将希の観光日誌 第三話
「リベリシュ市場に来たら一番最初に見るものといえば?」
「・・・・」
将希が答えないとサムウェルは答えるまで聞く。
「一番最初に見るものは?」
「ん?食べ物」
そう答えた将希だがサムウェルが期待した答えとは程遠いものであった。
「はぁ、流石に広いですね、正解は魚ですよ さ か な 」
「あっ。そうなんだ、魚ね。そう魚、」
いつにもなくハイテンションなサムウェル。
いつにもなくローテンションな将希。
「どうしたんだ、将希いつにもなくテンションが低いじゃなですか」
「質問で返すようで悪いですけどなんでサムウェルははなんで、そんなハイテンションなんですか。」
今日のサムウェルはなぜか声が弾む。いつもは三馬鹿と呼ばれる団長の胃カリカリが起きているのに、本当に今日はおかしい。
今日のサムウェルは何があったんだ。
将希も、サムウェルの異変を感じ取っているようだ。だが面倒だから今まで口にはしなかった。
「やっと気づきましたか将希殿。」
「な、何が?」
サムウェルの無駄に変な圧で将希はたじろぐ、
「なんといっても。リベリシュは私の地元なんです!」
「そ、そうなんだ」
サムウェルがハイテンションな理由は将希とっては本当にどうでも良い話であった、
「そうなんです。リベリシュは私の地元です、なのでここリベリシュ市場もよく遊び場にしてカール、ブラットリーとガキ泥棒3人組って呼ばれてましたよ」
「えっ、そうなの?それにあの2人も?で3人で泥棒?」
「そうなんですよ3人でちょっと拝借してましたね。2人は逃げ足が遅くてよく捕まってましたね。私は逃げ足だけは速かったのでは」
騎士団員が泥棒?真逆だな、ぜってぇあり得ねえ。ってどんな冗談にもなんねぇ。
「3人でそんな事してたの?」
「あはは。」
サムウェルは苦笑い笑いしながら頭を掻く
「若気の至りと言うやつですよ」
「そんな事ばっかり続けていたら騎士団に捕まりましてね。その捕まえた騎士が団長だったんですよ、本当なら投獄されてもおかしくなかった俺たちを団長は雑用として騎士団で雇ってくれたんです。」
へぇ、そんな過去があったんだな、ならそのまま捕まってればよかったのにね、だってサンディさん大変そうだし後始末で、いや尻拭いか、まぁどのみち大変そう。
「コソ泥から騎士団の雑用にそして騎士団員にすごい出世だなサムウェルは」
あーだこーだ言いながらも将希はサムウェルの過去を労る。ある種のシンデレラストーリーってやつだなコソ泥から騎士団員考えると凄いな。まぁ、俺なら投獄するけどね、なんでサンディは雑用にしたんだろうな。
「そうなんですよ、えへへ」
「お前のおかげじゃねぇぞ」
如何にも自分の手柄のようにサムウェルは語るがそんな優越感はすぐに将希に掻き消される。
「いえいえ。俺のおかげですって俺の実力が団長に認められて今ここに居るんですから」
「団長が居たらどんな思いなんだろうな」
さぞ。悲しむんだらうな。なんでこんな奴拾ったんだろうって、ってな。
本当なんですこんなコソ泥雑用にしたんだろうな。そんな理由があるようには見えないし、もしかしたら今の団長とは違って当時の団長はまだ若かったってことか?。
「そりゃ喜びますって、」
「それ、本気で言ってる?」
「・・・いいえ、」
サムウェルは自分の心に閉じ込めた感情を再確認する。
「三馬鹿って俺たち呼ばれてるんですよね・・・」
それに将希は頷いた。
「まぁ。そうだな、もうあの2人は改心は無理だろ、ならサムウェルだけでも改心しても良いんじゃないですかね、」
「そう、なんだろうな、改心した方が良いんだろうけど、だがあの2人を置いていくことはできない、昔からの仲間だ」
サムウェルは悩んでいるのか近くにあった椅子に腰掛ける。
「わかってはいるんだ、わかってる、でもわかっていないんだ。俺ら3人はいつも一緒にいたんだ、俺はまともに、ブラットリーは日和見、カールはあの通り馬鹿だった。それは昔から変わらない、わかっているんだ。だからこそ、俺はあいつらを捨てられない、腐れ縁って奴なんだろうな・・・」
誰も聞いていないのにサムウェルは自嘲気味に呟く。
「なら、強制的に改心させれば?」
隣に座った将希はそう言うが
「それは好かん。」
「そうかよ」
この通りである。これだから「腐れ縁」って事か馬鹿だ。なんだろう毎日嫌いだって言って翌日には仲直りしてるカップルみたいなクソ馬鹿感がある。
「はぁ、なら、どうするんだよ」
面倒臭いため息が漏れる。ほんとどうするんだよ、俺が考えてもなんの解決にはなりやしねぇ。こればっかりは自分で考えてもらわんと。
