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王都凱旋とヴィレミナの決意

勇者エイマールと魔法使いフェトゥは、ゴブリンを倒した後、道に迷った挙句、警備巡視している騎士達に連行されていた。


「エイマール様、結局迷子じゃないですか!!」


「静かにしてよ、フェフェ。僕の勘が正しければ・・・」


「フェトゥです!!このポンコツ勇者!!!」


「なんだってぇ!?文無し魔法使いの癖に!」


「それは貴方も一緒です!!」


静かな森に響く喧騒。


「何者だっ!!??」


「「ひぇっ!?怪しい者ではありません!!」」


王国の国境警備をしている傭兵が2人に命令した。


「怪しい連中は皆そう言うんだ!!国境の定められた順路をそれて何をしている!!とりあえず来てもらおうか!」


〜〜〜〜〜〜


「いや〜ゼッド!!『首投げ』の異名を賜るなんて将来有望だなぁ!!」


「黙れマルチェロ。おい、タイケン、それ俺のカエル串肉、、、」


「!!!ほへん!ヘッホ!はひはへへはへはっは!!!」


「タイケン、、、お前、後で覚えとけやぁ。」


「うわぁ。『首投げ』されちゃうぞぉ?」


「次言ったらぶっ飛ばす!」


野営中にぎゃあぎゃあ騒いでたら中隊長に怒られた。



「何やってんの?アンタ達?」


ヴィレミナは俺達の様子を見て聞いた。


「何って、見ての通りだ。」


ひたすら黒騎士の鎧兜と剣を磨かされている。


深夜2時に。


「バウ!!」

「アンタ達、バカでしょ。」


ビーズも起きてたのか。


葉冠(リースベイン)混成討伐隊は任を解かれ、本来の任務に戻った。


2週間に渡る討伐隊の捜査により、被害者のほぼ全員を収容した。


現場が惨すぎて心に傷を負う騎士が続出したため、教会の臨時カウンセリングも開設されていた。


「マルチェロ、随分と盾が傷付いてるな?」


「俺はゼッドみたいに体格が良い訳じゃないからな。シールドバッシュを多用してのごり押しだ。しかもゴブリンシャーマンに魔法で炙られちゃってね。塗り直しで散々だよ。」


「それで焦げ臭いのか。」


「ワフ!」


クンクンと臭いを嗅ぐビーズ。


「そういえば、国境に来てた自称勇者が本当に勇者だったらしいよ?」


タイケンがゴボーと呼ばれる木の根に似た野草を齧りながら言った。


ちなみに俺とマルチェロも面白半分で食ってみたが、意外と香りと甘みがあって旨かった。


つまみに良い。


東出身のタイケンの両親は良く食べているらしい。


「あぁ、たった2人でゴブリンの集落を潰したんだっけ??凄いじゃないか。」


いくら俺でもあの数を1人や2人で相手したくはない。


死霊使役(ネクロマンス)を使えば圧勝出来るけど、そんな事しないし。


「ウルヴリヒト子爵とゼッドが目立ち過ぎて、後から言われても、って感じだけどな。」


「勇者一行は教会から派遣されたんだって。邪神復活の影響を調査してるんだ。もしかすると、蠢く闇の力や死霊魔術士(ネクロマンサー)が強力なアンデッドを集めて魔王軍が出来上がったりして?」


魔王軍、か。


かつてバラバラに活動していた魔族を束ねた伝説の魔王がいた。


色々と悪の化身だとか、神の敵だとか言われているが、そいつのおかげで知られていなかった魔族達のキミョーキテレツな生態と文化が人族に知れ渡った為、歴史上重要な登場人物なのだ。


