壊れた指環と調停者
「おらおらどうした??ゴブリンキングの○○○はそのショボい槍みたいにフニャ○ンかあ?かすりもしねぇぞ!」
「期待はずれだったな!!そこのゼッドがいなくてもわたしだけで十分殺しきれるなぁ!!」
「グォォアアアア!!??ナゼアタランノダ!!??」
強力な槍を召喚したゴブリンキングだったが、ひらりひらりと巨漢である筈の俺とウルヴリヒトに翻弄されて苦しげにがむしゃらに振り回すだけだ。
(ふん。指環の力で無理矢理に能力の底上げなんぞするから、力に振り回されるんじゃ。魔物にしては上出来じゃが、手練れの戦士に向かって普段使わん武器で挑む馬鹿がどこにおる?やはりゴブリンはゴブリンじゃったのう。。。)
「おら!その指環はもう要らないだろう?」
俺は親指ごと指環を叩き斬った。
「アギャアアア!!??」
指環が壊れた時点で見るからに動きが悪くなり、振り回していた蒼い魔力の槍も消えた。
「ほう?やっとゴブリンらしい喚き声になったのではないか?元気が有り余ってるみたいだな!色々と教えてやろう!我々がどれだけ恐ろしく!敵に回してはいけない相手かという事をな!!」
数分の剣戟の後に、身体中から血を滴らせて跪く肉塊が出来上がった。
両腕は切り落とされて、なます切りにされて焼け焦げた顔からは表情が読み取れない。
俺はゴブリンキングの耳元で言った。
「良いか??せっかくだから俺達がお前を殺す理由を教えてやろう。本来であれば魔物であるお前にこんな事を言う必要性は無い。だが、お前に見せてやる。亡者の嘆きをな!!!」
俺は剣を奴の腹に刺し、体内に収まっている魂魄を引きずり出した。
目の前にはこれまでに回収した使役契約した被害者の亡霊達が並び、ゴブリンキングに憎しみと呪いの言葉を浴びせている。
この魔物の魂は呪われ、神によって煉獄に堕とされる。
百度殺された方がマシな苦しみを永遠に味わいながら魂を削り取られるだろう。
死霊魔術士はその煉獄の扉を開く手助けも出来るのだ。
(こやつ、もう少しで悪鬼になるとこじゃったのぅ。危ない危ない。)
(あれだけの魂魄が、もう原型を保ってない。間に合わなかったか。)
俺は悲痛な気持ちで魂魄を回収した。
「グ、ワ、セ、ロ、、、オ、、レ、サマ、ノ、タマ、シイ、カエ、セ、、、」
「ゼッドの言う通りだな。亡者の痛みと哀しみを、遺された者の怒りを地獄で知るが良い!!」
ウルヴリヒトのバスタードソードが振り下ろされ、鮮やかな斬り口を残して首を落とした。
煉獄の扉の向こう側に、奴の穢れきった魂が吸い込まれて消えた。
「か、勝った、、、」
「「「うぉぉおお!!!共和国万歳!!王国万歳!!!」」」
(ほう、亜神様のお出ましじゃのう。)
爺の隣にはまたあのフードの亜神が現れた。
「久しぶり。なんだかお祭り騒ぎだね。」
再び灰色の空間が広がっている。
「ああ、あの魔物?の能力だけを分割しておいたよ。正当な報酬、戦利品ってやつだね。何だか自らが欲する武器を魔力で具現化出来るみたいだけど、要る?」
(なかなか魔法使いには魅力的な能力じゃな!現役時代にそんなものがあればどれだけ荷物が減って楽じゃったか、、、)
「あんたはいったい何者なんだ???」
邪神と呼ばれ、封じられていた亜神。
得体の知れない能力。
そして何故俺を気にかけるのか。
「そうだね。気になるよね。うん。私は調停者なんだ。均衡と力を司る、って言うのかな?光が溢れすぎない様に、あるいは闇が全てを飲み込まないように、その中間だよ。そして中間では強大な力が圧縮される。それが私だ。最近まで封印されてたから、久々に起きたらあちこちガタが来てるみたいでね。君には知らないうちに助けて貰ったんだ。これもまた、バランスだね。」
亜神はゴブリンキングを指差した。
「そいつのせいで魂の循環が滞ってしまいそうだったんだ。魂の偏りは天変地異とかを引き起こすからね。ほら、その魂魄、復元してあげるよ。」
俺が回収した魂魄が亜神の力によって原型を取り戻していく。
(お兄ちゃん、ありがとう。)
(あぶー。。。)
天へ消えていく子供達の霊魂。
「幼い魂は全て天界に戻った。もう痛い思いは忘れた。きっと次は大丈夫さ。異界に生まれ直す子もいるだろうけど、なんとかなるさ。」
俺は涙が止まらなかった。
この死霊魔術士の力を手放せればと何度も思っていた。
救えない魂が余りにも多くて。
だが今回はぎりぎり間に合った。
間に合ったんだ。。。
「どう?これでもまだ悔しい?」
「悔しいさ。死んでしまったんだから。」
「人は何れ死ぬ。いつか必ずね。だから、精一杯楽しむと良いさ。均衡を取りながらね!」
亜神は消え、風景は戻った。
「それが一番難しいんだっての。」
(じゃな。お!ゼーレ坊!あやつ、しれっと能力渡しとるぞ!)
(魔力の武器とかそんな目立つもの使えるわけないだろ)
「ゼッド、どうした?涙なんか流して。」
ウルヴリヒトが近づいて俺に指環を渡した。
「な、なんでもない、です。」
「今更敬語はやめろ。ほら、この指輪、ゴブリンキングがおかしくなった原因なんだろ?」
(爺、これはどんなものなんだ?)
(これは『知恵の指輪』といって着用者の知力を引き上げるアーティファクトじゃ。何の因果か魔物の手に渡ったようじゃな。)
「『知恵の指輪』、というものです。強力なアーティファクトらしいですが、、、」
ウルヴリヒトは思い当たる節があるようだが、思考を切り替えた。
「一旦、それについては保留だ。喜んでる暇は無いぞ!生存者の救出だ。」
そうだった。
アパムの霊はまだ天に召されていない。
ヴィレミナを助け出さなければ。




