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『死者と会話する者』

「チキショウ!!お前ほんとうにゼッドなのか!?こんな事があってたまるか!!」

「重い一撃を打ち込んでも弾かれるのだが!?」

「くそっ!くそっ!俺だって!ぐわっ!?」

「やぁやぁ!!うひゃぁっ!!??剣が!!」

「【氷結の礫】!!!あれ??効いてないぞ!?って全部叩かれてる!!ぎゃっ!!」


「それで終わりか??こっちからもやらせてもらうぞ!!」


俺はルグノー男爵から、『牙の塚』の話を聞いた後、夢で見た英霊に不思議なお告げを受けて、新たな力を授かったと物語をでっちあげた。


それと邪悪な幽鬼スマムキの封印。


全て話をした上で証拠を見せる為に、翌日、兵舎前にて、ルグノー男爵の騎士が見ている前で、5対1の無謀とも言える組手を始め、俺以外の全員を叩き潰した。


これで不名誉な気絶事案はチャラである。


(ゼーレ坊よ、なんと大人げない試合じゃ。覚え立ての『身体強化』を部下で試すなんぞ、、、)


(へいへい、分かってますよ、、、)


「し、信じられん、一瞬にして勝ってしまったぞ、、、、」

「お、おい、あの傭兵、ミューズリース剣技大会の上級指南役をやってたグフマンじゃないか!?俺、王都であの人に剣を教えてもらった事あるぞ!!」

「本当だ!!しかも、もう一人は騎士ケイレヴじゃないか??たしかルグノー男爵を襲った一件の貴族の元部下だ。隣領で不正の告発をしてクビになったっていう。彼も強力な使い手のはず。」

「ターバンの少年もなかなかの身のこなしだが、、、剣を落としてしまっては、、、」

「新人傭兵は頑張ったな!真っ直ぐな気持ちのこもった剣だったが、負けたか、、、」


「「というより、、、、あの傭兵は、、、何者なんだ、、、」」



グフマンが全く理解出来ない顔で木剣を支えに起き上がった。


「ゼッド、いくらお前が力自慢でも、傭兵隊長ショカ・ジンより剣技が上回る俺に、勝てる道理などあるはずもない。だが、地面に這いつくばったのは俺だ!!お前の剣技は、下手をしなくともミューズリース最強、いや、世界最強に近いと言ってもおかしくはないはずだ!お告げは本当なんだな!?神はお前に、俺達に何をさせようとしている!」


俺は冗談めかして、仰々しく言った。


「おお!神よ!!あなたは仰られた!!異界より来たれり、善良な7つの魂を持つ亜神、七縛魂アスィーナーを解放するのだと。その魂を縛る邪鬼スマムキを倒す。これが与えられた使命だ。報酬は新たな力と、そうだな、ジルダンの酒場で俺の奢りでステーキを食える。ダメか?」


「ダメに決まってるだろ!!そんなんで命賭けられるか!」


カールストンが噛み付いた。


まぁ、それが普通だわな。


「やぁやぁ、カールストン。ゼッドだって本当はきっとこんな事を言いたくないんだ。けど、行かないとウィンドホーンは血の海になるんだろう?」


サリフは飄々と言った。


爺が俺をせっつく。


(ゼーレ坊、とにかく部下達に『真血』に至るまでの『身体強化』を覚えて貰わん事には、邪鬼の相手は荷が勝ちすぎとるぞ。)


(そうだな。むざむざ殺されるくらいなら、俺一人で行った方がマシだな。)


「無理してついて来なくて良いぞ。俺としては助けて欲しいが、ウィンドホーンの、ミューズリース王国の危機をお前達だけで背負う必要は無いし、実力不足なのに挑むような相手じゃない。相手は伝説に出て来る怪物だ。その辺にいる弱い幽鬼じゃない。どのみち護衛の任務が終わる1週間後に教会に行く。それまでに修行しつつ、決めてくれればいい。」


グフマンは直ぐについていく事を決めた。


「老兵は老兵らしく、戦場に骨を埋めるか。今更王都の普段空けてる家庭に戻って親父ヅラするのも疲れてた頃だ。ゼッド、お前を死地におっぽり出すほど、無責任じゃないぞ。」


サリフも手を挙げた。


「やぁやぁ!水臭いじゃん、ゼッド。俺は『月光』のサリフ。このサーベルに懸けて、仲間と神の敵は打ち倒すさ!今までと変わらないよ!」


ケイレヴも賛同した。


「以前の主君がルグノー男爵に散々迷惑をかけて、わたしは肩身が狭かったからな!ここでどんと大きな手柄を立てて、傭兵契約を解除して騎士に返り咲くのも悪くない!!」


ベガは辞退した。


「遠慮させてもらう。俺は魔導士であって『身体強化』を使う戦士ではないんだ。邪鬼スマムキに敵うとは思えない。まぁ、だが尻尾を巻いて逃げるのも違うな。時間まで魔法陣の護符やルーンスペクトラムを装備に付与して敵の攻撃を多少なりとも遅らせられる。闘いの準備が終わったら直ぐに王都の傭兵ギルドに報せよう。アスゲルト中隊長が勇者くらい引っ張ってきてくれれば良いけどな。」


