旅立ち
ギムレットを躾けた後サンディはデッキに呼んでいた将希の元へ向かう。
「将希殿」
「どうしたんですか?サンディさんそんな改まって?」
将希はサンディの言葉に違和感を覚えたのか少し丁寧な口調になる。
「将希殿とのお付き合いもここまでです。」
「え?付き合ってたの?」
薄々勘づいているがそれを無かったことにしようと将希の脳は全力を尽くす。
「違います。このまま騎士団と共に将希殿は王都に帰ってもらいます。そこでお別れです。私の任務は将希殿にこの世界を知ってもらうこと。それが叶った今いつまでも将希殿は我々と行動を共にすることはできません。」
サンディは事実を淡々と述べる。事実以外を挟まず、しかし自分の言葉で丁寧に説明をするがまだ将希の脳はそこ説明に追いついていない。理解を拒否している
「そ、それは・・・」
「えぇ、言葉をなくすのも当然のことです。突然のことで申し訳ございませんが陛下からの勅令はそうなっています。」
「で、でも・・・そんなの、」
将希は脳内が追い付いて理解し始める。何気に自分はここを気に入っていたと。三馬鹿やサンディ、ギムレット、ワジルら個性豊かな仲間と笑い泣き怒られ、今までの自分に欠けていた物を見つけ出したと。
「わかっています、一方的だと言うことはら。しかし契約書には将希殿は陛下直属の料理人としてその腕を振るうと書かれています。それが契約です。わずか1週間ですかこの世界の事のうちの1%でもお分かりになれたのであれば幸いです。私はここまでです王都に戻ったら将希殿は将希殿の使命を果たす。私は私で陛下の護衛を務めなければなりません。」
サンディはそれだけを言うといつも通りの顔で去っていく。
「まだ王都に着くまで2日あります。最後の旅を満喫していってください。」
去っていくサンディの背中をただ見つめているだけであった、扉が閉められようとガラスからサンディを視認出来なくなるまで目の目で何も言わずに見ている。
●
将希の元を去った団長は、自室で昨日の続きをしている。
「やはり、本物からは私の魔力が感じられる。」
偽物と本物両者の封蝋を見比べそう呟く。
「鑑定の結果も相変わらずどちらも本物・・・確か、その時使った鋳型は冷やして固まって外してすぐ廃棄したからその後、使われるとは思わない。あり得るとしたら私が魔力を込める前に使用されたって事ね。」
「魔力の性質を知らない者が手を加えたと、鑑定魔法は魔力を検知しているのではない、もし同じ型で作られたのであれば本物。だから鑑定では本物と出て私の魔力は感じられない。」
魔力を一度込めたものは永遠にその魔力が残り続ける。物に宿った魔力は誰にでも感知は出来るが自分の魔力どうかは自分以外は判断できない。つまり他人の魔力だとわかるがそれが誰の魔力なのかは日常的に接している近しい人以外にはわからないと言う事である。
こう言った長年に渡り効力を発揮するのもは昔から長寿で有名なエルフに協力を要請することが多く当時から騎士団にいたサンディに白羽の矢がたったのである。本人は乗る気ではなかったが。
「だから、偽物は私が魔力を込める前に使用された、だけどそれがいつなのかわからない。鑑定魔法で本物と出ている以上、本物。しかし私の魔力が込められていないから偽物。面倒なことになったわ、
他の帳簿も全部調べたほうが良さそうね、ボロボロ出てきそうね。関係がある無しに関わらず。
腐った物は処分すべし。じゃないと周りも腐らす」
●
翌日 騎士団は王都マキシアまで数時間の位置にまで来ていた。サンディは伝書魔法で届けられた陛下からの手紙をデッキにて受け取り、内容を確認し、暇を持て余している全団員を大広間に呼び出した、
「諸君。よく集まってくれた」
数段高い位置から団長は部下を見下ろす。
所々ブツブツ言っている声が聞こえる。
諸君って・・・そんなキャラでしたっけ?団長。
どうせ来ないと殺されるし。
来ても殺される、来なくても殺される。
呼び出された時は良いことなし。
呼び出されなくても良いことなし。
団長が呼んだ時は不幸が待つ。
一部、三馬鹿から不満の声が上がる。
(また三馬鹿か、相も変わらず、よく飽きないな、そこだけは見上げるものがあるな。)
団長はその声の持ち主を特定したみたいだ。三馬鹿を見下ろすように睨んだ瞬間蚊のような嫌な声は止まる。
「静かになったな。」
「では、なぜ私がお前たちをここに集めたか気になるか?面倒だから説明はする
また陛下より手紙を預かった。王都まであと6時間程度で着く。王都に着いたら詳細は話す今は概要だと思って聞いてくれ。」
「今代勇者ディグラスの護衛についてだ。
護衛ルートについては王都に着いてからだ。まぁ王宮から国営墓地までの5キロ程度だと思ってくれ、もしかしたら今代勇者が王都に入る前から護衛するかもしれないが、どの道、王都に着いてからだ、」
私は王都に来る前に暗殺されれば良いと思うがな、仕事も減って良いだろ、と団長は団長にあるまじき発言をするが誰もそれを否定しようとはしない。
それは皆、団長と同じことを思っているのかそれとも反論する事すら出来ないのか・・・。
「団長、私怨はどうでも良いので続きを」
1番前に陣取り、早く帰りたいギムレットが先を促す。
