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取り調べ

目覚めた死者の書による暴走のせいで、俺は牢屋に入れられた。


本が喋ったり、亜神の関与を仄めかしたり、死んだ連隊長達が突然に命を取り戻したり、訳のわからない事ばかりだ。


「どうやって濡れ衣を晴らすか、だな。」


(古文書盗賊団の一味じゃと思われたんじゃろうなぁ?)


牢屋の天井で逆さになって胡座をかく爺が言った。


(フェスタにも疑われているが、自分自身が状況を理解出来ていない。『アーク』って何だ?また『死者と会話する者』か。。。)


(ふむ。。。)


爺はしばらく考え込むと、俺の為に言い訳を編み出した様だ。


(こないだの邪鬼スマムキとの闘いがあったじゃろ?精霊神との繋がりを得て邪なる者との対峙が可能になったと言えば良いんじゃ!)

(ショカ・ジンなら見破るだろうが、、、)

(ゼーレ坊の功績を無視したりはせんよ。ほれ、迎えじゃ。)


「出ろ!」


見張りの兵が牢屋を開けて、手枷を付けた俺を別室へと案内した。


取調室には傭兵隊長ショカ・ジンと、マギキャ・エル・クラシコ駐在の聖堂騎士、領主『鉄拳のフェスタ』から指名された書記官、そして以前、『黒騎士の追悼』式典の際に、カミロの墓前で出会ったロゼッタという少女も居た。


取り調べは厳ついメイスを持った聖堂騎士が行うようだ。


ショカ・ジンは武器を持っていない。


ロゼッタは神官の聖杖を携えていた。


「私は異端審問の権限を有する聖堂騎士、キサラギ・ブランコ・トレホ。許可なく喋るなよ。これはミューズリース王国法に則って行われる、正式な取り調べだ。書記官、準備を。」


「は!」


「まずは、、、」

「神々の威光を世に知らしめよ。『浄化』」


ロゼッタの聖杖から暖かい光が放たれ、身体を包んだ。


(ほぇぇぇ!暖かく優しいのぅ!)

(爺!遂に昇天するのか!?今までありがとう!)


キラキラと光る空気の中、カッと目を見開いた爺がプリプリ怒り出した。


(バッカモーン!わしゃ守護霊じゃからこんなんで浄化されんわい!神々から使命を帯びてると言うたじゃろが!)


バッと空を指差す爺。


(だから、指差すなよ、主神に失礼だから。てかその話本当だったのか。)


「むぅ、、、魔王の癖に浄化が効きませんね?」

「私語は謹んでもらおうか、ロゼッタ。」


聖堂騎士に嗜められてる。。。


ムスッとするロゼッタ。


「これでお前が邪悪な存在では無いと正式に証明された。最も重要な嫌疑が晴れたわけだな。では続けるぞ?なぜ『死者の書』は話しかけた?何を話した?答えろ。」


俺は爺と打ち合わせた話をした。


「以前、邪鬼を討伐した際に精霊神様より加護を賜りました。きっと『死者の書』はその事で私を見出し、利用する為に下僕にしようとしたのでしょう。あの時は連隊長を目の前で殺害され、慌てて脅迫に屈した形にはなりました。」


「なるほどな。周囲の証言とも辻褄が合う。連隊長の死を無かった事にしようとしたな?死者の復活は重罪だぞ?」


「まさか、、、死者の書にあんな能力があるとは思いませんでした。連隊長達は無事なのですか?」


「質問にだけ答えろ。最後に一つだけ聞く。貴様は死霊魔導士(ネクロマンサー)ドッツェン・ゼーレか?」


「違います。」


やはり未だに、教会は俺を探しているんだな。


「傭兵ギルドに入る前は何をやっていた?答えろ。」


「何も、何もやっていません。孤児でしたから。。。」


キサラギはジッと俺を睨んでいたが、やがて傭兵ギルドの履歴書を誦んじた。


「ふむ。。。聖杖にも反応は無し、精霊神様の顕現も事実で、お前が関わっているのも知っている。傭兵隊長ショカ・ジン殿以下の信頼も篤い。これまでの功績は、マギキャ・エル・クラシコにまで届いている。それに、、、一目見て分かる圧倒的な身体強化。十分お前は皆が納得するさ。こんなに身体を鍛えている死霊魔導士(ネクロマンサー)がいる訳ないだろう。疑いは晴れた。書記官。正確に記せ。傭兵ゼッドは、聖堂騎士たる我が名、キサラギ・ブランコ・トレホの元に、無罪である。」


「は!」


「手枷を外せ。」


〜〜〜〜〜


釈放された俺はようやく明るい場所に出れた。


「バウ!!」

「おぉ〜!心配したかぁビーズ!!よしよし!!」


駆け寄ってきたビーズは飛びかかって、俺の顔を舐め回した。


「長官、ご迷惑お掛けしました。」


傭兵隊長ショカ・ジンがため息をついた。


「構わんさ。逆に良かったとも言える。『死者の書』の危険性が再認識され、今は聖堂騎士と神官によって場所を写して警備している。君は死者の書に狙われている様だしな。近づける訳にはいかない。ちなみに連隊長は無事だ。暫くは様子を見て現場に復帰する。ベガは聖堂騎士の援護に回っているよ。例によって護符を大量に作らせている。」


「良かったぁぁ。。」


俺は本当に安堵した。


あの本に言われるがままになっていたから、どうなったか気が気では無かったからだ。


あの喋る本がまともな倫理観を持っているはずがなく、人の生き死にには無頓着で信用は出来ない。


「ゼッド、『真血』はあまり大っぴらに使うな。とは言ってもそれどころでなかったのは認める。それに、あのな、言いにくいんだが、、、」


「剣が、壊れたんですね?」


そう、『真血』は必殺と引き換えに武器をボロボロにしてしまうのだ。


「それについてなんだが、領主殿とロゼッタがお前と話したがっているんだ。飯を食ったら、行くぞ。」

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