カールストンは俺達と闘う事を決めた。


「お、俺だって男だ!傭兵は生き延びてなんぼだ!けど、ここで逃げたら生き延びてる意味なんかない気がするんだ!やってやる!!」


カールストンは拳を突き出した。


俺とグフマン、サリフはニヤリと笑った。


仲間の成長は頼もしい。


後ろを遠慮なく任せられる。


「バウ!!!」


ビーズが鼻先をブーツに擦り付けてきた。


「おぉ、もちろん、お前もだビーズ。これまで同様頼りにしてるさ。」



(良い仲間じゃな、ゼーレ坊。その肩に重責がのし掛かっているのは分かるが、集中するんじゃ。今やるべき事をやるんじゃ。)


(ああ。)


〜〜〜〜〜〜


1週間後、4人とも『身体強化』の修行を終えた。


この期間中に『真血』を発動させたのはグフマンとカールストンだ。


カールストンは剣技こそ覚束ないが、自らの魂を認識する『真血』を発動出来る時点で天才だ。


必ず優秀な戦士になるだろう。


サリフとケイレヴは期間内に『真血』を発動出来なかったが、俺とグフマンとの打ち合いにもついてこれるし、何れ習得できるはずだ。


ベガは俺達の装備にずっと筆で魔法陣やルーンを描くのに忙しくしていた。


俺達が休憩している時に準備をし、それ以外は魔力ポーションを飲んでほとんど寝ていた。


護符も沢山用意してくれた。


邪鬼スマムキに通用すると良いが。


目に隈をこさえたベガがルグノー男爵から借りた馬に乗った。


これから王都に向かうのだ。


「ゼッド。やはりお告げは正しいようだ。周囲の魔素や精霊が恐れを成したかのように蠢いている。教会の辺りから妙な気配も感じる。おそらく教会の神官達も慌てているはずだ。先に行ってお前達が来る事を伝えて、そのまま王都に向かう。死ぬなよ。」


ベガは馬を駆けていった。


「それじゃあ、ゼッド隊、行くとするか!!各人、装備と体調は異常無いか!?」


「バウバウ!!!」


ビーズ突撃隊長の良い返事だ。


「抜かりはない。」

「やぁやぁ!!絶好調だよ!ゼッド!」

「まるで勇者になった気分であるな!装備は戦争前のように物々しいが。」

「いや、戦争ってこんなに護符持つのか?一枚いくらするんだこれ?」


(緊張感が無いのぅ。)


(良いんだよ。これが傭兵なのさ。もとより付き合う必要の無い自殺行為に等しい闘いだ。それをやるんだから、ありがたいよ。)


俺達はルグノー男爵に依頼達成のサインを貰い、教会に向かった。


教会に近づくにつれて人垣が見えて来た。


騎士達が民衆の避難誘導をしているのだ。


俺達を見つけた神官がおろおろと慌てて問い質した。


「な、なんなんですか!?『牙の塚』の封印が解けるって!?どうしたらいいか、、、」


「落ち付け。俺達を『牙の塚』まで案内しろ。それとそこの騎士。」


「な、なんだ!?」


「民衆を王都と領主館の二手に分けて逃がせ。王都には援軍を頼んであるし、領主館の兵舎には大量の護符を用意してある。『牙の塚』で大規模な異変が起きたら、その時は俺達は全員死亡したと判断して良い。分かったら伝達しろ。」


青褪めた騎士は急いで走っていった。


神官が案内した『牙の塚』からは、生者のものではない、禍々しいプレッシャーを感じた。


「うっ!?おぇぇええ!!」


神官が吐いた。


どうやらこの圧に当てられたようだ。


「あんたはもう行け!!こいつには聖属性はほとんど効かない。」


もうすぐ封印が解ける。


『牙の塚』の前には消えかけの亡霊が立っていた。


(長かった。。。待っていたよ。。。『死者と会話する者』。。。わたしの力を継ぐ者、、、)


(ドッツェン・ガレー、、、)


弱々しく微笑んだガレーは俺を手招いた。


(やっと、、休めるのかい?、、もうこいつは抑えておけない。余りにも強過ぎた。倒せるのは人間ではなく、アスィーナーのみ。七つの魂を解放しない限り、ウィンドホーンに未来は無い。)


(心配するな。俺達に任せてアンタは休んでくれ、ご先祖様。俺はドッツェン・ゼーレだ。一族の誇りにかけて、邪鬼スマムキは必ず斃す。)


驚いたガレーは泣きながら俺に倒れ込んだ。


(良かった、、、息子は生き延びた、、繋がったんだ、、、未来へと、、、わたしの持つシャーマンの能力『亜神憑依(ポゼッション)』だ。君に『憑依』する事で受け継がれる能力。相応しい者に、相応しい力が宿る。そしてさらばだ、ゼーレ。わたしの愛する家族の子孫よ。)


ドッツェン・ガレーの残滓は俺に溶けて消えた。


それと同時に『牙の塚』が脈動する。


「全員、『身体強化』をかけろ!!盾を構え!剣を抜け!!突撃準備!」


「「「突撃準備ーーぃ!!!」」」


抜剣の音が鳴り響いた。


「突撃ぃーーっ!!!」


俺達は暗い『牙の塚』の墳墓に入った。

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