実は俺は10歳の時にそいつのせいで人生めちゃくちゃにされたが、別に恨んではいない。


ただ分かるのは、会っちゃいけない災害みたいな人物、って事だけだ。


王国領にも魔族が少数ながら暮らしている地域がある。


魔王も悪いヤツではない、はずだ。


「はぁ、俺も勇者様と冒険の旅に出たいなぁ。」


タイケンは傭兵ギルドで『聖王物語』とか、ジョルジュ聖王と魔王の決闘とかそういう冒険譚が好きで話を振ってくる。


というか傭兵ギルドに入った理由がジョルジュ聖王に憧れての事だ。


タイケン、、、お前なら勇者パーティに入れるだろう。


『伝説の料理人』くらいには少なくともなれそうだ。


「くくく・・・・」


「おい、ゼッド!何笑ってんだ!さてはバカにしてるんだろ!?」


「そんな事ない。」


俺はタイケン、ビーズと共に変わらず巡視の任務を続けていた。


亡霊アパムから報酬で教えて貰った、彼が盗賊からくすねた金や宝石類を回収した。


これに関しては他の隊員も預かり知らぬ、俺の臨時ボーナスだ。


死霊魔術士(ネクロマンサー)は色々と精神的ストレスが溜まるから、帰ったら発散しなきゃならない。


主に酒で。



更に1週間後、教会の神官達が引き上げ、国境で起きたゴブリンキングによる誘拐殺人が両国に知れ渡る事になった。


行方不明者の発見と、前代未聞の混成討伐隊、騎士と傭兵の獅子奮迅の闘いぶりに、人々の間に激震が走った。


俺達、傭兵ギルドの長い遠征も終わり、最後に国境で葉冠(リースベイン)混成討伐隊で一緒に戦った騎士達の健康と栄光を互いに祈って帰り路についた。


俺は『銀狐』ヴィレミナに再び聞いた。


「良かったのか?俺達に付いてきて。うちの傭兵ギルドはキツいぞ??冒険者になった方が自由は効くし、色んな奴と知り合える。今ならまだアスゲルト中隊長に言って辞められるぞ?」


ヴィレミナは煩そうに手をひらひら振った。


「うるさいわね!あたいは出世すんのよ!頑張って盗賊から貴族にクラスチェンジすんの!!それに忌子を嫌わないアンタ達についてく方が過ごし易いじゃない??ほら、、ゼッドとか、タイケンとか、、良い意味でバカだし。。。」


「お前なぁ!!俺はバカじゃない!」


ふんぞり返るなタイケン、、バカみたいだから、、、


「それにマルチェロは貴族だから、あたいがワンチャン狙うならありね!!」


「俺、金無い。俺、傭兵、やってる。俺、断固、拒否!」


マルチェロが急にバカのフリし始めたな。


「教会の連中に何か言われたのか?」


ヴィレミナからチリッと苛立ちを感じた。


「えぇ。あたいの(オッドアイ)はシスターに向いてないって。」


「そうか。」


(ゼーレ坊も難儀じゃのう、、、)


(彼女の平穏か。。意外と難しい約束だったか。教会が引き取ると考えてたけど、甘かった。)


アパムの野郎、問題児を残しやがって。


彼女の腰にはアパムの遺した短剣が提げられていた。



王都に凱旋すると、黒騎士達は民衆の歓迎を受けた。


共和国首都と王国王都では早速、国境の事件が演目として劇場に取り上げるべく制作が始まっているらしい。


俺達が王都に凱旋すると、劇場に予告の垂れ幕が掛かっていた。



『葬送の葉冠(リースベイン)


主人公は悲運の英雄、『火炎剣』ウルヴリヒト子爵!!

ヒロインは銀色の髪の姫!

従者『怒りの首投げ』ゼッド!

忠犬ビーズ!

狂言回し、『美食屋』タイケン!


国境に巣食う人喰いゴブリンを、正義と復讐の業火が焼き尽くす!


姪の命を奪われたウルヴリヒト子爵は、ついにその卑劣な悪鬼を仲間と共に追い詰める!


乞うご期待!!


※遺族の方にお悔やみ申し上げます。

当劇場の観覧を無料とさせて頂きます。

招待状をご提示下さい。


「誰が従者だ!誰が!」

「ん?アタイがヒロインって事は、あのムキムキハゲ貴族とアタイが結婚する流れなの??」

「ワフ??」


マルチェロはゲラゲラ笑っている。


「登場人物だけでお腹いっぱいだ!ヒーヒー!!」


「狂言回しで美食屋、って、、、」


タイケンはめちゃくちゃガッカリしている。


(ついにゼーレ坊が覇道を歩み始めるのかのぅ!?爺は感激じゃわい!)


(黙っててくれ。)


教会のやつら、劇作家にある事ない事吹き込んだな。


だが間違いなく国威は高揚している。


王都の貴族達には『火炎剣』ウルヴリヒト子爵が人気だが、平民には『怒りの首投げ』ゼッドの方が人気らしい。


敵の首を敵に投げ付けて倒す痛快さが人気の秘訣だ。


あれは戦場での心理的動揺を狙ってやっているものだ。


面白さを狙ってやっているのではない。


多分。


「ゼッドって、自覚無いけど、怒ると物投げ付ける癖あんだぜ。」


「そうなんか?マルチェロ。」


「ああ。俺が投げナイフ覚えたきっかけだって、お前との喧嘩や稽古の打ち合いが発端だからな。」


なるほどね。



そうこうしてるうちに傭兵ギルドに到着した。


久々の休暇だ。


「ヴィレミナ、お前、宿どうすんだ?」


「中隊長から貰ったお金で足りる??」


手の平に金貨が3枚。


うん。足りるけど、足りない。


単純に2泊3日なら足りるけど、洗濯とか風呂とかメシとかどうすんだよ中隊長。。。


忙しいからって、こりゃないぜ。


「良いか、ヴィレミナ。お前、王都の物価が高いのは知ってるか??慎ましくくらしても此処では1日最低でも金貨1枚はかかる。ツケ、って手もあるが、それは俺みたいに顔見知りで返すアテが有る奴限定だ。お前は未だに信用ゼロだ。アスゲルト中隊長は他に何か言ってたか??」


