第60話 王都への帰還 本編
その足でサンディ達は先頭に向かいアレクのいる操縦席に向かう。
「アレク!」
「・・・サンディ様。それに将希殿お久しぶりです」
久しぶりに将希と再開したアレクは手綱を一時的に離し2人の元に向かう。
「離していいの?それやばくない?」
将希は持ち主を失った手綱を指差しそう言うとアレクは大丈夫だと言う。
「少しの間ならば大丈夫でしょう。」
「まぁ、問題なかろう、」
サンディがアレクの助太刀に入る。
「サンディ様、ここに来られたと言うことは許可が降りたのですか?」
サンディは頷き先ほど受けたった入城許可書をアレクに手渡す。アレクはそれを両手で受け取る。
「そうだ。これだ渡しとく」
「確かに確認しました。」
「これに何の意味があるの?」
何かの不思議なやりとりを見せられた将希はついそうきく
「将希殿、城壁を見てもらえますか?」
「ん?城壁?」
サンディが城壁を指差すとその城壁の不自然さに気づく。あるべきはずの物がないことに、それがなければ城壁の意味をなさない1番重要な物がそこにはなかった。
「扉がない!」
それに気づいた将希は声を上げる。
「ええ。その通りです、何故扉がないと思います。」
「まさか、カイブロスって空飛ぶの?」
流石に跳躍し過ぎた反応だからないこともないがそんなことあり得ない。ただでさえ陸上最強の生物そして海中でも最恐とされる動物である、それに加え空も制覇するようなら世界は終わる。
「流石にそれはありません」
流石に空は飛ばなかったようだ。
「何だ〜つまんないの」
「流石に陸上、海中で世界最強の動物が空を飛んだら世界は破滅ですよ」
「でも、食べ物、食べないんでしょ」
「よく覚えてますね」
将希はサンディがいつの時か言った言葉を思い出す。
「話が脱線しかけたので戻しましょう。
何故城壁に扉が無いのか答えは明確です。」
「?どう言うこと?」
アホヅラの将希にさらなる追い討ちがかけられる。
「私があの城壁を作りましたので」
「へぇー・・・・・・・・何だって?城壁作った?」
サンディは正解とでも言うように頷く。
「約今から200年前城壁の建て替え工事の際、外からの侵入をより一層しに難くするよう扉を無くしました。」
サンディが言うにはまだこの国ができて間もない頃ここは敵国の首都であり攻め落とす必要があったとのこと。
で敵の首都は当時のマキシア王国が攻め落としたと。
この戦争で敵、味方、一般市民の50万以上が負傷、死亡又は行方不明となる未曾有の大惨事をもたらした。その大部分は市民であった。
サンディは当時の王からはそんなことを一切軍議では聞かされることはなかった、こんなことになる知っていれば手を貸すことはなくこの国を去っていたと言う。
この惨劇はアグロの悲劇と後世では語り継がれ、
市民30万人が死亡。
アグロ王国国王はカイブロスの刑となり踏み殺され。
女王エリナ、並びにその子供3名は斬首となった。親族なども同じように投獄された。
当時の軍官、軍上層部は皆、溺死、火炙り生き埋め、などなど拷問に等しい扱いを受け、衰弱し死亡。
その約1ヶ月後当時マキシア王国国王は謎の変死を遂げ、国民からは国王一家そして死んだ兵士たちの呪いと呼ばれた。
通称 死者の使者
と呼ばれ今でもアグロの血を引く者たちの中で地獄より酷いものとして残されている。
その後マキシア国国王が緘口令を敷き隠蔽をしようと画策したが失敗。
サンディ以外の者は知らないが当時の国王を殺したのはサンディである。サンディは国王の息子と共に国王を暗殺、そして息子を国王に擁立。その後戦争で傷んだ城壁の修繕、街の復興。アグロ王国民への賠償、死亡した自国軍人遺族、アグロ王国軍遺族への賠償、などなどサンディがかなりのことに首を突っ込んだ。
サンディ曰く、たとえ敵の首都を何個奪おうと敵国民の心を奪えない者は何度同じことを繰り返しても変わることのない運命を辿る。そう語る。
当時アグロ王国民から反感を買っていたマキシア国国王をサンディは暗殺し傀儡だったその息子ガイアを国王に立て、戦後賠償をさっさと終わらせて復興に勤しんだ。
「え?傀儡?国王擁立?大惨事?死者の使者?何が何?」
「将希殿には関係ない話でした忘れてください」
まさきののうみそはまたもふりーずした
将希のちっぽけな脳みそはフル回転で話をまとめている。
「・・・・気になる!何でそんな切り方するの?」
「何の話でしょう?」
サンディは何も知らないと言うふうに肩をすくめる。
「うわー嫌なやつ、ケチ。何千年生きたの知らないけど年の功ってやーー」
「何か?言いましたか?」
