【短編】ダンジョン奥地で追放された【村人】の成り上がり冒険録~ダンジョン攻略した瞬間、創造神から力を与えられたので、世界最強の【村人】を目指すことにしました。追放した奴らなんてもう知りません!
軽い気持ちで書いたので、少しでも楽しんでいただけたら幸いです
この世界の村人は、無能と認知されていた。なんせ戦闘職や生産職のように専門性のある職業ではなく、誰にでもできる仕事しかできないから。俺---リアム・ミラーは、村人だけど冒険者として活動をしていた。
毎日パーティメンバーの荷物持ちをしながら様々な情報を集めて、パーティに迷惑をかけないよう努力してきた。
そんな時、ある情報を入手した。創造神によって作られたダンジョンが存在することを。そのダンジョンを攻略したら創造神から力を与えられる。
そのことをパーティリーダーであるバーレイに伝えたところ、笑顔になりながらそのダンジョンに行こうと言われた。
(やった)
初めて喜んでもらえて嬉しかった。パーティに加入させてもらった時からパーティメンバーの誰もが俺に優しくしてくれなく、あまつさえきちんと働けと毎日のように言われてきた。だからこそ今日伝えた情報がみんなの役に立てて、やっとこのパーティの一員として認められたと思った。
そして、俺たちのパーティはすぐさまこの情報を元にあるダンジョンに向かい始めた。俺たちが暮らしている街から一日程離れたダンジョン。ダンジョンに向かっている時、今までとは違って、パーティメンバー全員が俺に話しかけてくれた。
(これが冒険だよな)
やっと俺の冒険が始まったんだと思った。今までの冒険は、村人だった俺への試練であり、冒険ではなかった。今までみんなが俺に言ってくれたのは試練、そう思い込んだ。それほどみんなに必要とされていることが嬉しくてたまらなかった。
そしてダンジョンに入ったところでバーレイに話しかけられる。
「本当にここが神々によって作られたダンジョンなんだよな?」
「絶対そうだよ!」
俺は確信をもって答えた。ダンジョン内はいつものダンジョンとは風景が違い、一階層では草原になっていた。普通のダンジョンでは迷路になっているが、このダンジョンでは草原であったため、入った瞬間からわかった。それに俺が入手した情報では、一階層では草原、二階層では森林、三階層は山岳と聞いていた。その情報にこのダンジョンは一致していた部分もあり、自信をもって言うことができた。
するとバーレイは笑顔になりながら言う。
「じゃあ進むか!」
「うん」
全員でわきあいあいとダンジョンを進み始めた。パーティメンバーが戦闘を行っている時は、モンスターの情報を伝えつつ指示を出して戦ってもらう。そして戦闘が終わったところでポーションを出してみんなに渡す。
「ありがとな!」
「当然のことをしたまでだよ!」
村人である俺は戦闘を行う事ができない。そんな奴が冒険者として活動していくには、クエストを受ける前までにモンスターたちの情報を入手しておくことと、パーティメンバー全員の荷物持ちをすること。そして情報を元にモンスターたちの弱点などを随時、戦っている仲間たちに伝える。戦闘が終わったら荷物からポーションを取り出して回復をしてもらう。
こうでもしない限り、村人が冒険者として活動をすることなんてできない。でも俺は苦ではなかった。冒険者として様々な人を助けることが俺の夢であったから。
その後も順調に二階層の森林、三階層の山岳を突破することができた。どの階層でも戦闘が何度か起きたけど、誰一人として重傷せずダンジョン奥地に進むことができた。そして四階層、五階層と突破することができて、やっとダンジョンの最下層についた。
情報通り最下層は火山帯。それを目の当たりにして、やっとこのダンジョンが創造神によって作られたダンジョンだと確信を持てた。みんなに氷の結晶を渡した時、バーレイが言う。
「この階層を攻略したら創造神から力が与えられるんだよな?」
「うん」
すると少し血相を変えながら俺に聞いてくる。
「まだ誰もこのダンジョンのことを知らないんだよな? もうクリアされていましたとかは無しだぞ?」
「た、多分大丈夫だと思う。この情報も一部の人しか知らないと思うから」
そう。この情報はダンジョン周辺にある国の上層部しか知られていないはず。なんせ俺がこの情報を入手したのも、運よく国王が話しているのを聞いたことであったから。だから他の人がこのダンジョンを攻略しようとしているとは思えない……。
「だったらいいけどさ」
「うん……」
少しみんなとギクシャクしながらもダンジョン攻略を再開する。流石ダンジョン最深部と言うべきか、モンスターが強くなっていた。バーレイや他のパーティメンバーも先程までの階層とは違い、モンスターを倒す時間がかかっていた。
(やっぱり最下層なだけあってみんなも辛そうだよな)
俺に戦闘スキルがあって、みんなと一緒に戦うことができれば。そう思ってしまった。でもそんなことできるはずもない。それは俺自身が一番わかっている。そんなことを考えているより、みんなに貢献できることを考えた方がいいに決まっている。だから俺は、全力でみんなにモンスターの弱点などを伝えて貢献しようとした。
そして最下層で何度か戦闘が終わったところで、休憩を挟んだ。俺はみんなの武器チェックや周辺の情報を集め始めたところで、パーティメンバーがボソッと言う。
「いちいちうるさいんだよ。雑魚は街でできる仕事をすればいいのによ」
「そうだな。でもあいつは…….」
(え?)
