視えない犬1
「んで?おめさん1人だけなんが?」
「そうだ。不満か?」
「んだども。それなりに払う準備はあるのに、このままだど羊は全滅だべ。」
確かに、羊は残り30頭。
以前は50頭居たのだという。
「このままだど、ジルダンの酒場に卸す分も来月からは無理だべ。」
「ジルダンの!?何っ!?それは困るっ!!」
俺がいつも酒場で食ってるステーキの肉はここの牧場で育った羊の肉だったのだ。
「おめさん、ジルダンとこの常連だったんだが。こりゃなんと。」
「うぬぅ!獣の癖に俺のステーキを、、、」
ステーキ泥棒め、、、
なんとしてでも捕まえる!!
「今日は泊まり確定だ。オヤジさん、悪いが厄介になる。」
「あ、あぁ、かまわねぇべ、、、」
女冒険者は奴が姿を現さないと言っていた。
つまり何処かで何らかの方法で監視しているって事だ。
そして隙をついて羊を襲う。
足跡も残さずに。
「やられた家畜の遺体はどうなっていた?」
「野犬に襲われた様になっとったんだ。じゃがおかしいんだべ。足跡がないべ。」
夕方まで時間を潰すと俺達の捜査が始まった。
爺が俺に話しかけてきた。
(むむっ!!獣臭いのぅ!ゼーレ坊。)
(当たり前だろ?牧場なんだから。)
(違うわい!こりゃ犬っコロの匂いじゃ!)
(犬?ビーズはまだいないぞ?)
(ビーズはきちんと水浴びしとるから臭くないわ!ほれ、そこに霊痕があるじゃろ?)
よく見るとそこには犬の足跡の様なものがある。
「あぁ、なんだ。犯人は犬か狼か?」
(何寝ぼけておるかゼーレ坊。羊達の死んだ魂が見当たらないじゃろ?つまり、幽鬼の仕業じゃ。死霊魔術士の出番じゃな。)
(なるほど、バーゲストか。。。)
バーゲストは犬型の幽鬼で、よく墓地の近くで人間を襲う。
(よほどここの羊は美味いらしいのう。具現化して頭部と前脚の爪だけを器用に具現化させて食事をしとった様だな。)
(やつもステーキ目当てか、だが少々食い過ぎたようだな。大人しく消滅してもらおうか。)
爺は現役の冒険者時代の知識を俺に教えた。
(今回のバーゲストは狡猾にもゼーレ坊の匂いを嗅ぎつけて慎重になっておる。直ぐにでも水魔法で身体をずぶ濡れにして、香草を脇や首周りに擦り付け口にも放るんじゃ。どちらかというと狩人の技じゃがな。)
俺はバシャバシャと水を浴びて手頃な野草を身体に擦り付けた。
革鎧の手入れがあとあと面倒だぞ、これは。
うっ!口ん中が青臭い、、、
(よし。あとは囮じゃな。あの辺に埋められた羊の死骸があるのう。下級精霊でも死霊使役して羊の群れに紛れ込ませるんじゃ。)
俺が小さな墓に手を添えて魔力を込めると土塊から羊のフレッシュゴーレムが現れた。
「めっへっへーっ!」
(変な鳴き声だな。)
(精霊が羊のフリしてふざけとるんじゃ。大目に見るしかあるまい。)
こうして俺は準備を整えた。




