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検問所と聖遺物

「通って良し!!次!」


ここは検問所。


良く響く声で衛兵が通行人を通した。


傍に控える文官達が、せっせと通行証の発行と徴税した貨幣の過不足を確認していた。


そして後ろには押収した品物が山積みになっている。


俺たちが住むミューズリース王国の王都において違法と判断された物、重課税対象となり事実上持ち込めない品物、所持金不足で通行税の代わりに納められた物などだ。


俺達は一目で傭兵と分かる格好をしている。


黒塗りの鎧兜(傭兵ギルドのレンタル品)、動きやすい革のズボンに、黒塗りの盾(傭兵ギルドのレンタル品)、そして地味ながら頑丈な片手剣(傭兵ギルドのレンタル品)を腰に下げている。


身軽なのはビーズだけだ。


そして押収品の徴収は早くもビーズの方が上手である。


「バウ!」


「クソあちぃ、、、」


普段は軽鎧で仕事しているマルチェロはうんざりしたように兜の中で呻き声をあげた。


「文句言うな。お土産はビーズが稼いでくれてる。突っ立ってる衛兵にはバレない様に袖の下もちゃんと貰ってるじゃないか。」


俺は普段から重装備に慣れているから平気だが、やはりこの暑さは厳しいものがある。


「さぁ、もうちょっとで昼飯時だから、交代の時間になるぞ。ん?あれは?」


俺は向かってくる馬車から妙な違和感を感じた。


「そこの馬車、止まれ。」


「おいおいゼッド、それ、教会の紋章じゃねぇか。やめとけよ。」


「関係ない。仕事だからな。」


俺が馬車の中を検めようとすると衛兵がすっ飛んできた。


「お、おい!何事だ!!??教会の馬車を開けるつもりなのか!?」


「黙れ。」


俺に威圧されると衛兵は黙り込んだ。


マルチェロはやれやれと首を振っている。


「あらあら、何の御用でしょうか?教会の関係者は徴税されないのでは??」


馬車の窓から顔を出した神職のシスターらしき困り顔の女性が言った。


「徴税ではない。検査だ。中に危険物が紛れ込んでいる可能性がある。教会を狙っているかも分からんからな。扉を開けろ。」


馬車の中では若い女性2人と少女1人が座っていた。


俺は少女が持っている箱に何かを感じた。


「君、その箱をこの場で開けなさい。今すぐに。」


「だっ!駄目ですっ!」


シスターや少女達は頑なに箱を開けようとしない。


「衛兵ーッ!増援を呼べーッ!」


程なくしてわらわらと衛兵が集まってきて馬車を取り囲んだ。


「な、なんてことなの、、、、」


シスター達は崩れ落ちてさめざめと泣き始めた。


少女は箱にしがみついて敵意を剥き出しにしている。


「これは渡せない!!」


「ええい!通行人が詰まっているんだ!さっさと開けろ!」


俺は彼女から箱をあっさりと奪い、蓋を開けた。


中身は人の手だった。


カラカラに干からびている。


「ん?なんだ?」


周りの風景は時が止まったかの様に灰色で、俺以外は皆動かない。


「ふむ。なかなか面白い体質だな。」


いつの間に後ろに居た?


背後を振り向くとフードを被った謎の人物が立っていた。


顔は見えない。


「ん?この匂いは、懐かしいな。アンタ、アイツを解放してくれた少年か?嬉しいねぇ。」


まさか!?


「お前、死霊じゃないな。何者だ。なぜあの時の事を知っている?」


(ゼーレ坊、あやつに楯突くのはやめとくのじゃ。)


(どういう事だ爺?)


「へぇ?やっぱり君は死霊魔術士(ネクロマンサー)なんだね。これは奇遇だね。まさに奇跡かな。そこの爺さんも死んでる割には元気だね。」


「見えるのか?」


「そうだね。」


(ゼーレ坊、あやつは亜神じゃ。しかもかなり強力な。)


「物知りなお爺さんだね。おかげでゼーレ君は命拾いしたよ。本当はその右手の持ち主に腹いせで仕返しがてら罰を与えようかと思ったけど、あいつ魂が昇天しちゃってるし、久々に起きたら君みたいな逸材がいきなり現れて機嫌が良いからやめとく。加護を与えるから好きにすると良いよ。じゃあね。」


「ま、待て!!」


時は再び動き出した。


呆然とする少女とシスターはこの世の終わりみたいにこちらを見ている。


「聖遺物の、外れかけのふ、封印が解けたのに、邪神の呪いが霧散した。しかも、貴方から巨大な力を感じる。」


俺は少女の口から出た発言を無視して威厳を保ちながら言った。


「良く聞け!防疫上、これら遺体やその一部を検問所に通す際は、教会といえども事前の申請書無しはありえない!幸い処理は適切であり、あとはそこで申請書を書いてもらうぞ!次は無い!いいな!」


衛兵も遺体の一部が持ち込まれたと聞くや否や、ミューズリース王国の教会本部に問い詰めた。


しかし教会は知らぬ存ぜぬの態度を貫いた。


釈然としない衛兵隊や文官、傭兵隊は教会の馬車が通った後もモヤモヤとした感情を抱いていた。


先程の右手はもはやただの干からびたミイラに過ぎない。


俺とマルチェロ、ビーズは昼飯を食い、午後の仕事を終えると、傭兵ギルドでアスゲルト中隊長に報告し、そのまま酒場に向かった。


「「乾杯!!」」


「うん!検問所でビーズが頑張ってくれたおかげで、酒代と家賃の滞納は避けられたな!」


「まさしくそうだな!ステーキ2つ追加頼む!」


俺たちはステーキを食べながら教会の馬車について語りあった。


「結局あの右手はなんだったんだ?」


「聖遺物、とか言ってたな。」


「普通はもっと護衛も付くし申請書も出すだろ。」


真相を知ってはいたが、マルチェロに全て話す訳にもいかない。


この世界では誰しもがスキルを、持っているし、鑑定すればステータスも見える。


冒険者ギルドではステータスも見れる為、内心、俺は邪神の加護なんて面倒だと思っていた。


その後、俺は知る事になる。


奴の名前は俺にしか見えない事を。


〜〜〜〜〜〜


○○○○○(イル・セパラティオ)の加護】

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