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将希の異世界日誌  作者: 雄太
パルク編
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10話 注がれる油


「次はお肉ですね、お肉はちゃんと見極めないと当たります。特に市場産が当たるのことが多いので今日は偵察だけですね、王城には専属の冒険者が持って来るのでそれで賄ってます。」


 ほんのりと肉の焦げた香りが漂う。


「美味そうだな」

「焼いてある肉であれば当たることは少ないですよ、私が払いますから」


「え、でも。」


 将希は一銭も持っていないのに断ろうとする。それはくまちゃんが払ってくれるという、タチの悪いそして、よくわからない。確信に基づいて。


「そうですか。わかりました」


 クマリアはそれを信じて


「悪かった今お金持ってないごめんなさい」


「だと思いました、」


「串焼き2本」

「400マキシアだ」


 クマリアの二つ目の財布から硬貨が4枚飛び立つ。


「丁度だ、」


「向こうで食べましょう」


 クマリアは広場の少し陰になってる方を指差す。 


「わかった行くか、」




「どうぞ、将希」


 先ほど店主からもらった串焼きを将希の口元に持っていく。


「えっ?」


 まぁいいかっ、こんな機会、今後絶対に無い言い切れる。そう覚悟を決めた?将希は串焼きにかぶりつく。傍から見るとまるでカップルのようだ。


「美味しそうですね、」


 クマリアは将希の食べた、残りの半分の串焼きをその小さな口で少し食べる。


「食べます?」


 将希は無言で頷き、差し出された最後一口を口に入れる。


「美味いな、」

「もう一本ありますよ、」


 それはクマリアの分のクマリアが食べた残りをクマリアは差し出す。


「ん、いいの?」


 クマリアは頷くと、串焼きを串から口で外して将希の口元に持ってく。


 これが世に言うポッキーゲームか、なんていい気分。死んでもいいかも〜


 ●


 将希は心に大ダメージを受けている。

 出会って2日のクマ耳女の子とポッキーゲームして、キスして、デートして、これ以上に最高な時はないと言えるほどに、心は満ち足りる。今現在も将希はかなり浮かれている。つま先が一瞬だが、地面から浮くのが見える。そのぐらい浮かれている。その手は繋がれてがっちりと掴んでいる。


「次はお肉ですね、また一から説明しないとですね。将希、」


「そうだな説明してくれ、」


 目の前には多種多様な動物の肉と頭部が置かれている。


「では左側から、これはラムトスと言います魔物とは違い家畜化されています、お肉は柔らかい内側の部位と硬い皮の部位が混在しています、硬い皮は剣でも切れることはなく。討伐する時は首を切断する他ありません。しかしその下のお肉は脂が乗って絶品です揚げてもよし。焼いてもよし。何にでもあいます」


 その頭部は羊のような見た目だから肉に付いた皮は硬く石のような感触がある、文字通り釘でも打てそうなぐらいに硬い。これ一つが武器になりそうな感じがする。


「ふ〜ん美味そうだな。ならあれか皮が切れないなら身の方から切るのか」


「はいそうです。切るのも大変なんですけど、では次ですねその隣はアマスロです。このアマロス珍しく背中のお肉に毒を持っていて。食べれば死にます、しかし腹側にはそう言った毒はなく。少し湯で引いてあげると無駄な脂が取れさっぱりといただけます。」


「そう言うのもありか。美味そうだな、」


「今日はこのぐらいで帰りましょう、お昼の用意をしなければいけませんし、まぁ、私が居なくても部下の人たちがやってくれますけど」


「そんなことなって、クマリアが居ないと始まらないよ」


 2人は横並びと言っても荷車の棒があるから横並びでもないが、横並びで街道を歩く、道中冒険者であったり衛兵とたまにすれ違う程度。小型の魔物が野菜を狙うこともあったがクマリアの殺気で防いでいた。

 荷車には野菜が積まれ、タイヤの回転する音が重くなる。


「将希の世界ってどんな感じだったんですか?」


「ん?そうだな、魔物っていうのはいなかったな。動物はいたけど。」


 まぁ、実際にはゲームやら映画、スマホ、漫画、車、電車、なんでもあったけど。それを知らないクマリアに説明するのは厳しか、


「それって魔物の被害がないってことですか?」


 日差しがクマリアの目元に反射する、それを手のひらで遮る。


「ないことはない、普通に人間が襲われることもあった、冒険者とは違うけれど、動物を狩る人は居たしね、」


「?将希の世界には人間しかいないんですか?私みたいな亜人と呼ばれる種族とか?」


 クマリアは将希が言った『人間』と言う言葉に反応する。


「居なかったな、まぁ、正確に言うならば、空想の世界には居たけど、そう言うエルフとかね、もちろん亜人とかも物語の世界には居た、現実世界には居なかったけど。」


「私たちの世界の当たり前が将希様の世界の当たり前とは違う、将希様の隠していたことがあります、」


「私は完全なこの世界の住人ではありません、私は10年前に影から落ちた時に記憶を取り戻したと言って良いのでしょうか?それまでクマリアとして別の人が居たのに

 私……わた、私ひどいことを」


 今の俺にはそれに答えられる答えを持ってない、自分は取り戻したけど、自分のせいで誰かの人生を終わらせた、


「将希、様」


 将希はクマリアを抱き込む。


「何があったか。それを俺が聞く権利はない、だから俺ができることはこうして慰める事だけだ。」


 腕の力を強める。


 将希の一言でクマリアの感情は色んな感情に押しつぶされ、声にならない涙を流す。


 ●


 その後、どうにか王城までクマリアを運び込んだがクマリアはすぐに自室に篭り、将希の問いかけにも答えなかった。その将希はクマリアの自室に押し入ろうとしたが流石に理性が止めた。意気消沈のなか将希はゆっくりと厨房に向かうとそこにはサンディが居座る。