「困ったら、マルチェロかゼッドを頼れって。」


出たよ、丸投げ。


「お前は傭兵の仕事を覚える前に、基本的な常識を覚えろ。簡単だ。俺達の真似をして、分からない事があれば聞け。あと、悪さはするなよ。」


「あいよ。」


「仕方ないから同じ宿に泊まるぞ。」


俺は荷物を取って以前引き払った宿にヴィレミナを連れて行った。


幸い未だ部屋は空いていた。


「あそこがトイレだ。あっちが洗濯屋で、こっちが公衆浴場だ。左手が女用だ。覚えたか?」


「うん。」


「まず、風呂に入れ。上がってマルチェロから貰ったこの服を着たら汚れた服は洗濯屋に持ってけ。とりあえずどっちも金は良いから俺の名前でツケで、って言っておけ。終わったら宿で待ってろ。」


マルチェロの着せ替えセットが役に立った。


やはり貰える物は貰っとくべきだ。


あとでこの服を売ってヴィレミナの持ち金にしようかと思ったが、本人が気に入ったらどうしようか?


ヴィレミナを見送ると、俺は手に入れた宝石の換金に行った。


「ゼッド、久しぶりに来たと思ったら、なんだこのお宝は?」


質屋のベケットが宝石を手に取り目利きし始めた。


「遠征先で拾った。」


『拾った』。


なんて便利な言葉なんだろう。


この言葉さえあれば大抵の押収品は捌けると思って良い。


「ふむ!なかなか素晴らしい!家紋も無いから足もつかん!人気相場で良かったな!金貨200枚持ってけ!!」


結構良い感じのお値段になったじゃないか。


ずっしりとした革袋を、周囲を警戒しながら荷物に仕舞った。


俺はこういった非正規の金は冒険者ギルドの口座に入れるようにしている。


傭兵ギルドだと仲間の目があるからな。


冒険者ギルドで預金を終えると、宿に戻った。


「バウ!!!」

「遅い!」


ヴィレミナは退屈そうに椅子で脚をぶらぶらさせていた。


風呂に入ったら見違えたように銀髪が輝いている。


ビーズは宿でもうおねんねタイムだ。


「ヴィレミナ、晩飯食いに行くぞ。俺の奢りだ。」


「え?良いの?」


ジルダンの酒場にヴィレミナと入ると、常連が冷やかしてきた。


「遠征おつかれさんゼッド!!なんだその娘は?お前のコレか!?」


ビッと小指を立てた。


「黙れドワーフ、ハンマーでも食ってろ。それと明日、このヴィレミナの革鎧頼むわ。」


ドワーフはヴィレミナを舐めるように見た。


「むむ!こりゃなかなか、、、」


「な、、、何よ?」


「良いケツしとるわい!!」


バシッ!!!


「何遊んでんだ?早く席につけ。」


「ゼッド!!ちゃんとしたの出さないと、あたい、アンタもはたくよ?」


俺達が座ってすぐにステーキとエールが出た。


「ほら、食え。」

「うわぁ。」


ヴィレミナが目を輝かせ、表情を綻ばせた。


「お、美味しい、、、」


「あたり前だ。ここのステーキは至上だ。ほら、バゲットはソースに付けて齧るんだ。苦しくなったらエールも飲め。」


無我夢中で食事している。


懐かしいな、、、


かつて、ここを発った先輩傭兵にストリートチルドレンだった俺も連れてきてもらった。


同じ様な顔でステーキ食ってたよ。


「ぷはー!!あたい、こんな肉食ったの初めてだよ!」


「だろうな。今お前が食った分で金貨1枚だ。」


「そっか〜。宿代1日分の食事って、高い?」


「高いさ。もの凄くな。だけど、この酒場はステーキ3枚までおかわり出来る。バゲットも3個おかわり出来るんで、家に持って帰って次の日の朝食に出来る。傭兵ギルドの訓練はハードだが、此処のメシを食えば、男は俺みたいに強く大きくなるし、女は凛々しく美しくなる。どうだ?働くやる気が湧いてきただろう??」


「うん!うん!あたい、やれそうな気がする!ステーキ1枚追加で!」


ヴィレミナは明日からボクス連隊長に毎日走らされるだろう。


食える時に食っておけ。

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