一つの謎だけがある本の「?」
謎が謎を呼ぶのは。
謎が孤独を嫌がるからだ。
その謎は、特に一人が嫌だった。
だから「?」の姿になった「謎」は、本の外に出て冒険をすることにした。
世界には、様々な事がある。
謎や、謎でない物。すぐわからないものや、すぐわかるもの。
それ以外もたくさん。
本の外に出た「?」は新鮮な気持ちを抱いていた。
白でも黒でもない灰色の世界。
物事をはっきりと決めなくても良い世界がそこにあった。
今まで謎が住んでいたミステリーの世界は、何でもはっきりしていた。
絶対に正解があった。
正解がある事が本の目的だったから、なければ成り立たなかったのだ。
けれど、外の世界には「正解はなくてもいい」のだと知った。
誰かにとっては、真実は二つある。
誰かにとっては、嘘の方が大事。
誰かにとっては、あいまいな方が都合がいい。
それは必ず最後までに全てがひもとかれる、本の世界とは違うものすぎた。
だから「?」は少し疲れてしまった。
大冒険を終えた「?」は、自分の世界へと帰っていく。
謎が謎を呼ぶ世界でありながら、謎は謎にしかなれない、一人だけの世界に。