聞き間違いだよな? それに最後の方は何て言ったかわからなかった。俺はすぐさまみんなの方を向くと俺に笑いかけてきた。
(よかった。聞き間違いだったな)
休憩が終わり、最下層の攻略に戻った。火山帯であるため、氷の結晶が無くなった途端に体全身が熱くなり始めた。みんなも同様に暑そうにしていたため、すぐさま氷の結晶を渡す。
「ありがとな」
「うん!」
そこでまた誰かがボソッと言う。
「もっと早く渡せよ」
……。耳が悪くなったのかな? やっぱりダンジョン内だから耳も悪くなるのか。そこからより一層ダンジョン攻略に力を入れ始めて、数時間経ったところでダンジョン最深部であるボス部屋の扉を発見する。
(本当にあった。よかった!)
そう思った時、バーレイが笑いながら言う。
「ここか!」
「多分!」
そして全員でボス部屋の扉を開けて中に入る。
(あれ?)
誰もいない。誰が見ても一目瞭然であった。中には誰もいなく、もぬけの殻。そしてもう一つ驚くことは、中心部に一点の光が差し込んでいた。みんなで部屋の中を探索するが、何も見つけることができず、バーレイが怒鳴りながら俺に言った。
「おい! モンスターがいないじゃないか!」
「そ、それは…….。俺にもわからないよ」
「クソが。お前を信じた俺がバカだったよ」
それに続くようにパーティメンバーからも罵倒を受けて、この部屋を後にした。するとボス部屋の前に大量のモンスターが立っていた。
(なんでこんなに!)
こんな数、俺たちだけでは処理することができない。そう思った瞬間、バーレイが笑いながら言った。
「リアム、やっと役に立つときが来たぞ!」
「え?」
そう言った時にはもう遅かった。俺はみんなの荷物を奪われ、モンスターの集団へ突き飛ばされた。すると徐々にモンスターが俺に近づいてきた。
「バーレイ? どうして……」
「無能のお前をパーティにいれていた理由がわかるか? お前をおとりにするためだよ。本当は良い情報でも持ってきてくれればと思っていたけど、お前が持ってくる情報は何にも役に立たなかった」
「そんなことないだろ……。モンスターの情報やダンジョンの構造だってきちんと役にたっていたはず……」
俺が伝えた情報のおかげでスムーズにモンスターを倒すことができたと思うし、ダンジョンの構造だって知らなかったらここまで簡単に来ることができなかったはずだ。なんせ今いる火山帯も、氷の結晶がなかったら引き戻す必要があったから。
「笑わすなよ。モンスターの情報なんて無くても俺たちは戦えるし、ダンジョンの構造だって臨機応変にできたはずだ」
「……」
「俺が求めていたのは、創造神が作ったダンジョンの情報だったんだよ。でもこのダンジョンも外れだ。結果も出さない村人なんてこのパーティにはいらないんだよ」
「ちょっと待って!」
俺がそう言った時には、バーレイを含むみんなは背を向けて階層から抜け出そうとした。
(俺は何か間違えたか?)
今まで全力でみんなの役に立とうとした。なのにこんな仕打ちあんまりだろ……。そう思っている間にもモンスターは徐々に俺へ近づいてきていた。
(今はこの状況から打破しなくちゃ)
そう思い、すぐさまこの場から離れようとした。でも逃げる場所なんて……。いや、ある。俺は全速力で走ってボス部屋の前につく。モンスターたちも俺を追いかけるようにこちらへ寄ってきた。一瞬中に入るか迷ったが、もう選択する余地もなくボス部屋に入った。
そこは先ほどとは違い、ドラゴンが存在していた。
(なんで!)
