試験2日目。
将希の部下となる予定の可哀想子は今日団長主催のやらせ試験を行うこととなった。
騎士団臨時宿舎内に併設されている食堂に集められた将希たち。
サンディと昨日言った新人と思われる女の子が対面する形となり、その右にギムレットが座り、将希と新人2人は後ろで立たされている。
「じゃあ座って」
団長はそう促す。とその子はその通り座る。
「君がリナね」
テーブルに腰掛けるリナと呼ばれた少し薄い赤髪ショートの女性、見た目はまだ10代と言ったところに見える。体格は将希が好きそうな体格である。
「はい。そうです。」
団長は手を差し出す、リナは急いでその手を取る。
「私が陛下直轄騎士団団長サンディ。そして後ろにいるのがあったことがあると思うけど、副団長ギムレット」
サンディは手を離し、右に目を向ける。
「ギムレットです、これで2回目ですなリナ殿。」
ギムレットは少し頭を下げる。
「で細かいことは省くけど、左側の2人が君の同期に当たるナナサとギアラ、以上。」
「短くないですか」
「それ以上に言うことある?」
あえなくギアラは撃沈。
それを見たナナサは何も言わずに頭を下げる。
「それでギムレットから聞いたでしょ料理人志望なんだよね」
「はいそうです。」
何この純粋無垢な澄んだ目。可愛い。
「うふん、そう、ね。今騎士団は料理人は募集してないの」
「そうなんですか」
その声は驚きを隠そうとしているが少し漏れている。
「だから、君、陛下専属料理人にならない?」
「陛下専属の料理人・・・ですか、」
「答えは今じゃないくていい、今日中には欲しいけど」
答えに詰まったリナは無理やり答えを出そうとするがサンディが止める。
「だけど話は聞いといて損はないわ、後ろにもう1人居るでしょう、変なのが、彼、将希殿は陛下直属料理人として王城に先週から勤務中、陛下が直接登用した人材よ」
なぜこんなのが陛下専属の料理人になれたのか謎だけど。そう呟きながら将希に自己紹介を促す。
「将希殿は早くお願いします。」
「えっと、今紹介されました。将希です、一応専属料理人として先週から働いてます。でこんな奴って何ですかね」
「で、隠しておくのも面倒だから言うけど将希殿は異世界の旅人。」
将希の苦情など完全に無視して話を続ける
リナの瞼がパチクリと動く。サンディはうんうんと頷く。
「わかるわ、その気持ち、こんな奴が何で陛下直属の料理人で異世界の旅人なのかしらね。」
サンディも過去に同じようなことがあったのか、しみじみしている。当の将希は不満そうな表情をしている。
「こんな奴が、ってなんですかね」
「まぁこんな奴だけど、この世界の料理よりも格段に美味しい物を知ってるだから陛下は登用したそんな所みたいよ、」
将希の不満など無視して貶しているのか褒めているのか判断に困る事を言う。
「それって貶してるんですか?」
「そう思ったの?ならそうじゃないかしらね」
将希の左頬がピクリと動く。
「団長、私、陛下専属料理人になります。」
そんな中リナは決心がついたのかそう口にする。
「これの下に付くことになるけどいい?」
団長もリナの決心を汲み取り遊び気のある表情から団長としてのキリッとした表情に変わる。
「・・・はい、大丈夫です」
一度将希の方を見ると不自然な間が開き。少し詰まった返事をする。
「何かあったら私のところに来なさい、助けになってあげる。もし将希殿がリナの身体に指一本でも触れた時はもう2度と触らないようにしてあげる。」
団長はキリっと、団長ブラックジョークを言い切った表情を浮かべる。
「大丈夫ですよ〜俺には心に決めた人が居ますから、こんなあまちゃん手出しません。」
将希の脳内はいまだにクマリアの『好き』と言う一言とほっぺに残る女性特有の唇の柔らかさが今でも感覚として蘇る。それが今と壊れたレコーダーのように再生されている。
『好き』『好き』『大好き『好き『好き』
「あー・・・そうですね、」
全てを知っているサンディはそれ以上の事は言わなかった。こうなると本当のことを言って将希をわざとどん底に落とすか、それとも言わないでいつか知った時の心の穴を突くべきなのか。(どっちも面白そうね。)
「リナ、本当に何かあったらすぐ私のところに来て、」
