第55話 サンディの目的
「お前ら帰るぞ」
ワジルは目を無理やり開かせる死んだ騎士団員全員を叩き起こし1人づつ外に放り出していく。
「ギムレットお前が先導しろ、俺は後ろでケツ叩きしてる。」
「了解ですワジルさんもう、無理眠い」
「寝るなギムレット、寝るなら、宿舎に戻れ、俺だって寝たいんだよ。」
ワジルは目を擦り自分の左の頬を左手でぶっ叩く。
「嫌なら連れて帰れ」
ワジルは頭の回転が悪くなってきたのか幻聴が聞こえるようだ。
「何言ってんだ?」
「寝たいんだよ!」
「わかった、悪かった。」
何が悪いのか知らないが。
「帰ろう。」
ギムレットがそう言うとワジルは団長を乗せた台車を押していく。その体格から背中は丸まり歩きにくそうだ。
「揺れる!もっと丁寧に動かせ!」
「起きてるだろ!あんた!」
団長の寝言にワジルが怒鳴る。まぁ、眠いのに目の前で熟睡されてたらそりゃね。起こりたくもなるものだ。
「ちくしょ、なんでこんな目に。」
ワジルは先ほどから後ろで音を上げている団員達に喝を入れる、
「お前らも歩け、寝るな・・死ぬぞ。」
「なら・・・団長と客人、起こしてくださいよ・・・ふ〜ふ〜、うぅ、寝てた、特別扱いなんてせこいですよ」
怒鳴られたうちの1人が寝かけながらそう言うとワジルも素直に従う。
「そうだな、別に団長を乗せる必要にないか。」
「なんだってワジル?」
「やっぱり起きてるだろ!」
またも怒鳴ると団長は耐えきれなくなったのか吹き出して立ち上がる。
「いい夢だったぞ、ん?ワジル?おーい」
団長が立ち上がった瞬間何か切れたのかワジルは台車によたれるように倒れる。その背中をまるでゴミを触るように突く。
そしてそれまで。アンデット化していた騎士団員達は成仏した。
●
そして将希は起きる。ゆっくりと瞼が開きまだ明るさに慣れていない目に太陽の光が差し込んでくる。
「ここ・・はどこだ、異・・世界。なのか?、俺は死んだのか」
そんな意識混濁状態の将希に冷や水と言うなの言葉の剣が刺さる。
「何を馬鹿なことをおっしゃられてるのですか将希殿」
「・・・・・・おはよう、ここは?エンディング?」
将希の脳内に最悪の想像が過ぎる。
サンディと一夜を明かした。行き着くところまで行き着いてしまった。
「エンディングというものが何なのか知りませんが、ここは昨日、馬鹿な騎士団員達が散々喚き散らかした居酒屋です。」
そしてサンディはことの顛末を語る。
昨日、馬鹿な騎士団員達は飲み会が終わり帰路に着こうとしていましたが飲み過ぎた団員達は店を出て、うーうー喚き散らしながらたったの20mも進まずに全員寝てしまいました。その顔は何キロも歩いてやっと目的地に着いたというような穏やかな表情でした。
私は1人、どうにか起きていて団長として団員達を起こしましたが起きませんでした。
その時、後ろからミーシャの声がしました。私が振り返ると、ミーシャはこう言いました「やっぱり夜道は危ないので泊まって行ったらどうですか」と、なので私は恥を惜しみながらもミーシャの心意気に感謝し、ミーシャと共にこの馬鹿な騎士団員達をここに運び込みました。
とサンディは語る。実際途中の話は本当だが自分のしていたことは完全に棚に上げ誰1人起きていなかったこと良いことに新しい記憶を脳内で補完している。
「そ、そんな事が」
ぐっすり寝ていた将希にはこれが本当の事だと思うだろ。
昨日の記憶がない将希と昨日の記憶は少しあり自分の失態を隠したい団長。
「あれ、みんなは?」
「周りを見てください」
サンディにそう言われ将希は周囲を見渡すと、何人かの団員達は記憶がないのか何故ここいるのかわかっていないみたいだ。簡単に言えば酒の飲み過ぎで記憶が消えた。そして記憶のある団員はサンディの洗脳を受け、目が死んでいる。
「し、死んでる・・・」
「死んではいません。皆酒に酔って記憶が失われてます。」
サンディは平然とした様子で自分以外は皆倒れたという。
「団長さん、」
「ミーシャかすまないな」
その時裏からミーシャが出てくる。
「起きましたか?」
「いや、今起きたのはこいつだけだ、後のものは今起こす。」
そう言い団長は手短な遺体ではなく団長に狙いをつけ、蹴り上げる。
「起きろ!このアホヅラ!」
蹴り上げられたのはワジルである。ワジルはそのまま天井スレスレまで浮き上がり、目が開くと目の前には迫る天井、体が宙に浮き体勢を直そうと体を傾け自由落下で落ちる。落下の衝撃が脳天にまで響き足元に帰る。そのまま立ちながら落下しワジルはミーシャの横にいつも通り立つ。
その声に釣られ死んでいた他の騎士団員達もゾンビのように起き上がる。
