5話 ブロリアの最期
道中。特に魔物に襲われることなく、お昼を迎え、カイブロスの持続的航続距離に近づいてきたので休憩を取るために全員カイブロスから降ろされた、そこはカイブロスの全身が隠れるほどの大木の下であり、木の上には即席のエレベーター(人力)が取り付けられ、兵士が5人警戒に当たっている。
「将希殿、間違ってもカイブロスの口の前には行かないように、カブっと噛まれて胴体が二つになります、一応アレクが手綱を握ってますので事故は起きませんが絶対に兵士より向こうには出ないように、魔物が襲ってきます。」
俺が降りると同時に下で待ち構えていたサンディさんがそう警告する。
兵士は全身を覆えるほどの盾と槍を持ち2m間隔で並んでいる。周りには魔物がこちらの様子を窺っているが近づいてくる様子はない。
「で、兵士より内側なら大丈夫と言うことですか?」
「ええ、そうです、それとあと1時間は休憩を取りますのでそこまでは自由にしてもらって構いません、しかし出ないように、」
「わかってますよ、そんな馬鹿じゃないですって」
少し散策でもするか、
兵士達は約50人、
アレクさんは運転席で手綱を握っている。
サンディさんはちょうど中心部で指示を出し、紅茶を優雅に飲んでいる、一瞬ここが魔物がうろちょろする最前線だと言うことを忘れるな
兵士達は相変わらずフルフェイスで表情は見えないが警戒している雰囲気は感じられる。
この世界に方角があるのか不明だが、雲はゆっくりと左に流れる、風は微風程度の風が時より髪を揺らし木の葉が時々散る。
カイブロスは寝ているのか目を閉じてかなりでかい吐息を漏らす。
その時、木の上で警戒にあたっていた兵士の動きが慌ただしくなる。何か発見したようだ。
兵士の1人がエレベーターに乗り込み降りてくる。
「サンディ様、小型のブロリアがこっち近づいて来てます」
「わかった今行く、将希殿もついてこい、」
サンディは立ち上がり帯剣して動き出す。
「上からなら安全も確保できる、」
「そ、そうなら、良いですけど」
俺は諦めサンディの後ろをついて行く、
「ブロリアに殺される前に、これが落ちるんじゃないですか?」
遠目で見たら。そこまでの恐怖心は湧かなかったが、実際に目の前で見るとお手製感満載の、エレベーターだな、それに人力だし、ロープ切れるんじゃないか。
「大丈夫だ、たまにしかそう言ういった事故は起きない、」
「そ、そうですか?」
サンディは将希を押し込みドアを閉める。
起きるんじゃねーかよ!助けて!
将希心の中で叫ぶが誰にも届くはずはない。
「ほ、ほんとに安全ですよね、」
「将希殿この世に安全という言葉はない、あるのは生きれるか死ぬかだブロリアだって生きている、食べる物が必要だアイツらにとってはそれが我々だ、だから我々の命を守るためにアイツを倒すしかない、
まぁ、将希殿には騎士団が付いていますから、ここにいるのは歴戦の騎士ばかりです、容易く崩れる事はありません。前提としては非常時以外戦闘は避けますがね、」
エレベーターが上に着き、降ろされる。
「サンディ様これを」
騎士の1人は双眼鏡を差し出し後ろに下がる。
サンディはそれを覗きブロリアの居る方角を見る。
「んー、まだ様子見、いったところだなだがいつ近づいて来てもおかしくないな、将希殿もみてみろ」
そう言いサンディは双眼鏡を将希に手渡す。
「おぉ、本当だ毛色が赤い、だからレットブロリア、か」
将希はそう1人で呟く、サンディは監視兵と現状確認をしている。
「時間的には動いても問題ないな」
「はい、一応1時間は経ちました、兵士たちをゆっくり中心に集結させここを発つこともできるかと、」
「そうだな、カイブロスが少しイラつき始めてる、目の前でうろちょろされてるのが嫌みたいだな、、わかった私はアレクに出発の用意をさせる、すぐに出る、お前は警戒にあたってる兵士たちをゆっくりと撤退させろ。
