将希の観光日誌 第四話
「・・・俺もう少しここに居るから、将希は市場の中でも見ててくれ。」
サムウェルは力無くうなだれる。
将希は少し左側を見たが無言で立ち上がり市場に向かう。
「すまんな、」
その声だけが胸の中で反響する。
将希は何も言わずに市場に1人向かう。
良く言えば、話しかけてほしくない時に話しかけない。
悪く言えば、触れようともしなかった。それは逃げたとも取れる。
触れないことが正解なのかもしれないが、
将希の心にはどんよりとした不快感が深く根付く。
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歩いてる。歩けている。でも心は歩けてない。身体は進んでいるが、心はついてこない。
瞬きをするとサムウェルの項垂れた様子が瞼の裏に映る、
周りには商人と買い物客の活気溢れる市場が流れているが、その様子は将希の目には映らない、目は見ている、匂いも感じる、音も聞こえる、だが、何にも感じない。
ふと、踵を返す。
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こちらに近づいてくる足音がサムウェルの耳に入り、顔を上げる。その顔はここにいるはずもないものを見るような顔である。
「・・・まさき」
「よぉ、サムウェル」
将希は右手のひらを中途半端に上げる。
「・・・なんで、戻ってきた」
「・友人を1人、置いてきぼりにはできない。」
将希はゆっくりサムウェルの隣に腰掛けて背中を伸ばす。
「なんで、戻ってきた、将希」
「俺の友人をひとりぼっちにさせる訳には行かない。目覚めが悪くなる。」
「そうかよ、」
サムウェルは立ち上がり、振り返る
「悪かった」
そう言い左手を差し出す、
「謝る相手は俺じゃない」
そう言い将希はその差し出された手を振り払う。将希は立ち上がり歩き出す。
「ほら、観光案内してもらわないと、」
「そうだな、長くなるぞ良いのか?」
「大丈夫だ」
「なら、おもっきり案内してやる」
「あぁ、そうしてくれ」
それを影から見ている男。
「団長に報告しとくか面倒だし」
その男は面倒くさそうに頭を掻きながら将希達とは反対側に歩き出す。
「そうだ、スカウトした奴らも連れて行かないと、面倒ちっ〜な」
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サムウェルの観光案内は続く。先程までの思い空気はどこに行ったと言って良いほどあるサムウェルは案内を続けるがいまだに心のどこかには抜け切らない想いがあるのだろう。ふと、ため息をつく。
「ため息ばっか、なんだよ、」
せっかく、気分上げていこうといていた矢先のため息に流石のスルー性能を持った将希でも反応する。
「あー。すみません。」
「謝んないでくれよ、なんか俺が悪もんみたいじゃん、」
そして今度は将希が深く、ため息をつく。「面倒くっさい〜奴だ」サムウェルに聞こえないように呟く。
「悪い、」
「あ″〜ぁ、だから謝んないでくれ」
「悪い」
サムウェルは下を向きニヤッと笑う。
「さぁ。楽しもうぜ、」
下を向いてバレないようにしているが将希から見えている。将希も釣られてニヤける。
「そうだな将希悪かったとは言わない」
「そこは言えよバカ」
「あはは、そうだな悪かった」
「だから言うなよ、」
「お前が言えって言っんだろ」
ギャーギャー騒ぎながら2人は市場奥のの鮮魚エリアに向かう。
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「ここが鮮魚エリアですよ」
ゴタゴタ喋りながら歩いて食べて飲み食いし、将希達はかなり時間をかけここまでたどり着いた。
「ふゅん、食べ物?」
焼き肉の串を咥えながら、そう聞く将希。その手にはまだ串が刺さった紙袋が一つ見える。
「いつの間にかそれ買ったんですか?ずっと後ろを歩いてきていたと思いましたが。」
「ん?さっき、食べる?」
将希は手に持つ紙袋を手渡す。
「食べますよ」
即答で受け取るサムウェル。
将希はニヤニヤと笑っている。
(これ、餌付けだな、さっきも食べてたし)
さっきは目に見える形で買い何故かその金をサムウェルが払っていた。
「そんなお金持ってんるなら自分で払ってくださいよ」
「そうだな〜、俺結構持ってるし。」
「そうですか」
さぞどうでも良いと言った返答をする。
が、それが失敗だった。
「聞きたいか?」
「いえ。結構です」
「聞きたいだろ」
「だから結構です」
「俺な、ろっ」
「ダメですって」
サムウェルはいきなり将希の口に焼き肉の袋を突っ込む。
「ぐゅぶ、はにすんはよ」
「ここでもしそんなこと言ったら命はありませんよ、」
サムウェルはいつになく危機感を覚える目で忠告する。
「もし、そう言ったことを言ったら、物陰に入った瞬間、その後一生太陽の光を見ることは叶わなくなります。死にますよ。」
それが意味すること、つまり殺される。そうサムウェルは言外に言う。いや、口に出ていた。
「まじ?」
サムウェルは頷く。「周りを見てください」そう言われて将希はゆっくりと周りを見渡す。
「何、この視線。」
「商人達は高値で品物を買わせようとしてます。
他の刺すような視線は誘拐して金を奪おうとしています。」
サムウェルは小声で言い、将希を押し出すように歩き出す。
「早くここから離れますよ。いつ何が起きても不思議ではない。」
サムウェルほ路地を適当に背後をつけている奴らを撒くように歩く。
路地を曲がったり、引き返したり人混みを右に左に動き背後を気にして、時々出店で食い物買って。
撒きながら食べながら市場を満喫する?
