外にて。
「会議は中断ギムレットとギアラ、ナナサ、ワジルは私についてきて、将希殿もついてきてください。」
「え?俺も?」
将希は自分が呼ばれるとは全く思っていなかったのか、ポカンとしてる。
「えぇ、勝手に出歩いて行方不明になられても困るので。」
つい昨日賊共に誘拐され殺されかけたのはどこ行ったのか。サンディの顔は言葉で表現できないほど歪む。
「信用ないな〜」
「ええ。まぁ行きましょう」
お気楽で結構ね、
サンディはそんな事を考えながら立ち上がる。
「将希殿、戦いは何だと思います?」
外に向かう道中サンディ藪から棒に聞いてくる。
「ん?ん〜人殺し」
「その通りです」
「まぁ、違うよ、ね?えっ?」
「その通りと言いました」
その後将希が質問しても答えることはなかった。
●
外に出たサンディ達はまずナナサの脚力を試すようだ。
「ナナサ、まずこの100mをスキル無し、でジグザグに走ってもらうわ、私の予想だと8秒台後半ね、」
サンディの前にあるのは普通のトラックとコーンが一定間隔でジグザグに置かれたトラック。まずは通常時のタイムを測るみたいだ。
「わかりました。」
すでにアップを始めているナナサは立ち上がる。
「もう行ける。」
「はい」
「そう。でナナサ、自分のタイムどのぐらいが出る。」
「8秒台だと思います。」
サンディは頷いて「うん、わかった」と呟く。
「私はゴールラインにいるからギムレット、スタートはお願い、」
サンディはそう言いギムレットの返事が来る前に軽く走り出す。
「・・了解」
「そう言えば将希殿とは初対面ですね」
気を取り直したギムレットは将希に近づく。
「そうですね、ギムレット、さん?」
「団長の客人であれば呼び捨てでギムレットとお呼びください。」
将希はそれに真っ直ぐに頷く。
「わかりましたギムレットの事は少し聞いてますよ。団長にも勝てるって。」
「わけありませんよ、団長は本当に強いお方です。私など真正面から戦ったら勝てません。」
「なら、多少せこい手使えば勝てるの?」
「ええ型に囚われなければ一応は互角まで持ち込めます。」
そんなことを言っている2人にサンディの声が届く。
「早くしろ!」
100m向こうに着いたサンディがここまでクリアに聞こえるほどに怒鳴る。
「わかってます!」
ギムレットはそう言いナナサに近づく。
「準備は良い?」
「はい大丈夫です。」
ギムレットは手に持つ実弾入りの銃を空に向ける。
「この実弾入りの銃を空に撃ったらスタート良い」
「はい」
ナナサは独特の緊張感に飲まれ少し固くなっている。
「緊張しなくて良いって言っても。無理な話だな」
ギムレットはそう呟き・・・
「位置について・・・」
ナナサは耳に全神経を注ぎ込む。引き金を引く僅かな音も聞き漏らさないと言わんほどに。
ギムレットの引き金を引く右手に力が入り数ミリ動く。
「バッン!、」
刹那、拳銃から放たれた綺麗な爆音が建物全体に這うように反響し響く。
音より少し遅れてサンディがストップウォッチをスタートさせナナサを見つめる。
音に反応したナナサは一気に足元に力を入れ。
駆け出す。
ガッチリと踏み込まれた左足の地面からは砂埃が舞い上がる。
将希が拳銃の爆音に驚いている間に、
ナナサは綺麗なストライドでグングン加速していき、リズミカルな足音がどんどん回転数を上げ早く聞こえる。
「速ぇ〜なんだよこれ」
将希は、そう呟き、ギムレットが答える。
「そうなんです私も最初見た時この速さには驚きました。ナナサには全てを置き去りにする速さがあります。」
ギムレットは手のひらを広げ、落ちてきた拳銃の弾をキャッチする。
ナナサの耳には風を切る音が途切れることなく耳を刺激する。
速く!速く!速く
ナナサは視線を一点サンディに合わせ前に進む。
「ここまで約3.5思ったより速い」
サンディはストップウォッチに目を移しタイムを確認する。
「足の回転するもかなりある。ちょっと教えてあげれば少し短めの片手剣に盾を持たせたらスピードが消えるかもしれない、」
次はナナサの足元を見ながら呟く。