「おぉ、ミーシャじゃないか、おはよう」
「おはようございます、お父様」
何事もなかったようにワジルはミーシャと話すがやっと脳が機能し始めた。昨日の記憶が少しだが戻り始める。
「・・・ん?、なんでミーシャがここにいる?俺は帰ったはずじゃ」
「昨日」
「それは私から」
ミーシャが説明をしようとするが自分都合の悪いことを説明されては立場がない団長が親子の会話に割り込む。
「ワジル、昨日、飲み終わって帰ろうとしたわよね」
「そ、そうかと」
前日の記憶が定かではないワジルはそれ以外に言える言葉がない。
「でね、飲み終わってここ出たのそうしたらみんな倒れて〜、ミーシャと私で仕方ないからここまで戻って運んできたの。」
「そ。そうですか」
ワジルの少しだけ残った記憶とはすこし異なるが定かではない自分の記憶とちゃんと残っている様子の団長。その時ワジルがどちらを信じるか。
「そ、そうですか」
「みんなもそうよ!団長1人残してみんな寝てたんだから。感謝してね。」
「「はい団員!」」
他の団員達も揃いも揃って記憶がないのか団長の洗脳を何一つ疑わず真に受ける。が一部の団員はいつもの団長の冷たい笑顔ではないことに違和感を抱くが誰もそれを口にしようとはしない
「ほとんどのものは起きたみたいだな。まだ寝てるものがいるなら叩き起こせ!」
団員達は恐怖に駆られいまだに寝ている三馬鹿を叩き起こす。
「よし!帰るぞ今度こそ」
「団長。その前にお話が」
ワジルが団長を止める。
「話とはなんだ?」
「不正に王家の封蝋が偽装されている可能性があります。」
「黙れ」
団長の目はそれを口に出すなと言っている。団長はワジルの耳元で囁く。
「後で宿舎に戻り次第その話はする。ミーシャも連れてこい。」
ワジルは無言で頷く。
「よし!帰るぞ!」
団長は今度こそ帰路に着く。
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翌日。団長はカイブロス内部の団長室で様々な、妨害魔法を張り巡らせていた。
視覚妨害、盗聴妨害、視認妨害、索敵妨害、周囲100mの人の出入り禁止。などなどありったけの妨害魔法をかけまくる。
そこにはワジルとその娘ミーシャ、そして副団長ギムレットの姿もある。
「楽にしてくれてかまわん」
団長はそう言いワジル達を座らし、3人が座ったのを見てから座る。
「要件は昨日の話だ。まず私が知っていることを話そう、その後にお前達の情報と擦り合わせよう。それで良いか?」
ワジルが話し出す前に団長が先手を取る。
「はい。」
ワジルはそっと頷く。
「証人はギムレットだ、問題ないか?」
「はい。大丈夫です。ギムレットがこの場証人を務めます。異論はありませんね。」
誰からも否定が出ることはない。
「いなそうだな、では私から話そう。」
「私たち騎士団が王都を旅立つ前、将希殿がこの世界に来た後だな。陛下から呼び出しがあった・・・」
サンディを呼び出した陛下はこう言った。
「ここ最近、リベリシュの税収がどう計算しても合わないの。サンディはどう思う?」
陛下はもう答えがわかっている様子でサンディにその裏付けをしてほしいそうったらニュアンスがある。
「で、あれば意図的な不正または何か理由があるのか。どちらにせよ早急に調べる必要があるかと。」
団長はなぜ自分が呼ばれ何をすれば良いのか大体掴んでいるようだ。
「サンディは話が早くて助かるわ、それでサンディには将希殿をパルクに連れて行くついでに将希殿も連れていって良いからリベリシュに向かってもらいたいの。」
「仰せのままに」
「それやめて。誰もいないんだからかたっ苦しいのなし。」
「わかりました。」
「マリアは大体のことはわかってて、私にそれの裏付けをして欲しいそう言う事?」
通常通りの口調に戻ったサンディが簡潔にまとめる。
「そう。そう言う事。ここに資料があるから。カイブロスでの移動中に目を通しといて」
マリアは用意されてた資料をサンディに手渡しそれに目を通す。
「10年ほど前から少しずつ合わなくなってるみたいね、最初は100万マキシアだけどここ2年は1億マキシアが消えている。」
「そう、最初の方は単なる誤差と判断して注意処分してけど、ここ2年そのズレ幅が大きくなってる。」
「だから私に調査しろと」
「そうよ、くれぐれ内密に知ってる人を無駄に増やさないように。」
「それとこの事を知っている人物を見つけ出せですね。」
先読みし結論づける。
「そう、後のことはリベリシュに入ってから進めて。」
酔ってる時は良くも悪くも時間を忘れる。
今日は最悪な酔いだか。




