どっちも嫌です
異世界〔恋愛〕は初投稿になりますので、お手柔らかにお願いいたします。
「このモーリス・マクブライドは、この場でフィオレン・ローラン嬢との婚約を破棄させていただく!」
煌びやかなパーティ会場で、声高らかに婚約破棄を宣言したのは私の婚約者であるモーリス第二王子。いや、元婚約者か。
「モーリス様、何故でしょう?」
「貴様、魔王と内通したな?」
……は?
「ライラ嬢からの密告があったのだ。この裏切り者め!」
全くの嘘である。そもそも、名前を出しちゃったら密告じゃないと思うんだけど……。
馬鹿すぎる。私はこんな男のために花嫁修業までさせられたのかと思うと腹が立つ。
そんな話があるなら私に聞いてこないこと自体おかしい。大方ライラから唆されたのだろう。
「ふん、当然ね」
ライラが勝ち誇った目をこちらに向けてくる。私は彼女と敵対したことなど一度もない。
別に王子との婚約だって私が決めたものではなく、親同士が勝手決めたものだ。
うんざりだ。貴族同士の醜い争いなんて。いっそのこと平民にでもなってしまおう。
そんなことを考えた時だった――。
「た、大変です! 魔王が攻めて参りました! ぐぼぉあ!」
急に兵士が来たと思ったら、いきなり体が真っ二つに割れた。
そして入り口から、二人の魔族が姿を現した。
「ハーハッハッハッ! オレは魔王。ここにオレの妻となるべき女がいると聞いてやってきた」
「ひどいよ兄さん。ハニーは僕にくれるって約束だろ?」
どうやら二人は兄弟らしい。
「人間ども! このオレに協力した女は誰であるか答えよ!」
魔王がそう言うと、会場の皆がある方向を指差した。
えっ? 私?
「その女か。なるほど、なかなかの麗人である。よし、あとは不要だ。皆殺しにするぞ、弟よ」
「うん、わかったよ。兄さん」
そこから魔王兄弟の殺戮が始まった。
「お待ちください! 魔王様に協力したのは私です!」
「うるさい、死ね」
「ぎゃ!」
ライラが必死に命乞いするも、殺されてしまった。私の元婚約者様も同様だ。
「ふぅ、一通り片付いたか。さぁ、オレの妻よ! 一緒に魔王城に行こうではないか!」
「兄さん! だからハニーは僕のだって言ってるじゃないか!」
「仕方ないな。我が妻よ、どちらがいいか選ぶがいい。まぁオレ以外は考えられんがな」
「ハニー、もちろん僕を選んでくれるよね?」
人間の私から見ても、兄弟二人ともかなり美形だとは思う。でも、私は――。
「どっちも嫌です」
最後まで読んで頂きありがとうございました。