マクリアス
「他のやつは絶対に前に行かないのか?」
「いえいえ。たまに酔っ払ったバカ兵士がコイツの口の前に行き。翌日下半身が落ちている事もたまにあります、酷い時には足も残らず丸呑みですけどね、」
「生きたまま?」
うわー生きたまま、まぁ、俺たちもね、白魚の踊り食いやらやってるし同じって言われて同じだな、そう考えると人間って酷い。
「はい、そうですよ。コイツには癖がありまして、その癖とはある程度大きくないと噛まないんですよ、人間サイズなら噛まないで、丸呑みですね、胃の中でバタバタ泳ぎながら溶かされるなんてな、私はカイブロスの胃の中など知りたくありませんが。」
なんだその癖、洒落になんねぇ、人間サイズなら丸呑みかよ、ん?待てよ
「え?食ったのこいつなの?」
「はいそうですよ、まぁ、年一でそんな馬鹿な事故?ですかねは起きますよ噛まれるのは主に新人とベテランですが」
「新人はわかるけどベテランは?」
まぁ、新人はわかるけどねベテランがよくわからないな、ベテランならわかってると思うけどね、
「答えは簡単です新人はまだどこが安全かわからないから噛まれるのです。ベテランは驕りですね。いつも噛まれない、俺は噛まれない、昨日も大丈夫だった。そう言ったことで噛まれます、まぁ、仕方ないですね 慣れ とは怖いものです、一瞬の油断で命を刈り取られることになってしまう。それは我々人間も魔物も同じですね、強いものほど自惚れやすくなってしまう、理由は簡単です周りに自分より強いものがいなくなるから、なのでその者の本質が見えなくなってしまう。」
アレクはそう、前を向きながら淡々と喋る、それは過去の仲間達が目の前に立っているかのように。
「私も仲間を大勢失いました、辞めていったもの。戦争。事故。行方不明。自殺。毎日誰かが消えていく。私の同期で残っているのはもう両手で数えられるほどです。若い時は1000近い仲間がいたのに時の流れ速いついこの間軍に入ったと思ったら、もう、追い出される時が迫っている。」
またそれも 花 ですね そう最後に呟く。
「さぁ、話が暗くなってしまいましたね、」
アレクは無理やり声を弾ませる。
「そう言えば、なんでアレクさんはカイブロスに乗ろうと思ったの?」
「何故、でしょうね、軍に入った当時は私も1歩兵として入隊したのですが、私に銃撃であったり剣の才能がなかったんですよ、それでその当時、新規に作られたカイブロス騎兵に送られまして、それ以来ここにいて、今では最古参の幹部として王族の皆様の運搬役も務めていますが。」
「じゃあ。今は天職ってこと?、」
「そうですね、天職ですね、もしかしたらここよりも良いところに行ったかも知れませんが。今、私はここに居る。しかし、サンディ様のわがままは大変ですね、最初の頃はやれ、紅茶だ、やれ、もっとゆっくり、外の景色が見えない、今では大人しくなりましたが、子供の時は大変でした。」
将希はふと、後ろを振り返るとコーヒーカップを3つ盆に持ったサンディと視線が合う。
「あー、タイミングバッチリだね、あはは」
「ふーんアレク私をそんなふうに感じてたの?」
「サンディ様、少し過去の話をしておりました。何にも恥ずかしいことはありませんぞ。」
アレクはそう言い訳するがそこまでの効果はないがサンディにとってはかなり痛いところを突かれている。
「ま、まぁまぁ、そのーーー」
適当に言葉を紡ごうとするがサンディが遮る。
「ちょっと黙ってください将希殿。」
「俺。重要人物なんだけど」
「陛下はどちらの言うことを聞くでしょう。新人の料理人と。長年支えてきた私。言いたいことがわかったならば静かに。」
は〜い。怖い。
「アレクも言うようになったわね、偉くなったわね。」
「あれ、知りませんでしたか?私はサンディ様のお目付け役も兼ねています。」
「昔聞いたわ、」
サンディはそう苦渋に満ちた顔を見せる。何か心当たりがあるようだ。
「昔、まだサンディ様が子供の頃あまりに世話役の苦労が絶えなかった為に私がお目付役として派遣されました。いまだにその陛下との契約は生きています。なのでサンディ様のお目付け役の私とわがまま。騎士団長どちらの言うことを信じるでしょうか?」
「どこかで聞いたことあるわね、その言い方、」
「私が昔。サンディ様にによく言っていたことです。サンディ様が嘘をつきまくるのでよくそうやって。手綱を握っていました。」
「へー。サンディさんの子供自体ね大変そう。」
「将希殿。このまま前に落としましょうか?」
冷たい刺す声が将希の背中を押すように刺す。
「お、俺用事思い出した、」
将希は立ちあがろうとするが立ち上がれない、足が震えて。
「おっと。どちらへ?」