将希殿、前に行く、ついて来い、」
「はい、今行きます、あっこれありがとう」
将希はサンディが監視兵から借りた双眼鏡を返却し先に歩き出したサンディを追いかける。
「待ってくださいよ!」
「遅いのがいけない。早く来い、」
●
「おぉ、お仕事がお早いですね、アレク、もう出れます?」
「サンディ様、お褒めの言葉ありがとうございます、もう間も無く私の準備は終わります」
アレクは立ち上がり双眼鏡を取り出しレットブロリアの確認してから、カイブロスの足元で撤退準備をしている騎士達に視線を移す。
「あとは、撤退が終了し次第いつでも出れますが、ブロリアがどう動くかですね、たとえ移動をしてもブロリアが後ろからついてくるようでしたら遅かれ早かれ、戦いは避けられないでしょう。あと、あんまり、目の端でちょろまかと動かれるとコイツにとってもあんまり良くないでしょう、下手したらブロリアに襲いかかるかもしれません。」
「やっぱりか、まぁ蚊のように耳元で動かれると嫌ですからね、その事は遠距離砲で対処しましょう、それでもまだ追いかけてくるようでしたら、騎士団を動かします。その時はまた連絡します」
「わかった、で、そいつはまたここか?指定席か、」
「ええ。またお願いします、邪魔になるようでしたら眠らせても構いません。」
「おい!」
「冗談ですよ、真にうけないでください」
「そうなら良いですけど、…………またかよ、早いな〜目にも止まらぬ早さだ、」
その言葉サンディには届かないもうすでに地上におり撤退の指示を出している。
「撤退!早く乗り込んで、見張り!昇降機の回収!後ろ!ブロリアの偵察しておいて!近づいてくるなら報告!早く持ち場に着け!さっさとここを離れる!たとえ忘れられても回収無し!」
サンディは忙しなく、指示を出し、ブロリアの監視もし手の足りていない物を手伝い精力的に動き回る。
程なくして撤退作業は終わりカイブロスが前進し出す。
「アレク!撤退終了!いつでも行けるよ!」
アレクはここからでは自分の声が届かないことを知っているため。いつも通り白と黒のストライプ柄の旗を大きく振り、それを視認したサンディは上に向かう。
「全員に次ぐ、撤退完了、これより移動を開始する、後方でこちらの様子を窺っているブロリアに警戒しとけ!」
サンディがそうマイクで伝えると隣に座るアレクさんがカイブロスに繋がっている手綱を引き、ゆっくりとカイブロスが前進を始める。
「アレクさん、こう言った事ってよくあるんですか?」
「たまにある程度です、でも5回に1回はあります、後ろでちょろまかとされると、こいつも嫌がりますからね、新人の操縦士ならたまにカイブロスを制御できなくて、ブロリアと戦闘に発展することも時々あります。その時はカイブロスの勝ちですけどコイツにとっては良いオヤツですね、」
「そうですか……」
まぁ、負けるわけないわな。そりゃね、
アレクは頻りに後ろを気にしている、やっぱり気になるんだな、いくら歴戦の操縦士と言っても警戒は怠らない。操縦士の鑑だ、という事は、後ろを振り返るとブロリアがついて来てるんだな、さっきからサンディさんの罵声が飛んでるからな。見なくてもわかるな、見たくないな。でも見ないとな、見るしかないな、
将希は恐る恐る、ゆっくりと後ろを見ると、ブロリアが先ほどより少し大きく見える場所から俺たちを尾行している、隙があったらいつでも襲いかかれる位置でじっくりと、
「将希殿、見ての通りブロリアがついて来てます。」
俺が後ろを見てるとアレンがそう、肯定する。やっぱりかー、幻〜じゃなかったか、俺は何もしない。サンディさん達騎士団に任せよう。うん。そうしよう。
将希は静観することを決めた。
その頃サンディは。
「砲撃隊!準備急げ!いつでも狙えるようにしとけ!」
どいつもこいつも使えねぇ!全く!