「そうだな、だが皆嫌っている。」
不満だけで何日も不満大会が出来そうだから、団長も早く帰りたいのか、不満を飲み込んだ。
「でだ、ここで残念なお知らせがある。
私は今代勇者の護衛の任が終わったらまたリベリシュに戻ることになった・・・」
安堵のため息がそこかしこから漏れる。
「私は少しの間だが騎士団を離れることになった。臨時の団長としてギムレットを臨時団長にする副団長は王立騎士団から1人勧誘することにした。そしてお前たちには実戦が足らない、だから実戦指導役として王立騎士団から部隊長クラスを日替わりで派遣してもらえるよう少し口添えをした。詳細は当日までのお楽しみだ。楽しみにしとけ。」
安堵のため息が漏れたがすぐにいつも通りの緊迫とした緊張感が戻る。そして去年の苦い記憶が脳裏に走馬灯のように過ぎる。
去年も団長が王立騎士団から指導役を連れて来た時、それはそれは死をも覚悟するようなスパルタな実戦形式の撃ち合いが何日も行われた。団長の指導などかなり甘いと思えるほどの斬り合いが行われて一部団員は腕の一本や二本失うほどであった。すぐに回復魔法で腕を生やし問題はなかったが
精神的な苦痛にはなっただろう自分の腕は生えたが地面に転がっている自分の腕を目で見ると言うなんとも不思議な光景を見たのだから。
「私が戻ってくるまでの間はギムレットの指示に従うように、くれぐれも三馬鹿みたいな事を起こさないように。」
「そしてここからは細々とした説明だギムレット、例のものを頼む、」
「かしこまりました。」
ギムレットは手に持つ紙の束を適当に団員たちに流し残ったのを団長に渡す。
「行き渡ったな、これは後で回収するマル秘案件だ」
もし、持ち帰ったりしたならば口封じをしなくてはならなくなるつまり・・・
私のストレスが増える。それだけはやめとけ。まぁ出口で身体検査するがな。団長はそう脅す。
「じゃ。説明だ」
恐怖で固まっている団員たちをよそに団長ら。
「まず1ぺージ1番上、勇者護衛のルートだ、王都から最短距離かつ道幅も確保できる王道を通るまぁ、変更があるかもしれないが、時間は午後12時から勇者が王城出ることになっている。その時には市民が、勇者なりに言うと吐き捨てるほどいるだろう。」
団長が先ほど配った用紙には王都から国営墓地までの雑で不鮮明な地図が書かれている。
「でだその中に紛れ込む輩がいるかもしれないって話だ。まぁ紛れこまれたら発見は不可能だと思って間違い無いだろ、幸いなことに沿道の警備は王立騎士団にやらせることに成功した。我々の責任はかなり減った。私のおかげだ褒めてくれ。」
団長は胸を張り褒めてほしそうだが誰も褒めようとはしない
「誰も褒めてくれないのか。まぁ良い、行動で返せば良いや。
で、次だ。
我々陛下直轄騎士団がやるのは王城での謁見式の護衛だそれと勇者の護衛、やりたくないがな。
謁見式は我々と勇者以外は武器の持ち込み禁止、手荷物検査も王立騎士団にやらせる面倒だし、
時間は朝9時から11時までだその後1時間程度休憩を挟み国営墓地に向かうことになっている。」
そこまで言い切ると「次2ページ目を開けろ」
「次はお前たちのマナーについてだ、我々は騎士団だ陛下の御前に立つのであればそれ相応の、マナー、常識、プロトコトルが必要になる、お前たちにそれが足りているとは到底思えないだから今日からお前たちにはそのマナーを仕込む。私だってやりたくない、猫にお手を覚えさせるほうが簡単だと確信する。勇者相手ならどうでも良かったが」
「その下の表をみろ、まずは常識から
涎を垂らす
唾を吐くな
鎧は綺麗にしとけ返り血など豪語道断だ
ちゃんと歯を磨け、
陛下を如何わしい目で見るな
足裏も綺麗にしとけ
剣に錆をつけるな
鎧を磨け
言葉遣いも気をつけろ
たとえ陛下が話しかけてきても勘違いするなそれは全員に話しかけている、そもそもそんな機会ないがな
私が見てない間逃げ出そうとするな
私が見てない間は自由時間ではない
休憩時間は好きにしてもらって構わんが時間通り帰ってこい、しかし事件事故苦情などなど起こすな
居眠りするな
陛下には近づくな、距離を取れ、陛下から近づいて来たらその場から動くな
屁をするな
ゲップ禁止
当日前日は酒は慎め
匂いがきついを食べるな
私がいない時は全てギムレットまたはワジルが責任を持つ、私のせいにするな
事件は起こすな、私は弁護士ではない誰も助けない、面倒だ
くれぐれも陛下に手を出すな陛下が手を差し出してきた時のみ許すがその後ちゃんと手を洗え。一生洗わないとか言い出さないように。
陛下の匂いを嗅ぐな気持ち悪い
陛下に触れるな
陛下より上に立つな、
陛下から話しかけてきた時は言葉遣いに気をつけろ、
まだ言い足りないがいっぺんに言ったところでお前たちにはきついだろ体に仕込ますだけだ。覚悟しとけ、この表は後でプリントした物を配る大切に保管しとけ、そして次」
「当日の褒賞について。」
団長がそう言った瞬間歓声が上がる。一体いくらになるんだろな。
「なしだ!」
残念・・・恋仲じゃないのか良いぞ!
注意事項もっと書けば良いのに
例えば陛下の前で息禁止とか
足音禁止
陛下に視線向けるの禁止
陛下の首から下は見るな
口を慎め
生きるの禁止ってダメか




