的航続距離に達しようとしていたため、休憩をとりました将希殿を含む全員をカイブロスから下ろし周囲の安全の確保に努めました、将希殿には一応カイブロスの口の前には行くなと警告しました。1時間程度休憩をとりましたがその時見張りの団員がブロリアを発見。一応休憩は取りましたので団員を全員カイブロスに乗せ出発する事にしましたが、出発しまもなくブロリアはまだ若い個体のせいか我々の後ろをつけてきました、そのせいでカイブロスが苛立ち、暴れそうだったのでブロリアを処分しました。その後そのブロリアはカイブロスの餌となりました。カイブロスのおこぼれを狙いの小型の魔物はいましたが放置しました。将希殿はダウンしましたがそれ以外は問題ありませんでした。
その後は襲われることなく夕刻城塞都市パルクに到着。その日は到着が遅かったため、そのまま宿舎に入りました。翌日将希殿は朝食を食べた後トイレに引き篭もりました水が合わなかったのでしょう。その後は腹痛はありませんでした。
パルク城の料理人クマリアの指導の元パルクの市場で将希殿は買い出しをしていました。私は将希殿のデート時間を潰してはいけないと思い邪魔はしませんでした」
サンディが嫌味で全部を報告しようとするとマリアが止める。
「ちょっと長くない?」
苛々がかなり募って来たのか流石に止めに入る。
「陛下が説明しろと命令されたので全てを説明しようとしましたが何がご不満でもありましたか?、もしかして、もっと内容があった方が良かったでしようか?それならばお詫びします。」
サンディは謝罪の意を示す。
「全く誤ってもらってる感ないわね、逆に私のせいって言っているように聴こえるの私だけ?」
マリアは3人に目線を向けるが右2人は何も言わない、いや言えないのである。ここで何言っても殺されることは確定。
言ったら殺されるなら黙るしかない。それは全世界共通である。いらないこと言って火に油を注ぐなら黙ってやり過ごそう。
「2人はそんな事ないと言っていますが。」
そんなこと言ってない!。
2人はほぼ同時に心の中で叫ぶがそれは誰にも届かない。
「そうでは簡潔に説明してもらえる?」
「わかりました、王都を出た後我々ーー」
サンディが話し始めるがまたもマリアが止める。
「さっき言ったところから」
「それならそうと、早く言ってください」
サンディはわかりきったことだがわざと。嫌がらせに走る。
「将希殿とクマリアはまぁ、その後諸々ありましたが個人の話なので割愛します。」
なんかモヤモヤする〜マリアはぶつぶつ言っているがサンディはそれを無視する。
「将希殿はその後騎士団の訓練に参加し、その実力が明らかになりました、スキルは強いですが本体つまり将希殿が弱すぎる事が露呈しました。」
なんで俺にまで飛び火すんの?将希のぐだぐだ言っているのが蚊と同じように叩き潰される。
「その後ゴタゴタいろんな事があり我々騎士団はパルクを後にしリベリシュに向かいました、その前にパルクの領主から騎士団に盗賊討伐の依頼が舞い込み話を聞いていたら何故か予算不足でパルクの警備が手薄になっていると報告がありました。
そいつらは我々が全員首斬りにし倒して討伐の証としてそいつらの遺体をパルク領主ニハムス卿の屋敷に送りつけました。」
「そう、パルクは予算不足ね、後で調べる必要があるわね。」
真面目に話を聞いていたマリアは、呟く。
「ええ、なぜか私たちに依頼されましたが最初は断ってやろうとしましたが恩を売ればいつか回収できるので売りました。事後報告で申し訳ありません。」
心にもない事を真面目そうな雰囲気を出し、神妙な面持ちでマリアに告げる。
「それはニハムス卿から報告を受けたわ、その後にサンディからの伝書魔法が来たけれど」
サンディはすぐさま言い訳を述べる。
「距離の問題ですね、どうしても伝書魔法はタイムラグが出るので仕方ないですね、盗賊、討伐後の処理でバタバタしていたので後になりました。それは申し訳ございません。」
「ふーん、サンディ、さっきから謝ってるけど謝ってる論点が違うような気がするねど、それ私だけ?」
「そうかと、思いますが?」
自分はちゃんと謝っている。そう言った雰囲気を全面に押し出す。謝っているかと問われたら謝っているのだろう。しかし何か違和感が残るそんな感じである。
「まぁ、言いわ、続きお願い。」
このまま煙に巻かれ続けたら埒が開かないマリアはそう考えさっさと次を促す。最後に丸め込めばいいや。そう考えて。
「はいそうですか、リベリシュに着いた後。諸々面倒なので将希殿をリベリシュギルドに連れて行きました。そこでギルドマスターグランドと一戦交えさせました。」
「その結果は?」
マリアは珍しく目を輝かせ前のめりになる。
「惨敗です。コテンパンのボロクソにやられました」
「ねぇ〜もうちょっと言い方ってもんがあるんじゃないの?相手が悪かっただけ」
スキルが発動しなかったのはグランドのせいにして自分のことは棚に上げる。
「可哀想なのでその話は置いといて、
続きです、そのあとは自由行動にしましたので私からの報告はありません。」
サンディはそう話を締める。
「あぁ、それとギムレットが新入団員を3人連れて来ました1人は将希殿と同じ料理人志望でしたので将希殿の部下として王城で料理人として働くことになりました、後の2人は我々が指導します。」
「そう、報告ありがとう、」
マリアはいろんな不自然な点を指摘するのが面倒になったのか指摘しなかった。
「ではギムレット殿と将希殿は帰ってもらって結構です。」
「軽〜」「雑〜」
2人は何か言っていたがマリアの温情によって極刑は免れた事を2人は知らない。
いつもサンディとぐだぐだやっているがそれをサンディ以外がやったらほとんど消される。だからこそギムレットは絶対に聞こえるようには言わない。
そして2人は帰っていく、
その背中は緊張から解放されたようであった。
サンディさんってお子さんが居たんですね!
まぁ、4000年生きているエルフ。何人いてもおかしくないちゃ、ないな、ありえないことじゃない。
陛下にもそろそろ身を固めて欲しいのでしょう。
2人は残って何をするんでしょうか?百合?、




