三馬鹿
「見てください」
そう言うとサンディ前に向かい指を指した。それに釣られて将希が同じ方向を見ると太陽の光が地平線から姿を覗かせる。
「もう日が昇ります」
「綺麗だな、」
「ええ、そうですね、」
陽の光に照らされ2人の影がどんどん広がっていく。
「やっぱり動いてんるだなちゃんと」
この世界って地動説とかってあるのか?そもそもの話。
「動いてるとは?」
「ん?あぁ、こっちの話」
「そうですか」
今日のサンディは渋々引いた。長引くと面倒だと感じ取ったのだろう。
「結構魔物ってうろちょろしてるんだな」
朝日に照らされて初めてわかったが結構魔物って居るんだな。
「そうですよ。そもそも魔物の多くが夜行性、なので夜は魔物のテリトリーです、カイブロスがここに居るので近づいてくることはありませんが」
「よくそんなところで寝れたなこいつらも」
将希の視線の先には忘れていたが3人寝ている。
「少し危機意識が足りないようですね野生の本能を起こす必要がありますね。」
怖い、
その後、見張り台では将希がサンディ観光案内が続く。
リベリシュでは魚が美味いだとか酒が進むだとか、イカ焼きの店には当たり外れがあって当たりならそりゃ美味いハズレなら当たるとか、あそこの店は安いとか美味い話を言っていた。
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その後も観光案内は続けられていたが、魔物に襲われるといったこともなく3人は寝続けて、起きた時にはサンディの「おはよう、何してたのかな」が炸裂した。3人は全力で逃げようとしたがまだ酔いがのこっているのかそれとも酔いが覚め自分達がこの後、どうなるのか想像がついてしまったのか、
「お前達、今から2時間走ってこい私はここに居る全部バレるぞ」
「「はい!行ってきます!」」
3人はかなり千鳥足で走り出す。
「はぁ、頭が痛い、」
サンディはそう言い額を抑える、ふと視線がこちらを向く。嫌な予感がする嫌だ!絶対にな!
「将希殿も走ります?」
「大丈夫です。」
将希はしれっと気配を消しその場から離れた、その事にサンディは気づいていたが正式な騎士団員ではないからと捕まえるのは諦めた。
「逃げ足だけはお速い。将希殿」
サンディはそう呟き走って行った3人の背中を見張りの為に追いかける。
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その後3人は虹色の物体を吐き出し。倒れていたが、サンディの気配を感じた瞬間そんな吐き気は消え去り、また走り出した。
その後そんな鬼ごっこがずっと続いていた。
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7時を過ぎ騎士団員達が全員起きてきた、ある3人組は、サンディの足元に地面にひれ伏していた。
「さて、言い訳は?」
サンディの冷酷な笑みが3人組をどん底に落とす。3人組は酔いが覚めてきたのか昨日、自分達が何にしていたのか。それでどうなったのかゆっくりと思い出していた。
思い出すたびに顔色が悪くなり今では紫を超え白くなっている。心なしが痩せ細ったように見える。
「3人って昨日どうしていたのかな?
確か、私の記憶だと酔いつぶれて寝ていたわね。私だってきついのにね」
そこまで言うとサンディは座り込み3人の頭を予備のレイピアでツンツン突く。
「3〜人どう、何か言う事はあるかな〜?何にも言ってくれないの?」
「「……・・、」」
「そう、口は固そうね、そうね、そう言えばカイブロスの背中を、そろそろ掃除しないといけない時期なのよね、王都に帰ったら掃除してもらいましょう、これ外して」
「これ」つまりカイブロスに乗っている家?と言っていいのかわからないが。それって取れるんだ。どうやるんだ気になる。それを聞いた3人の顔色は殺されなかった安堵からか少し良くなる。
「帰ったら、カイブロスの背中掃除してもらうからいつもはアレクが現場監督で死んでも問題ない囚人使って掃除させてるけどそこに混ぜとくか、」
サンディは立ち上がり、指示を出す。
「この3人はこのまま置いといて、今日は約一時間走りライフド大河を渡る、そのあとは湾岸都市リベリシュにノンストップで向かう。ライフド大河まで間はそこまで魔物との遭遇は気にしなくても問題ないと思うわ、その先は気をつけないと行けないけどそれはその時に、全員持ち場についてすぐ出るよ!アレク」
「はい、なんでしょうかサンディ様」
「全員乗り込んだら無音発煙弾を撃ちあげる、それで出して、」
「了解」
アレクは梯子を登り出発に備える。
「早く乗り込んで」
騎士団員達は一斉に動き出し3人組はそれに紛れるように乗り込む、それをサンディがじっと見ている事に3人は気づいていないこの場から逃げることに必死だ。
「3人、いい度胸ね」
3人を見ながら獲物を見つけた目で睨む。
撤収準備が済んだ後サンディは周囲の安全確認してから無音発煙弾を打ち上げる梯子を登る。