首を少し傾げ、きょはーではなく、質問する。
「あー……・勘違いだった」
その後、2人はたっぷりと枯れ果てるまで搾り取られた。
最後にはアレクはこう言った。
「さ、サンディ様。これ以上はカイブロスの運転に支障が出ます、安全な運転ができません、」
サンディはこれに納得してアレクを解放、で残ったお一人は子猫のように首根っこを掴まれ、どこかへ連行され20分程度経ったのち、アレクの元へ帰ってきた。
●
カイブロスの背上デッキではサンディが全体に向けに放送できるマイクを握る。そしてその隣には臨時副団長が何故が立っている。
「総員に次ぐ!あと10分後我々はここパルクを発つ、その後の予定では、湾岸都市リベリシュへ向かう。道中、野宿することになるが文句は言わせん!本当の戦場では野宿すら出来んからな!、それでだ、わかってると思うが最終確認をしろ!見落としは許さん、特に食品、足回り、武器などは念入りに!10分猶予をやる再度点検しとけ!」
『『はい!』』
カイブロスの様々な場所から団員達の返事が聞こえる。
「お見事です団長、」
「チッ、」
団長傍に何故が立つ臨時副団長、マリアスがそう団長を持ち上げる。
「マリアス、何故、お前はここにいる?お前は確か、カイブロスの餌になったのでないか?」
団長のブラックジョークと言えないジョークが辛辣に飛ぶ。
「団長殿も口が酷い、わざわざ自分からカイブロスに食べられに行きたい馬鹿など居ませんよ、あはは」
「居ないんだな、なら落とされるか?」
「それは強制ですか?」
「んー、ある種強制だな、私がお前を1発で〆て、カイブロスの口に落とせば証拠は残らない、どうだ完全犯罪の成立だ、酔って自分から落ちたことにすれば誰も疑わない。」
「実際にやった事があると言った発言ですね、団長」
その問いに団長は不敵に笑うのみであった。
「そもそもの話私の名前はマリアスではありません。マクリアスです。」
「そ。そうか。悪いなマリアス、いやマクハリだっね?」
「私の名誉はどこ言ったのでしょう」
「そんな事置いといて。君仕事は?」
「そんな事、ですか、仕事に戻ります。」
「いくら私に媚び売っても給料は増えないからな。」
立ち去るマクリアスの背中にそう冷たい言葉を投げかける。
「どうせ上がる見込みもないのでしょう団長」
「よくわかっているじゃないか代わりに酒なら支給できるけどな」
マクリアスは振り返らずに梯子を降りていき、足を踏み外す。
「意地にならなくてもいいと思うが。まぁ。男には訳のわからぬ意地というものがあるのか、」
「大丈夫か?マリアス?」
サンディは落下したマクリアスを梯子の上から見下ろす。そして弱々しい声が耳に入る。
「……私の名前はマクリアスです」
「悪かったなマリアス!」
最後までマクリアスの尊厳は損なわれたままであった。
「私の!名前はマクリアス!です、団長!いい加減覚えてください!」
そうカイブロス中に響いた。
「マクリアス?誰だそれ、」
将希はそんなことを呟いた。
●
走ってきたのがサンディの部下の1人が息を切らせながら走ってくる、
「はぁ、はぁ、団長!確認終わりました!いつでも行けます。」
デッキの下の梯子の前ではサンディの部下がサンディを見上げて叫ぶ。
「30秒。遅れた。」
「こんなやりとりをしている間にも遅れていますが?」
その部下は梯子を登って報告しにこようとする。
サンディの歯軋りの音が、ここまで聞こえてくるほどサンディはイラついてる。
「お前達がちゃんとすればどうにか、なったと思うけどね、」
「その、マクリアスが原因不明の負傷を負ったせいで、ズレが出たようですね、」
「そう、原因不明ね、まぁ、お大事にねマクリアス、それで、シックルは早く持ち場に帰って出発できない。」
団長はマクリアスの負傷に何か心当たりがあるのかそう言葉を濁す。実際マクリアスはハシゴから足を踏み外して落ちただけ。サンディは一切関わってはいない、間接的には関係あるが。
「了解!」
梯子を上がり切った部下はそのまま逆再生で梯子を降りていく。
「殺してやる!」
「剣を抜く前にその首が宙を舞うわよ、」
団長はそう健やかな笑みを浮かべると部下は恐れをなして、退散する。
「残念、たまには、ってそんなことないわねウフフ、」
そう誰に対してでもなく1人呟く。
「さて、アレクの所に行かないとね。それに将希殿をもう少し絞らないと。」
サンディは「その前に」と呟き。給仕係に紅茶をもってこいと強要する。
「かしこまりました。」
丸呑み。それって効率ってかどうなのかな?
団長って相当顰蹙を買ってるのかな。そうじゃなければ殺してやるなんて言われないはず・・・多分。




