15話 結末A
翌日、サンディの宣言通り、王都に帰還する事になったかくまちゃんは見かけなかった。
「食べてくれたかな、くまちゃん。」
朝、クマリアがカイブロスの駐車場まで朝食とお昼ご飯を持ってきてくれた。
「将希様、これ朝食と、お昼ですお食べください、そ、その、クッキー、美味しかったです。」
クマリアは自分で持っているカゴを将希に押し付けるように渡す。
「ありがとう。美味しかったか、」
脳内では少しつ俯いたくまちゃんが美味しかったと言った瞬間がループ再生されている。
「その、お時間ありますか?」
「ん?まだあるけどどうしたの?」
「将希様、先日の話の続きです」
「わかった、」
将希は何も言わずに了承する。クマリアが何を話すかわかってる。
「向こうの林で話したいんですが良いですか」
クマリアは将希の返答を聞かず歩き出す。
その小さな背中を将希は追いかける。
「これは全て私が探した結果です、なので間違っていることもあります」
クマリアはそう前置きをし、ゆっくりと話し出す、、
「将希様の思っている通り、私にも 『異世界の旅人』 に近いことが起こりました。しかし、私の場合は向こうで死んでからこちらに来たので一概には異世界の旅人とは言えませんが、記憶を持って転生したと言うところでしょう」
クマリアはそう告白する。
待てよ、この世界には俺以外も俺と同じようなのが存在した。じゃあ、ここはどこなんだ?
将希はクマリアの肩を掴み。すぐに離す。
「悪い、触って、でクマリアの過去を聞く気はない、だが一つ答えてくれ。この世界には俺以外にも異世界の旅人が居るんだな。」
「はい。私が知っている範囲でも500名以上います。」
「そんなに!そんなに居るの?この世界に?」
「はい、これは確認されているだけで、ですけど多くの異世界の旅人は異世界の旅人だと明言する事はありません、」
「ん?なんで公表しても被害はないように見えるけど」
「その原因は貴族です、異世界の旅人は時に強大な力を得ます、剣術、知識、筋力、判断力その他様々、その為ら異世界の旅人が居たら貴族がすぐに群がり、自分のものにしようとしています、そして自分の欲しい能力を持っていなかったら、犯行を消します。……それを貴族は裏で「異世界人狩り」と呼びます……」
クマリアはそう語り、少し間を開ける。
消す、かつまり殺されると、異世界人狩り
本当に 狩りなんだな。
「貴族は表立って異世界の旅人を探していると言えないので市民にまでは広がりませんが、噂話などから貴族が手を出して、行方不明になる事件が時折あります。」
「その異世界の旅人は今どこに?」
「全国でギルドの職員として保護したり、冒険者としてクエストをしている者、田舎で農家をやっている者もいます。漁師、土木作業員など、さまざまな仕事をして身分を偽っています。
表だって公表する人はいないんです。公表すればそれだけの危険が伴います。漫画やアニメとは違うんです、死は死、生き返ることも無い、」
そう、クマリアは語気を強める。やっぱりここは異世界、チートも何も無い。そんな状態で公表してもすぐに殺されるか貴族の犬になるか、かそんなんじゃ誰も言わないはずだよ。俺みたいなのを除いて、俺はなんでか知らないけどいつの間にかあの女王の前に居た。
「そうなのか、じゃあ、2世3世も居るわけか」
「居ますがその多くが先ほど言いました通り記憶を持って転生した、ですので完全異世界の旅人の血を引き継いでいる者となれば少数です、たとえ記憶を持ってようと、そのことを自分の家族に言ったものは少ないです。将希みたいな異世界からの旅人も年に1人いるか居ない、その程度です」
「年に1人は俺みたいのが来るんだなこの世界には。」
「ええ。居ますが、日本人だけではありません。アメリカ人、イギリス人、中国人、様々でした、一応この世界の共通言語のおかげで聞き取りに支障はありませんでしたが」
「私が知っていることはまだまだありますけどもう出発ですね、あとはまたいつか会えた時にお話しします。なので今回はこれで」
「…………クマリア、」
「何も言わないでください」
クマリアはそう将希の唇に人差し指をそっと当てる。
笑いながらも涙を流す。
●
将希はクマリアからの告白を聞き、王城から少し離れたカイブロス専用の駐車場留めてあるカイブロスを眺める。その隣にはクマリアがそっと側に立つ、何か話しているようだ。それを上からサンディがニコニコ笑いながら眺める。
「将希殿!もう出ますよ早くお乗りください。置いて行かれたら自力で帰る事になります、一応馬車で4日かかりますが帰れますので。」
サンディがカイブロスの上から声を張る。
「わかった!今行く!だから置いていくな!」
手を上げそれに答える。サンディはそれに答えず。姿が見えなくなる。アレクにでも指示を出しに行ったのであろう。
「私は私のルートで異世界の旅人について調べます」
「あぁ、頼む、なんかわかったら連絡くれ」
将希はカイブロスにかけられた梯子に手を掛け、梯子を登る。
私、いや。俺なんだけどね、これもこれでアリかもな、フン、見た目美人だし。まぁ、このままで良いか面倒だし、さて、俺は俺のやることをしますか。あっさり騙されてやがるの、もう少し引き伸ばしてあげましょうね。あははは。あはは。
クマリアは将希を見ることなく馬車に乗り込む。
梯子を登り切った将希を待っていたのはにっこりと笑うサンディであった。
「恋仲ですな、」
「うるさい」
「フラれたと、」
「そんな関係じゃない」
「そうですか、まぁ、良いでしょう私には関係ないですし、くまちゃん優しいでしょ、あれでよく騙される人がいるんです。さて次の目的地は湾岸都市リベルシュです」
「待て、王都に帰るんじゃ無いのか?」
将希はすっかり王都に帰るつもりでいたが、サンディにはそんなつもりは無いようだり
「くまちゃんから聞いたでしょここパルクは魚の鮮度が悪くなるから届かないって、。王都なら魚は少しなら入るからね、魚の知識も必要だと思いましたので湾岸都市リベルシュに向かいます、このカイブロスでも2日はかかりますので野宿ですね、カイブロスと」
「そんな〜」
まじかよ、2日。野宿?、カイブロスと?俺死ぬのかな
「将希殿、もう少し時間かかるみたいですなので私は部下たちに発破をかけに行きます。将希殿はテラスでお待ちください、そのあとは指定席に案内します。」
「あぁ、わかった。」
将希がテラスに向かったのを確認してサンディは梯子を降り地上に降りる。
(友人を手に殺けないといけない時が来てしまった。わかっていたけれど。この日まで葛藤があった。殺したくなかった、私は全部知ってるつもりだった。だけど知らないこともあったのね。)
地上に降りると、待ち構えていた部下から弓と矢を受け取り、矢に油と火をつけると矢の先端は燃えて煙が少し上がる。
(くまちゃん、また、いつか会える日をその時は、もっとちゃんとした性格をしてくれればいいな)
サンディの瞳には朝日に照らされ、光る物が浮かぶ。
弓を「キリキリ」音が鳴るまで引いて一台の馬車に狙いを定め、躊躇なく矢を離す。
(またも、いつかも、ないかもね、くまちゃん。)
サンディは矢の行方を見る事なく梯子を登る。
異世界からの旅人、思ったより人数が多いけどありえない事はない観測出来ないんだから異世界がないと言い切ることは不可能。勝手な理論。
異世界チート、貴族の餌になりそう
ノーコメント