団長のレイピアが将希の喉仏当たりで太陽に照らされ鈍い銀色に耀く。
「な、な。何でもないです」
「そう。それは良かった」
レイピアは将希の喉を滑るようになぞりながら鞘へと戻る。
「それで話が逸れましたね、アレクこのまま行ってもらって頂戴、そして将希殿レディに年齢の話はしてはいけませんよ、殺されても文句は言えません。」
先ほどまでの緊迫した空気は風に流れ消え去った。
「自分で言えば問題ないんですか?」
「自分ならありですよ、言われたら串刺しですがねウフフ、冗談です」
冗談に全く聞こえないがサンディの本心みたいだ。
「冗談に聞こえねー」
「大丈夫です。記憶が残らないうちに天国に贈りますから。殺気も気配も感じさせずに頭を潰せば自分でも知らないうちに旅立てるでしょう。それは幸福と言えるでしょうか?」
自分でも死んだことがわからないうちに天国に旅てる?。そもそも天国なんてあるのか?結局死んで天国に行けて戻ってこれない。観測できても帰って来れないならそれは観測したことにならない。
「さぁね、俺は死んだことがないから俺にはわかんない。」
「では、一回死んでみます?」
レイピアに手をかける。
「いや、結構」
それを止めるように拒否する。
「それで、何故城壁に扉が無いと思いますか?」
サンディは藪から棒に話を急に戻す。
「急だね、そんなに突かれたくないんだ」
「何故扉が無いと思います?」
「無視かよ」
「どうせ、サンディさんが変な魔法でもかけて、扉を見えなくしたんでしょ」
どの道埒が開かないやり取りに我慢ができなくなった将希は太々しく吐き捨てる。
「正解ではありますが少し違います、
私が魔法をかけ扉に細工しました、先ほどアレクに渡した許可証がある者の場合は壁をすり抜けることができます。一方持っていない者は壁は壁となりすり抜けることはできません。」
「何でもありだね・・・私かよ、・・・」
「はい、それがエルフです。」
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そして将希の目には摩訶不思議な光景が飛び込んでくる。目の前には30mを優に超える城壁が山とは似て非なるもののように聳り立つ。
今。まさしくカイブロスの口がそれを突き抜けようとしている。ぶつかる将希はそう思ったがしかしカイブロスは壁にぶつかることなく壁の奥にゆっくりと消えていく。
将希のいるデッキも壁に飲み込まれていく将希の目には壁の内部が映る。
石とコンクリートで作られた壁の内部が鮮明に映るそこには何個か人骨と思われる者があったが幸いにも将希が見ることはなかった。
その骨は建造時にでも取り残された大工のものであったと思われる。
薄暗い闇を抜けると思い出深い王都が目線いっぱいに広がる。そこには騎士団を一目見ようと集まった何万者人々が押しかけ商人は騎士団饅頭、騎士団のマーク入りのビールジョッキ。騎士団に似せた鎧、シャツ帽子。サンディ愛用にレイピアに似たレイピアなどなど売りまくっている。
サンディの目は一際目立つ王城へと向けられている。そのテラスから手を振る1人の女性、ラフな服装で後ろでは世話係が『陛下、危ないので、出ないでください』と止めようと奔走中。「大丈夫よ、落ちたら助けてくれれば」主従似ている。
将希には到底見えないがサンディにはその姿が見える。声までは聞こえないが見える。
「・・・まだ2週間も経ってないんですよね」
「えぇ、立っていません」
サンディがそれを肯定する、何度もこの景色を見ているサンディだが毎回この景色は新鮮に映る。
「懐かしいですねたった2週間しか経ってないのに」
「そうかもしれません、がしかし私にとっては毎回のことです」
長かった旅は終わり騎士団と将希は始まりの地、王都への帰還を果たす。
たった2週間しか経っていないが将希の心にはこの2週間の記憶が地球に居た約20年間よりも濃密な物であった。
サンディや三馬鹿、ワジル、ギムレットその他諸々騎士団と共にした日々は絶対に忘れる事がないだろ。
将希の心がこれほどまでに踊ったのはいつ以来だろう将希は考えた。もう心ワクワクと言う感情10年近く感じていなかった。地球に居た頃は真っ暗に乾いたつまらない退屈人生だったが、なぜかこの世界に来てからと言うもの心ワクワクを体いっぱいに感じられている。
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注釈
『将希主体の物語はここで終わりです。これからは勇者をスジとした騎士団とサンディの物語にシフトします。』
そこまでお遊びか続きます。しばしお付き合いを。




