御前
各々の靴の音がそこら中に響き誰のものかもわからないほど混ざり合うが何故か将希だけは自分の足音が耳によく入る。
それほどまでに周りの音が聞こえていないようだ。
広い廊下の右にはいろんな画家が書いた歴代国王、女王、肖像画が各6枚、7枚ずつ飾られている、それと等間隔でランプがランプ台に置かれ淡い明るさを醸し出す。そのうち一つは現女王マリアのものもあったがその絵画はマリアが嫌がりそうな無駄に高いドレスであった。
陽が昇り切る前の太陽は目に刺さるように明るい、絵画とは反対側の壁は一面ガラス張りでこれでもかと言うほどの採光を誇る。
「将希殿、そこを曲がれば控室です心しておいてください」
後ろを歩くサンディが話しかけるがガチガチに緊張している将希の耳には届かない。
「一層の事、黙っててもらいましょうか?」
「それは厳しいかと、少しは話すことになりますよ」
こう言ったことにサンディよりかは慣れていないがある程度慣れているギムレットが首を挟む。
「でしょうね・・・有難きお言葉、なんで言えるかしら?」
「どうでしょうかね。我々が先にそう言ってそのまま真似すればいいんですが・・・」
両者同じ想像をしているがたとえ言えたとしてもその後が続かないと想像する。
「「厳しいでしようね、/でしょうな」」
2人の声が重なる。
「将希殿、聴こえてないと思いますが全ての事に有難きお言葉、と言ってください」
「・・き、き、聴こえてる、だ、大丈夫・・・」
不安しかありませんがあきらめましょう。
サンディがそんな事を考えていると先行するブラムが止まる、そこには扉があるか将希はそれに気づかない、ブラムを将希が追い越したしブラムに捕まえる。そこには兵士が2人立っている、これ以上進んでいたら胴体に風穴が空いていただろう。
「将希殿、緊張するのは分かりますが、もう少し周りを見ましょう、一応中にいるのは宰相と一部の大臣のみですあとは騎士団の護衛が数名ですので緊張しないでください」
ブラムは将希の緊張をほぐそうとするがそこまで効果はない。
「将希殿、大丈夫です。」
ギムレットは将希の肩を叩く。
「だ、大丈夫、」
「こう言う時は深呼吸です
吐いてー吸って、吐いてー吸ってー」
サンディと同じように深呼吸すると少し緊張がほぐれてきたようだ。
「ふ〜は〜ふ〜は〜ふ〜は〜ふ〜は〜。・・・少し楽になったかも」
「ならよかったです、では行きましょうブラムお願い。」
ブラムは頷き扉の前に立つ兵士に目線を向けるとその兵士は扉を3回叩きその扉の反対側に立ってる兵士に合図を出すと、扉が1人でに動き出す。
ゆっくりと高い扉は開き光が将希の方へ向かって差し込む。
将希の視線の先30mは離れている位置にある階段の上に玉座が一つ、それに座る普段は絶対に着ないドレスを着たマキシア王国女王マリアが将希達の方を一直線に見る。
扉の横に立っていた兵士2人が陛下の前に歩いて行き跪く。
「報告します!陛下直轄騎士団 団長サンディ・オレスト並びに各部隊長、そして将希殿がお越しになられました。」
その声と共に先行するブラムとエリシアがゆっくりと歩き出すとサンディが将希を周りから見えないように押し出す。
「ご苦労、戻れ」
「はッ!」
兵士は立ち上がり左右に分かれ将希達はと向かい合うように歩き扉の護衛に戻る。
先行するブラム達が立ち止まりそれを見た将希達も止まる。サンディとギムレットは将希を守るように二歩前に出る。
ブラム達は左右に分かれ両脇に外れる。
ブラム達が定位置に戻ると宰相が胡散臭い口上を述べる。
「陛下。陛下直轄騎士団団長サンディ・オレスト並びに各部隊長そして将希殿が謁見に参りました。」
先ほどの兵士とほとんど同じ事を復唱すると頭を下げる。