なんで今更いるんだよ! さっきまでいなかったじゃないか……。俺は神を恨んだ。いや、自分の人生を恨んだ。村人として生まれ、無能だと周りには罵倒された。そしてやっとのことで冒険者になれたと思ったらこんなありさまだ。
(クソ!)
死を待っていると、ドラゴンが話しかけてきた。
「なぜ二回もこの部屋に入ろうと思った?」
「え?」
上を向いて、目を見開きながらドラゴンを見る。すると首を傾げながら俺を見ていた。
「だからなぜ二回もこの部屋に入ろうとしたんだ?」
「そ、それは……。部屋の外にモンスターがたくさんいて、対処できないと思ったからです。だったらこの部屋で死のうと思いまして」
俺にだってどこで死ぬか、選ぶ権利ぐらいあるはずだ。だったらこの部屋で死にたい。
「そうか……。お前は何て名前だ?」
「……。リアム・ミラーです」
「リアムよ。お前は死なんよ」
「え?」
俺が死なない? そんなはずない。目の前にドラゴンがいて、逃げ切れるはずがない。それに万が一逃げきれたとして、部屋の外にいるモンスターはどうする? 村人の俺が倒せるはずもない。逃げ切れるわけもない。そんな状況でどうやって生き残れるんだよ!
「リアム。お前は運が良い」
「は?」
運がいいわけがない。運がよかったらこんな状況に陥っているわけがない。それに職業はもっといいのになっているはずだし、仲間にも恵まれていたはずだ。
「私、シャーロンはお前に力を授ける」
「……」
シャーロンが言った瞬間、俺の短剣に魔方陣が浮かび上がってきた。すると頭の中で、よくわからないことが思い浮かんでくる。
(これは?)
「その剣に私の力を授けた。頭の中に私の力が浮かび上がってこないか?」
「あ、あぁ」
なんて言えばいいかわからないが、百熱の力が宿ったイメージ。
「そのイメージを剣にしてみろ」
「?」
言われるがまま剣に炎のイメージをする。すると剣が燃え上がって来た。
「そうだ。それが私の力だ。まあ一部だがな。もっと使いこなせるようになったらもっと力を使えるようになるはずだ」
「……。なんで俺にこんな力を?」
疑問でしょうがなかった。村人である俺を選んだ理由が分からない。俺なんかではなく、さっき入った時、バーレイたちを選ぶこともできたはずだ。なのになんで俺なんだだ?
「リアムがこの部屋に二回入ったからだ。私が見えるようになる条件はこの部屋に二回入ること。そして二回目は一人で入ることだ。それを達成したのがリアム。お主が最初であった」
そう言うことか。でも本当に俺でいいのかわからなかったので、聞き直す。本当に自分で言うのも何だが、お人好しだと思う。でも聞かずにはいられなかった。
「本当に俺でいいのですか? なんたって俺は何の取り柄もない村人ですよ?」
「そんなこと私には関係ない。私は創造神によって作られたもの。誰であろうと創造神に言われたことが優先される」
そこでやっと思い出す。このダンジョンが創造神によって作られたダンジョンであったことを。さっきまでは死と直面していたため、そんなこと考える余裕がなかった。
「では本当にいただきますよ?」
「あぁ。リアムが呼べば私はお主の前に出て力を貸そう」
「? あ、ありがとうございます!」
俺の前に出るって意味が分からなかったが、今はそんなことより力を手に入れたことが嬉しかった。
(これで俺も冒険者になれる!)
「後数日もしたらこのダンジョンが崩壊する。だから早めに出るんだな」
「は、はい。ありがとうございます」
「敬語は辞めろ。リアムは俺と契約した存在。主従関係ではないのだから」
シャーロンはそう言ってこの場から消え去った。
俺はすぐさまこの部屋から出る。案の定モンスターたちがたくさんいた。俺はシャーロンの力をイメージしてモンスターたちに斬りかかる。すると当たってもいないのに、モンスターたちが燃え上がっていった。そこからはあっという間であった。シャーロンの力を駆使してダンジョンを後にした。
ここから無能だと言われていた村人の世界最強になる道のりの冒険録が始まっていった。
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