その間にもナナサの足は止まらない、既にゴール直前。サンディの持つストップウォッチは7秒前半を示す。
「8秒2!」
サンディがギムレット達にも聞こえるように声を上げる。
ゴール通過した直後ナナサは勢いそのまま倒れ込みサンディが目に止まらぬ速さでナナサの体を抱き抱える。
「速いわね、だけどこれで全部体力使い切ったみたいね、」
抱き抱えたままサンディはいつもは見せない表の顔をする。
「すいません」
「いいのよ」
だけどこれは剣も防具も着けないで全力で走っただけ。防具着けた時にどのくらい変わるか、そこが問題ね、それでもこの脚力は街中での警備には使えそうね。スキル無しなら騎士団の中でもトップテンに入るレベルね。
「起きれる?」
「はい。」
ナナサを起こしてスタートラインで呑気に談笑しているギムレット達を呼び寄せ、次の説明をする。
「団長がお呼びだ」
「そうですね、」
「俺もですか?」
「そうだ」
3人はゆっくりと歩き出す。
「そう言えば将希殿は異世界の旅人だとお聞きしました。」
●
団長のところまでゆっくりと談笑しながらきた3人
「じゃあ、次、ギアラは私が直々に相手してあげる。」
ギアラを蛇の目のようにギロっと見つめる。
「団長、それはまだギアラには早いのでは」
ギムレットが慌てて止めに入る。
「じゃあ。将希にやらせる?たとえ新人でもスキル無しなら一瞬で方が付くでしょね、それにギムレットは既に戦ってる。
将希殿じゃ瞬殺、ギムレットじゃ手の内を知ってる、必然的に私が出なくてはならない。そうでしょ。」
これで問題無しと言うようにサンディは言う、その目は若い芽を摘み取る気満々だ。
「・・わかりました、しかし私が審判をするのが条件です。危険ならばすぐ止めますいいですか。」
「ええ、それで良いわよ」
サンディはそれに頷き、予備のレイピアを取りに戻る。
何も刺さっていない鞘を見ていつの日かのイラつきが倍加して戻る。先日グランドに負けに近い引き分けを喰らい、それだけではなく特注の剣を折られ、剣士としてあるまじき辱めを受けた。
先ほども折られたとグランドに突かれ、一瞬本当に斬り殺そうかとしたほどである、実際足元に隠してある予備のレイピアを握ったほどである。が理性でどうにか止めた。
「グランド」
歯軋りの音が聞こえるほどにイラついているみたいだ。
「今度こそ殺してやる。」
レイピアを模擬人間像の目にも留まらぬ速さで心臓に突きつける。
その声は冗談と思いたいほどに冷たく鋭く全てを斬り刻むほどに冷酷なものであった。
「まぁ、ギアラには手加減しとかないと」
一瞬でその表情を破顔させる。
●
サンディは防具は着ずにレイピアだけを装備する。防具すら着けていないサンディだがその気迫は見るものを圧倒する。
目を合わせただけで撃ち殺されると錯覚するほどに全身から危険信号が出される。
「俺、死ぬかも」
サンディと対面したギアラは呟く。これ以上声が出ないみたいだ。
「大丈夫・・・多分」
ギムレットはそう、話しかけるか余計心配を煽るだけであった。
「ギムレットさん」
「副団長だ、ギアラ、副団長と呼べ、」
「それ、無意味なやつですよ、ギムレット」
将希は首を振りながらやれやれと言ったところだ。
「じゃ、団長始めます」
「わかった」
団長はいつも通り予備のレイピアを腰に刺し手を添えいつでも抜ける体制を取る。
一方、ギアラ持つ剣は既に手汗で濡れている。
(震えは見えないそれだけでもすごいわ今年のスカウトは成功みたいね、でもね)
決闘前の独特の風が2人の間を切り裂く。
「・・・始め!」
カチッ
団長のレイピアの先がギアラの胴胸、心臓の位置に触る。
ゴトッ、
ギアラは無意識に剣から手を離し、地面に落ちる前に団長が取り上げる。
「落としたわよ」
いつの間にかレイピアを鞘に仕舞い、ギアラが落とした剣をその手にそのまま握らせる。
「・・・・負けました」
団長も大変だ会いたくもない相手に会って。
面倒な相手を処分して。
将希のお世話もして。
団長としての仕事もこなし。
大変だ。
なんか。何だろう。