団長は念を押す。それだけ将希のくまちゃんへの愛が重いことを知っているもしもうこの世にすら居ないとバレたら将希は何をしでかすか、サンディには見当もつかない。しかしここで言っても大惨事間違い無し。(言わない方が良さそうね)
「・・・わかりました団長」
その押しの強さに一瞬将希の方を見る。
それに気づいた団長はうんうんと頷く。
「じゃあ、まずはテストね。まず、説明した方が良いはよね今、私たち騎士団は後ろにいる将希殿の見聞を広める為に。陛下の命により王都から離れて城塞都市パルク向かって、その足でここ湾岸都市リベリシュに着いて、あと3日ほどは滞在する予定。でだけど。その帰る時にリナも連れて行こうと思うんだけど、どう?まぁ、民間の移動手段を使っても大丈夫だけど。」
談笑ムードの醸し出す団長だかその裏腹には何を隠して居るのか。
(団長もいつも通りですね、わざと時間的制約を付けて時間がないことをアピールする。その気になれば一週間でも延ばせるものを、これも交渉の一つなのでしょう。団長には実力だけではなく話術も必要なんですね、いつかその座、実力で奪い取ってやる)
ギムレットは団長の常套句に頭を悩ませているようだ。そしていつか団長を超えると豪語する。
「着いていきます。」
即答で答える。ギムレットの目には何が映る。団長の目は獲物を見つけた猫のような鋭い目を見せる。そして部外者は俺関係ないを貫く。
「そう、良い返事ね、まぁ3日って言うのは少し大袈裟だけどね、色々準備もあるしもう少し待つけど。」
団長は手を組み直し、話を続ける。
「そうね、そう言えば、聞いてなかったわね、後ろの2人はどうする?私たちと一緒に王都に向かう?それとも単独で向かう?」
団長は立ち上がり後ろの2人の目の前に向かう。
「私は行きます」
「俺も行きます、なんかまんまと嵌められたような気がするけど」
2人はそう声を揃える。
「わかったわ2人は今日は解散ギムレット案内お願い」
「かしこまりました。」
ギムレットは立ち上がり2人を外へ案内する。
「こちらです。」
サンディは3人が外に向かったことを確認してから話し出す。
「では、お二人はお帰りになったようなので続けますか、リナちゃんちょっと奥に来て」
「うわーヤクザの〆言葉見たい。」
「少し口を塞ぎましょうか将希殿、もしよろしければ一生開かないようにしますが?どうします。」
今にも接着剤なり刃物なりで口を塞ごうと言う姿勢を見せる。
「何でもないです、」
「何がですか?」
「何でもないです、」
将希の顔色はどんどん悪くなり、少しずつ後ろへ離れる。
「変な人ですね、言いたいことがあれば言えばいいのに。そうしたら、斬り刻むのに。」
すごい清々しい笑顔でふっと笑う、
流石のリナも少し引いている。
「あの、団長、」
「そうね早く行かないと。将希殿つまらないこと言わないで早く来てください、私は料理に関しては素人同然です。誠に遺憾ながら将希殿の力を利用したいので。ほんとはこんなことしたくありませんが。なので毒味、いえ、味見係をお願いします。」
本音が見え隠れ、いや、見え見えだ。わざとやっているのだろう。
「なんか所々闇が聞こえたような気がするけどね毒味やら利用やら殺すやら物騒な事がね」
「殺すなんて言っていませんが、そもそも私は本心からお願いしています。早く来てください時間がありません。将希殿は毎日暇なのでよろしいでしょうか私は騎士団長なので仕事があるのです。」
「はいはい、行けばいいんでしょ行けば」
騎士団長の仕事だってさ、何があるんだろうね、暇そうに見えるけど。
将希は諦め、深く歌うようにため息をつく。そしてゆっくりと奥へ向かう。
「ではリナちゃん奥へ、」
その声は下心丸出しの獣のような・・・ものであった
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サンディは キッチンに入るなりすぐに説明を始める。
「では、まず案内ね、この人」
サンディはキッチンでとんとんとんとんすごい速さで黙々とも野菜を切っているシェフを捕まえる。
「あの、仕事中なのですかサンディ様。何か用ですか?」
このぐらいの事いつもの事なのか、その顔はやれやれと言っている。いや、もう諦めたのかこの人のこの言動には。そんな感じだ。
「連絡したはずよ、」