「美味いなこれ」
次は真っ赤なりんごに近い果物を皮ごと頬張る。
「それは南部の街ナガスの特産品ですね、」
「見ただけでよく分かるな。」
食べかけのりんごをじっくり見るがなんのことやらと言った表情だ。
「ええ、この色のりんごが生産されている都市はナガスのみですし、」
「そらゃわか、えっ?どう言うこと?」
一瞬頷き、飲み込みかけた将希だがふとおかしな点に気づき言葉を吐き出す。
「他の都市で生産されたりんごは何故か全て別の色になるのです。ここリベリシュでも生産されていますが、色的には緑色をしてます。パルクでは白色の物が生産されていますし。王都周辺では紫色の物がありますね。」
「へぇ〜よくわからん」
紫陽花に近いのかな。紫陽花も土壌がアルカリか酸性で色が変わるって言うし、しらんけど。でもね、白ってどんな感じだろうな、パルクの市場に無かったような気がするけど。
「まだ、原理は解明されておりませんが美味しいので皆食べています。」
「なぁ。俺たちって逃げてるんだよな、」
つい忘れるが今は追ってからの逃走中だったよな、なんでこんなの呑気に飲み食いしてるんだ?。
「ええ、逃げる為には逃げている感を出すのは悪手です簡単に言えばそのような雰囲気が漏れます。
逃げている時に絶対に必要なのは逃げていると思わせないようにすることです
例えばフードを目深くに被っていたら逆に怪しいですよね。国家指名手配の場合はそれもありなのかも知れません。しかし今回の場合まだ顔が広まっているわけではなくほんの少しの間、横から見られたらだけ、なのでこの場合必要なのは景色に溶け込む事です例えば近くにいても気付かさないようにすることが必要です。なので今私たちは普通に飲み食いしてやり過ごそうとしているます。なので変なことはせず黙って下さい」
「はい」
いつもはありえないサムウェルの気迫にあんたが変なことしていいのかと思ったがどうにかりんごと共に飲み込んだ。
「では撒いたようなので行きましょう」
先ほどの暗い声とは裏腹に声に張りが出る。
サムウェルが先行し歩く。その斜め2歩後ろを将希が歩くが人混みの中サムウェルはそれを避けるように右に左にブレながら歩く。
「サムウェル?」
先ほど前まで前を歩いていたサムウェルの姿が見えていたが今は見えない。将希の前にはグランドの身長と同じほどあるでかい男が立ちはだかる、
それを避けるように右に動くがそいつも同じように右に動く。
それをまた左に動くがこれ以上行かせないように同じように動く。
いつの間にか将希の全方向に大男達が不自然に将希を囲む。
「にいちゃん、やっと見つけたぜ、ちょっと、ヅラ貸せや」
将希の肩を臭い声と共にゴツい手が掴む。
そして視界が黒く消える。
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裏路地に連れ込まれた将希は椅子に縛られ、麻袋を顔にかけられ、賊頭と見られる他の大男より少し小さい奴に尋問を受ける。
「にいちゃん、金あるんだろ。さっき自慢げに言ってたよな、これ外さないと聞こえないか」
頭は強引に麻袋を引き剥がす。真っ暗な世界から一気に表の明るさの変化に目がついていけないがゆっくりと目が明るさに慣れる。
「で、にいちゃん 金 あるんだろ。別に痛めつけようなんて思っちゃいない、死んだら金の在処も分からなくなる」
お頭は手のひらを頭上に向けるとそこに部下がやってくる。
「お頭、持ってきましたぜ。例のもの」
賊のお仲間が刃渡り20cm近いナイフを頭に手渡す。
「おぉ、サンキュー、」
受け取った、冷たいナイフの背を将希の首元に滑らせる。
だから。人が集まるところでそういうことやったらダメだってみんな言うんですね。
まぁ、目の前で金見せつけられ、周りに誰もいないなら。そしてそいつがチョロそうなら、ね。うんするかも。