「野盗の生き残りの姿は無し、忘れた人員も居ない、問題無し、」
(ライフド大河までは魔物の数も野盗居ないと思うけど気にしておいた方がいいわね。)
先ほど撃ち上げた無音発煙弾を確認してアレクはカイブロスに前進の指示を出す。サンディはカイブロスが動き出してから見張り台に向かう。
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見張り台ではサンディと病み上がりの将希が何故か見張りをしている。その将希は身振り手振りで嫌だと言う雰囲気を醸し出すついでに声にも出ている。
「なんで俺が?」
「本当はあの三馬鹿にやらせようと思いましたが、なぜか忙しそうでしたので丁度暇を持て余しているだろうと言う将希殿をここに連れてきた次第です。」
話に出た三馬鹿はサンディの姿見るや否やや適当な奴らから仕事を奪い取りせっせと働いていた、
「あっ団長」
団長の気配に1番最初に気づいたニードルは如何にも今気づいた風をアピールし雑巾を水につけて絞る。
「ん?ブラットリーが仕事している珍しいな」
サンディはそう言いテーブルを指でなぞる。絞った雑巾でテーブルを拭きながら、
「またまた、俺は毎回ちゃんとやってますよ、団長もジョークがうまいですな、あはは」
そう言うブラットリーが内心早く帰ってくれと言う思いで一杯だしかしその心を一切見せず掃除を続ける。
「怪しいような気がするが仕事しているなら見逃そうか、後の2人はどこ行った?」
団長が左右をわざとらしく見ると後ろから威勢のいい声が聞こえる。
「後ろにいますぜ」
サンディが後ろを振り返るとカールとサムウェルはモップとモップ絞り機を持ち、歩いてくる。
「お前達も仕事しているのか」
団長のその目には驚きが滲む普段ならどこかでサボっているのがバレて団長の怒りが炸裂するのに。今日は自分から掃除をしているなんて雪でも降るのかしら、それとも何かしらの不幸の前兆なのかしらね
「ええ、床が汚れてきたのでやろうかと」
「昨日の野盗戦で汚れていたので拭いたほうが良いとサムウェルと話してやる事にしました。」
サムウェル、カール両名はそう言い訳する。しかし正確には床掃除をしようとしていた若手からモップと絞り機を奪い取り、如何にも「今来ました」感を存分に醸し出し団長の目を欺こうとしている。団長もいつもそんなことをしない3人がそんなことをしている時点で不自然さと違和感を覚えているがちゃんとやっている間は放置すると決めたみたいだ。
「ん〜怪しいな、怪しいよ。3人とも普段そんなことしないのに明らかに違和感を感じる、この違和感は何かしら、」
団長はゆっくりとした口調でわざとらしく喋り、圧をかける。その圧をかけられた3人はビクッと背中が一瞬震えたが、すぐに無理やり止めた
「ん〜背中が動いたな。何かあるのかな〜?」
サンディの動体視力の前にわずかなどよめきがわかるようだ。団長は何か思い出しように「あっ、そうだ」と手のひらを叩く。
「そうだ3人とも、みんなのために仕事やってんだろうな、だからこの建物全部の掃除してくれ、そろそろやろうと思っていたんだよ、時間がなくて出来なかったからなお願いね、多分1日あれば終わるでしょう、ワジル居る」
3人の表情はそこまで変わらないが、心なしか顔色が悪そうだ。
「はい、なんでしょうか団長。」
いつのまにかガムのように団長にへばりついていた、ワジルはすぐ返事する。
「この三馬鹿、監視しておいてちゃんと仕事しているか見といてね」
「かしこまりました団長監視します。」
ワジルは敬礼し、三馬鹿に発破をかける
「お前らちゃんとやれ。」
ワジルの声と共に3人は手つきを速める。
「ワジル後はお願いね、私は上で見張りしているから」
3人が真面目に仕事をしている事を不自然に感じたサンディだがこの三馬鹿はいつも通り逃げる為に仕事をしていると判断してワジルに見張りと言う名の監視を頼み立ち去りその足で将希を医務室で捕まえ見張り台まで引っ張ってきて今に至る。
「へぇーそんな事が絶対に嘘ですね」
サンディから何があったのか聞かされた将希だからその話は一方的な愚痴でしかなかった。なんで俺はサンディさんの愚痴を聞いてるんだ?
「将希殿もそう思うか。まぁ、仕事している分には問題なかろう」
「仕事しているほうが異常だ、っておかしいですね。」
「あいつらにとったらいつもの事だよ、」
サンディそう疲れたように吐き捨てる。大変だな騎士団長。なら俺はなんだよ団員でもないのにあれやれコレやれ金もらわないと。
「三馬鹿辞めさせれば?」
「それは無理ですな、あの三馬鹿はあれでも冒険者のランクでA近くはありますそれを野放しには出来ません、もしそうして野盗に流れたら大変ですので。私が、私が」
「そ、そうですか」
なんで今2回言った?ほんと大変そう。
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団長本当に大変そう。三馬鹿も変に力があるから野放しに出さないし首輪付けておかないと。