「はい連絡はもらいました。
「でしょ」
「しかし昨日の予定では?私は待っていました。ずっと待っても何故か誰も現れませんでした、何か理由があるのかと3時間待ちました。しかし誰も現れませんでした。手紙の差出人はサンディ様からでしたのでいつも通り時間を間違えているのだと思い待ちました、しかし誰も現れませんでした。」
前言撤回。相当不満があるようだな、慣れたってより諦めた、なんだろうな・・・・・
そんなに待ったんだな3回も待ちましたっていうほどに。
「ヒューマンエラーね。」
「そうですか、はぁ、わかりました、衛兵達の昼飯は遅らせましょう。暴動が起きなければ良いですが」
「ありがとう」
満面の笑みでその男の両手を握る。将希がそんなことやられたらいちコロだがすでにこの男はそんなことに慣れているようだ顔を赤めたりしない。
「何かありましたらサンディ様の名前を出しますのでご安心ください」
「ヒックス、ひどいね。人の不幸は蜜の味じゃないよ、」
「それはサンディ様の話では?」
「何の話?」
サンディはしらを切り、首を少し傾ける。
ヒックスもサンディのそんな態度は日常茶飯事なのか、もう諦めている。
「うふん、話を戻して、今回の要件と言うのは将希殿の世界の異世界料理をこの国に広めることですか。」
「何でそれ知ってるの?」
その目には焦りが浮かぶ。どこからその情報が漏れたのか急いで思考するがその前に答えは言われる。
「珍しく、サンディ様が驚く顔を見られましたな、それでその話ですか、先日酔っ払って三馬鹿トリオとギャギャーやってました、その時に大声でさわいでました。食堂にいた者は全員知っているでしょう、かなり噂も流れています。」
「だと思った。はぁ、本当三馬鹿どうにか・・・処分しないと、」
処分 サンディのその呟きには一体どんな言葉を含んでいるのだろう、想像に容易いが想像したくない。
「まぁ、三馬鹿は後で処理しましょう。今はリナちゃんの方ね、審査員は私と将希殿。じゃあ。頑張って。」
そしてその結果最初からやらせだったがリナの作った料理は美味かった。
将希もいつものひねくれた心からではなく心から上手いと言った。
団長もいつもは疑いまくっているが今日は美味しいと言ったら。
そして何故がヒックスまで連れてこられて食べさせられてうまいといった。
そんなこんなあり、リナの直轄料理人としての第一歩が始まったのである。
人物紹介
ナナサ・ソーラ
年齢18才
金髪ロングが特徴の年頃の女の子である。
騎士団に何故入ろうと思ったかと聞くと本人曰く、自分が女子であるが故に親にはお淑やかにだとかもっと女の子らしくだとか言われ続けたが。
去年、リベリシュの街に騎士団が滞在してその時に団長として大勢の男達をまとめている団長を見て騎士団に入れば自分も性別関係なく戦えると思ったからちょうどスカウトをしていた副団長ギムレットの誘いに乗ったとのこと。たとえギムレットがスカウトしなくても単身乗り込む気だった本人は弟に言っていた。
ギアラ
年齢不明
黒髪のせいもあるのか見た目はまだ16前後と若い。
副団長ギムレットがスカウト活動で路地裏を歩いていた時、物陰からギムレットを殺し所持品を盗もうとしたとのこと。
その際は何事もなかったのかようにギムレットは歩きギアラが出てきた時にはすでに背後を取られていた。
「物盗りかい」そう声をかけたそうだ。そして「だが動きは悪くない。ちょっと来てもらおうか。」そう言い首をトンと叩き失神させ誰もいない山奥に連れ込み。そこで手合わせをした。結果は前話、記載の通り。
経歴として親なし子である6歳の頃リベリシュで流行病が流行、両親を失った。頼れる身内はなく、大家に親が死んだことがバレ、ギアラはバレた瞬間今着ている服以外何も回収することはできず雪が降り積もる路地へ追い出された。家の中にあった物は大家が全て売り払った。思い出も記憶もプレゼントも。全て。全てを。「金になるじゃねえか」と言う笑い声を髪の毛に雪が積もりながら流れない涙を流しながら、復讐の心を燃やしていた。
復讐は果たせたが心の穴は埋まらず、家も家族も思い出も帰ってくることはなく、人影のない裏路地で通行人を襲いその日の泡銭を稼いでいた。
それが何年も続くとどんなことをやろうと一流になってしまう。




