サンディの策略
先ほどの交渉は決裂しギムレットは将希と激論の末別れ、重い空気を引きずったまま団長室に居た。ギムレットにとっては折半する必要がなくなりラッキー。一方の将希にとっては金というものに溺れ全額を失った。生粋のgamblerであるが全てを失っては意味がない。
団長室には調度品は少ないが団長が必要なものが団長の手の届く範囲に整理密集した感じで置いてある。その筆頭が羽ペンと紙だろ。1番取りやすいところに置かれている、その紙には三馬鹿についての報告書と1番上に書かれている。
棚も何個かあるがコーヒー用と紅茶用のカップが数個入っているのみである。
その他には特に目を引くものはない。
後ろからの逆光以外は。
「団長、そう言うわけで、新入団員の歓迎会を今日開きたいな〜って。どうですか?」
団長に促されてソファに座ったギムレットの説明が丁度終わり、卓球のラリーのように球はサンディに打たれた。
ギムレットは簡潔にそして心に訴えかけるように団長に説明をした。
新任団員の為なんです〜
最初ぐらい楽しく祝いましょうよ、いつ死ぬかわからないので。
団長もどうですかご一緒にたまにはみんなと呑みましょうよ、いつもいつも肩肘張っていても疲れますよ。
思い出作りじゃないですけど一回ぐらいあっても良いのでは?
などなどあった。
「うん、良いとは思うだけど何個か条件があるわね。」
「その条件とは?」
ギムレットも無下にはしないようだ。まぁ。ここで団長に逃げられては困るからか。
「三馬鹿を呼ばないこと」
それが絶対条件よ、と付け加える。
それはギムレットにとっては困難を極めることであった。
「それは無理かと。絶対に何処からか情報を嗅ぎつけ現れてタダ飲みすることが目に浮かびます」
ギムレットはそう言い団長も最初から不可能だと思っていたのか方針転換をする。
「タダ飲まされるより呼んだほうがマシかと」
「なら三馬鹿だけ料金高くして」
「それなら行けるかと。」
ギムレットもそれなら大丈夫と太鼓判を押す。
「で、誰呼ぶ気?」
「まずクライスなど歓迎会などが大嫌いな所は呼びません。一部の反団長派も呼びません。呼んだところできませんし。」
「うん、そうね、反団長派、ね〜影があるから光が輝く。そう思うでしょ」
「そ、そうかと」
急に話を振られたがギムレットの長年の経験でどうにか逃げれた。
「で、会費はいくら?」
「大体40人前後呼ぶので、3000マキシアで不足分は現地払いにしましょう。あと大変なので。」
「そうね、私は負けてくれるよね。」
「その〜ここは〜公平性の観点から払っていただいた方が宜しいかと。もし、払いたくないって文句言った団員達に強制的に払わす事が出来ますのでありがたいのですが。」
団長が払うなら払うしか無いという何とも酷い同調圧力であるがそれが1番適切なのかもしれない。
上が逃げ回ると下が逃げ回る。これは社会の縮図である。上が腐れば下も腐る。酷いことに上は腐っても切り取られる事はないが足が腐れば簡単に捨てられる。
流石のギムレットも真正面から金払えとは言わないがどうにかそのニュアンスを前面に押し出しかつ拒否出来ないように現実にあり得そうな場面を団長に想像させる。
「ならギムレットがその分私に払って。それなら払うわよ。」
今回は団長にその光景を想像させたのは裏目に出たようだ。
「わ、わかりました・・・では会費の余ったのを渡しましょう。」
「それ、ギムレットの懐に入るの?じゃないわね入れるが正解ね。」
将希同様、団長もすぐギムレットの策略に気づく。みんなやる事は同じみたいだ。
「いえいえ、そんなわけありませんよ、ちゃんと全額飯代に入れますから。懐には入れませんよ〜全くもう〜そもそも俺の懐大きくないですし。あはは、ははは」
本人ですら枯れた笑い声にしか出てこないつまんない事に団長は一切触れずにギムレットの枯れた目を見る
「そうかしらね。少しでも残れば入れそうな気はするけど。」
こういう時、無駄に突かない人は大切だと思う。その証拠にギムレットの目が生き生きと、し始める。まぁ、それでも枯れかけだが。
「ご安心ください。そんなに心配しなくても一銭残らす、全て団長に全額渡しますよ」
そう言いギムレットは左手で拳を作り胸に当てる。
「それだと私が巻き上げたように聞こえるのだけど、そう思うの、私だけ?どうギムレット」
ギムレットも反論が来るのは承知の上だったのかすぐに反応する。
「そうかと思いますが。いかせん団長が金と言ったらすぐ集まりますから。」
「やはり副団長交代にしましょうか。巻き上げた、ではなくて余った資金を回収しただけよ。私利私欲のためではなく騎士団の為にね。」
「それは巡り巡って団長の懐に名前を変えて湯水の如くしゃぶしゃぶ入りまくる。」
ギムレットの合いの手が素早く正確に入る。
「そうね、そうしてみんなのところに還元される。」
「それを団長が全て独占する。」
「うん。団長室に置いといて部外者立ち入り禁止にすれば、騎士団名義で買った物もつ私の物になるわね。」
「それなら結局上納金と変わらないのでは。」
「あなたが言わせたのでしょう。ギムレット」
「そんな〜団長も酷いですね。では団長も歓迎会に出席という事で良いですね。
では私は失礼します。予約しないと」
団長の返答を聞く前に逃げるようにギムレットは団長室を出ていくその背中に声がかかる。
「予算は全額、飯代に回せ、あいつらの飯代がいくらになろうが私の知ったことではない。じゃぶじゃぶ回収しろ。良いなギムレット」
「承知しております。余ったらいい酒でも飲みましょうか。」
「その酒を待ってるぞ。」
ギムレットは頷くホクホク笑顔で去っていく。
反団長派と呼ばれる一部の部隊長達本人はそんなことは一切言ってはいないが親団長派からは裏でそう呼ばれている。
三馬鹿の躾は不可能に近い。