「どうしたら良いんですかね、俺・・・」
「知らねぇよーそんな事、」
そう。吐き捨てる。そんなこと聞かれたって困る。俺に出来ることアドバイスしかない。
「そう・・ですよね。言われても困りますよね、あはは・・・」
サムウェルは哀しそうに笑う。
その肩は落ちきり、失われた時間は取り返せないと言う事を物語っている。
「青年、悩んでいるようだな」
「ギャャャ!!」
突然、サムウェルの両肩を掴まれ、立ち上がる。
「誰だよあんた!」
「良いから聞け。座れ」
その男は怒り心頭のサムウェルを手懐けて、座らせ、その隣に座る、サムウェルはさっきからずっと顔を伏せている。
「フン、」
「青年。悩んでいるようだな、言いたことがあるなら言ってみろ、」
誰?このおっさん、つーか面倒そうなのがまた増えた。
「・・・・・・」
「まぁ、喋り難いよな、いきなり知らない奴に喋れなんて言われても、」
その男は自分でもわかっているのかそう言う。
「知らない奴だからこそ喋れる事もあるんじゃないか?」
「そう・・・ですね」
「ああ、そうだ。無駄に知った間柄には喋り難いことでも、離れず近い奴には言える、それこそ飲み屋のバァさんなんてその典型的な例だろ、まぁ、ただ酔っておかしくなってるだけかもしれないけどな」
「そう言うもんなんですか?」
将希にはほとんど聞こえないほどの声量だがその男は何も言わず、その言葉の続きをじっと待つ。
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「おれ、どうしたら良いんですかね」
「・・・」
その男は次の言葉を待っているのか何も答えない。
「別に筋道とか要らないじゃないか?、分かりにくくても、纏まってなくても、言葉にしてみるのが肝心だと、俺は思う。別に隠したって良いんだ言いたくないなら、だが、隠すだけなら、誰にだって出来る。」
その男はサムウェルの方に手を置きながら話す。
「言葉にするのは凄く簡単だ、だから凄く難しい。出てきた言葉が正解じゃないかもしれない、そう考えると言葉なんか出なくなる。そりゃ仕方ねぇ事だ、人間誰だって心のどこかで間違えたくないって思ってる。だからこそ人間は言葉にする。それを伝える為に。俺の持論だ、正解じゃないがな、だが俺にとっては大正解だ。」
「俺は・・・昔、昔、ここら辺をよく遊び場にしてたんです・・・」
サムウェルは言葉に詰まりながら一言一言紡いでいく。それをその男は黙って聞くだけである。
「うん、それで」
時よりそう優しく声をかける。
「3人でまぁ、つるんでたんです、」
「で。今その3人と騎士団に居て、騎士団じゃ影で三馬鹿って呼ばれてるんです。」
「うん、」
「俺はまぁ、昔馴染みだから・・・なって言ったら良いんだろ・・・」
その男はサムウェルの言いたいことがわかるのか何も言わないでじっと待つ。
「今もなんか一緒に居て、あいつらが馬鹿するのからそれに巻き込まれて、俺まで三馬鹿って呼ばれてんです。」
「うん」
その男はただ頷く。だがサムウェルの目にはそんなのは映っていない。
「だから俺はどうしたら良いんですか、」
「君は、その友達をどうしたいんだい、」
その男は慎重に言葉を紡ぐ。
「俺は・・・俺は、あいつらを、仲間だけど今のままじゃもう一緒に入れない。」
「ならどうするべきか、君がその友達から離れるのか、それともその友達の道を変えるのか。時に離れると言う選択肢は正しい道になる。だがしかし一度離れたらもう戻らない。離れる覚悟がないのであれば選ばないだろう。君にその友達を変えられるだけの力があればゆっくりでも変える事も出来るだろう、だが痛みは伴う、血も流れる。」
その男は答えを一切言わずに選択肢を増やす。そして削る。
「結局の話、何をしようとしても 覚悟
覚悟が大事だ、
本気でやる気がなければ全て上手くいかない。
生半可なやり方では進む事もない。
そして最後に、
本気でやっても変わらない事だってある。」
その男は解決を促しているのか問題を増やしているのかよくわからない事を言う。
「まぁ。答えは自分で考えろ」
その男はそう言い立ち上がる。
「そんな簡単に出る答えなんて答えじゃないかもしれないな。」
まさか、サムウェル達3人にそんな過去があったとは!三馬鹿トリオ健在と言ったところ。
そもそもサムウェルってリベリシュの出身で捕まってサンディに助けられた、だから辞めさせらめない?あははそんなわけ、そんな、わけ、ないよね、ないって言って。
謎の男謎ですね、急に現れて言うだけ言って答えは言わない。厄介だ。
いつか三馬鹿日誌なんて書くか、ボツだな。
書くことがない。