それと同じくしてサンディ以下騎士団員達は慣れたように跪く。
将希は言われた通り少し頭を下げるのみであった。
「陛下の御前だ!」
宰相はサンディの予想通り叫ぶがマリアが止める。
「よせ、将希殿は客人扱いだ、跪かれると困る。」
「失礼しました。」
宰相は頭を少し下げ謝罪する。その顔は見えないが不満そうである。
マリアは玉座から立ち上がり階段を降りてきてサンディの前に立つ。
「騎士団長 オレスト 将希殿の護衛感謝する」
「有難きお言葉。」
マリアはギムレットの方を向き同じ事を言う。
「有難きお言葉。」
「皆、楽にしろ、ここは非公式の場だ」
マリアはそう言うとサンディとギムレットはすぐに立ち上がり、各部隊はそれを見てから立ち上がる。
「では、騎士団団長オレスト報告を聞こう。」
そうしてサンディの長ーい報告が始まるが将希の記憶には一切残っていない
●
マリアは三人を別室に案内させる。
各部隊も三人とは別の部屋に通された。
将希達はが案内された部屋は謁見の間よりかなり小さいがそれでも広いといれるほどである、30m近くあるように見えるが実際はもう少し狭い。
マリアは着替えてくるようでサンディ達を通した後どこかに消えた。
「ふぅ〜、・・・」
「気を抜かないでください」
「もうダメ緊張でおかしくなりそう。」
サンディとギムレットは将希を挟み込むように座る。将希の正面には予備の玉座が兵士たちによって急いで運び込まれる。ここを使うとは想定していなかった様子だ。
「玉座に予備なんてあるんだ」
「ええ、何があっても対応出来るように予備はありますしかし兵士たちはここを使うとは聞かされていなかったようですね。」
将希の呟きにサンディが答える。
「兵士も大変だ〜」
「心にもないですね」
「だって俺がやっているわけじゃない。」
将希達がそんなやりとりをしているとメイドがやってくる。
「サンディ様、お飲み物はどうしますか?」
「あら、テレシア久しぶりね元気?」
「サンディ様のおかげで」
テレシアと呼ばれた女性見た目は30歳前後という感じである。後ろで一つに纏めた黒髪が目を惹く。
「それは良かった、今日は何あるの?」
「コーヒー、紅茶、水あとは取り寄せたばかりのワインです」
テレシアはわざと銘柄を聞かせるように丁寧に誘導する。
「ワインの銘柄は?」
「北西の都市ウォール産ウォールワインです。今年は酸味が抑えられていますがその抑えられた酸味がワイン本来の甘さをより引き立てています。」
ワインを飲んだことない将希にはどうでもいい話が繰り広げられる。
「うん、そうね、そのワインにしてもらえる」
「かしこまりました。将希殿、ギムレット殿お飲み物はどう致しますか?」
「私はコーヒー、今日の銘柄は?」
「本日は北の高原地帯、名産ホールディと王都北西サムルーで採れたギルストのカレントクロップです」
「私はギルストで将希殿も同じのでよろしいですか?」
「うん?うんいいよ」
「ミルク付けてくれる?」
「かしこまりました、」
テレシアは頭を下げ裏に向かう。
「で何が違うの?」
「高原地帯のホールディというコーヒー豆は苦味が強く目が覚めることで有名です。一方ギルストのカレントクラップは飲み慣れない方でも飲みやすいです。」
「ふーん俺にはわかんねぇや。」
「だと思いました、で団長は朝からお酒ですか?」
「仕事の後の一杯は美味しいからね。」
そう言い訳をする。
「凄いですね〜言い訳って」
つい将希が呟く。
「言い訳は使いようによっては正義です。」
「悪じゃない?」
「言い訳を一回もした事がない人がいますか?」
将希はそれに反論することができなかった。
嫌だなー、陛下の御前なんてやっかい事そのものだ