砲撃隊の隊員が砲台の足元に砲弾を置き去ろうとするところにサンディの罵声がまた飛ぶ。
「そこ!砲弾置くな!上に置け!」
「はい!」
「喋る暇があるなら手!動かせ」
はぁ、訓練用の新人なんか連れてくるんじゃなかった、新人の育成しないと後が大変だから連れて来たが、ダメだったな、熟練兵は40、新人が10、はぁ、まぁ、最前線には出さないようにしないと、
「ハモンド!ちょっと来い!指示だ」
下で新人に指示しているブロンズ髪の男が梯子を登ってくる。
「サンディ様。なんでしょうか?」
「新人を全部お前に付ける、あとカールとニールズも付ける。お前達でブロリアに砲撃しろ、撃つのはカールとニールズだ、新人には弾運びでもさせろ、」
「わかりました!」
ハモンドは敬礼し梯子を滑るように降りる。
「カール!ニーズル!ハモンドのところでブロリアに向かって砲撃しろ命中させろ」
「了解!」「了解」
2人の男達が砲撃台に向かい砲撃席に座る。
「目標!11時の方向距離500、いつでも狙えます、」
その声と同時に新人隊員達が、大砲に弾を詰め込み。砲身が角度10度の低空に設定される
「撃てっ!」
その声と同時に両方の砲身から弾が発射される、刹那、ブロリアの手前10mに着弾し砂埃が舞う。
その砂埃にブロリアの影が映り、煙の中からブロリアが、走って来る。
「新人!再度充填!急げこれ以上近づけるな!近づけたら地上戦に移る!」
新人たちはニールズの檄により急いで再度弾を充填する、これが熟練兵にだったならば言われる前に充填完了し。言われる前に発射している。それだけでも相当な時間のロスだということがわかるだろう。
「ブロリア1時の方向に移動!接近して来てます!距離400!地上部隊、戦闘用意!距離300でカイブロスを止める。その瞬間お前たちを下ろす、サンディ様!良いですか!」
上で双眼鏡を覗いてブロリアの姿を捉えているサンディにニードルが梯子を登り近づく。
「わかった、他は私はアレクに伝える、地上部隊の指揮は任せる。」
「了解」
ニールズは砲撃台に戻り地上部隊に指示を出しに行く、
「アレク、聞こえるか?」
サンディはデッキの入り口に取り付けられた通信筒を使い、アレクに連絡を取る。
「はい聞こえてます、距離300でこいつを止めるですね、」
「そうだ、止めるタイミングは私が指示する、」
サンディは通信筒から離れ、デッキに戻る。その時
「撃て!」
ニードルの掛け声と共に再度充填された2つの砲身から煙が立ち上がりドスっと言う鈍い音が聞こえる。
「命中!」
弾はブロリアの足に1発命中しブロリアは倒れ込み、痛みからなのか声を上げる。
「泣いてる……」
「誰が殺らなければ、我々のうちの誰が殺られることとなります。」
将希の呟きにアレクはそう答えるのみであった。
「アレク。聞こえるか?」
その時連絡筒からのサンディの声が聞こえる。
「聞こえます、ブロリアの件ですね、」
「そうだ、ブロリアをコイツに食わせとけ、」
「わかりました、」
アレクは直ぐにカイブロスの手綱を引きカイブロスを旋回させる。
「食わせるって?」
「ええ、そうですこのままブロリアを放置させとくと弱ったブロリアを狙いに他の魔物が寄って来て街が危険に晒らされます。なのでいつもコイツに処理をさせます。見たくなければサンディ様のいるデッキまで行ってください。そこからであれば見えません。」
「いや、いい、ここに居る」
「そうですか紙袋はこちらに」
その後カイブロスはゆっくりとブロリアに近づき、ブロリアへ最後の抵抗を見せたが悲痛な叫び声と共に血飛沫が舞い上がり。骨がバキバキと音を立て砕け散る、それが時よりこの操縦席に飛んでくるのをアレクさんが防ぎ、俺はただブロリアが食べられるのを眺めていた、残されたのは血の水溜まりと骨と肉のかけらとおごぼれを狙う小型の魔物の群であった。
その後カイブロスの足音以外は聞こえず無言の時間が過ぎた。