「将希殿デートはお楽しみでしたか?」

「水、刺さないでくれ」


 意気消沈の将希はその足を止めサンディとの口喧嘩に付き合う。

 その目は疲れているか少しやつれている。


「私が差たのは水ではなく油ですが?」

「怖えーな。油差すか?普通、そんなやばいもん」


「しかし将希殿の心の火は消えかけているように見えます、なので水ではなく油を差さなければ。」


「あぁ、そうだ、あと一つだけ。」


 手のひらを叩き、右手の人差し指を立てる。


「あとひとつ、伝えなければならないことがありました、残念ですが将希殿、明日朝にはここを発ちます、今日中に荷物の用意とクマちゃんから別れるキスを貰ってきたらどうですか?あつ〜いのを?」


「そうだな、貰ってくるか、って言うと思うか」


 そう言い残し将希は厨房の奥に向かう。


「後悔しますよ、」


 サンディの声が上下左右から将希の耳に響く。後ろ髪を引かれるように立ち去る。



 俺が出来ること言えば、クマリアの舌を俺色に染めることだろうな、


「本当は別れのキスはもう貰ってたの?将希殿はまさか、ここに来て逃げたとでも言わないですよね、ま さ か ね、それとも結末まで行き着いたの?」



 後ろを浮いてきたサンディのおちょくりがキッチンに響く。


「ノーコメントです」


「ん?そのノーコメントは、熱いグブッ」


 茶化そうとしたサンディの口に手を当て黙らせる。


 なんで俺がそんなこと言わないといけなんだよ。


 将希が考えてるいる隙に。サンディは手のひらから逃れると少し離れた1人頷く。そして1人ブツブツ喋り出す。


「ほうほう。そうですか。そうですか、まさか、そんなことがありましたか、ほおほお、熱いキスをして振られたと、私にとってはドロドロの方が美味し、ウフンウフン、そんな事もありますけど今回は残念ながら置いといて、将希殿はもっと時間をかけて後悔しそうな気配がありましたが私の思い違いでしたかね、私、将希殿は奥手で確定しないと絶対に動かないと、感じていましたが、そして、時すでに遅し状態で前にも後ろにもいけなくて諦める、勝手にそう思ってました。

 将希殿は場の雰囲気に流され黒歴史を作る方でしたか。失敬。貶しているわけではありません?あれ将希殿?どちらに

 …………」


 サンディは左右を見て将希を探す小芝居をするが、

 その将希はサンディが「熱いキスが」と言い始めた時にはすでにサンディの前から姿を消して既に食品庫を物色していた。


「まぁ、結局は、くまちゃんがどう受け止めるかだけどね、それは両方かな、さぁ、騎士団の奴らも叩き起こして訓練をしないと、この2日で鈍ってるから死ぬまでやるか、丁度回復のスキル持ちもいるしね、死んでも大丈夫。多分?まぁ、いいや」


 サンディは左右を見て将希を探す小芝居をするが、

 そのころ将希はサンディが「熱いキスが」と言い始めた時には嫌気が差しすでにサンディの前から姿を消して食品庫を物色していた。


「なんで俺がそんなこと言われないといけないんだよ。そうだよ自分が恋バナがないから嫉妬してるんだな絶対にそうだ」


 そんな愚痴をずっとさっきから言っている


(聞こえてますよ、将希殿)


 サンディの声の幻聴が聞こえる。


「ギャ!」


「い。居ないじゃんなんだよ、怖かった、」


 急いで振り向くがサンディの影形はなくあるのはポタポタと水が垂れる蛇口だけ。


「聞こえたますよ、将希殿」


「なんだ。また幻聴か、」


 将希はそう決めつけ見ようともしない。

 これは幻聴、これは幻聴、これは幻聴。


「将希殿?」


 無視だ無視。幻聴。


「ダメですね取り込み中みたい、後で〆ますか、丁度回復のスキル持ちが居ますしね。うふふ、楽しくなりそう、」


 サンディはそうわざと大きな声で叫びながら立ち去る


 そうだ。どうせこれも幻聴だ、だ、だ


 鏡に映るサンディの後ろ姿、血の気が引く。


 やばい、おれ死ぬかも。


 ●



 将希はサンディに半殺しにされることが確定し、吹っ切れたのか意気消沈のクマリアへの愛のこもったプレゼントを贈るつもりである。


「クマちゃん、何が好きなのかな?やっぱはちみつ?それはダメか、確かサンディが確かこう言ってたな」


一言


くまちゃん、可愛いですね

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