第六話 必殺!破邪乱打甲!
主人公の手持ちの【変化札】が増えてきました。
吉備津彦命の隠れ神社では、神宝の説明が続いていた。
「凄いな……これは凄い!」
と、喜ぶ茨木。
「ただ、攻撃力は一番 弱い魔族でさえ、倒す事までは出来ません」
「あくまでも“補助”です」
「まあ、それでも警察官の銃よりは、効果がありますけどね……」
と、苦笑いする神宝。
「それでは、あまり戦力になりませんね」
と、茨木。
「はい。索敵など便利に使役出来ますが、戦力としては……」
「ですから、警察官などの魔族の対策をしている人達に、魔族から【変化帯】と【変化札】を奪う様に指示して欲しいのです」
と、茨木に依頼する神宝。
「ほう?何故?」
疑問を返す茨木。
「怪人化させられる人を減らす為……」
「それと、それを使える人達を増やす為です」
と、答える神宝。
「ん!??」
と、驚く茨木。
「奪った【変化帯】と、浄化した【変化札】で、適性者は【式神】を【使役】したり、【化身】したり出来ますから、一人増える毎に、戦力が大幅に拡大します」
と、事態の光明を告げる神宝。
「「「なるほど!!!」」」
と、その場の全ての人が納得する。
「ただ、問題点が一つ……」
と、神宝。
「なんですか?」
と、茨木。
「魔族に使われて、人を怪人化(魔族化)した【変化帯】は、浄化された後は、きれいさっぱり無くなります……」
「残るのは【変化札】だけです……」
「だから、適正者が怪人化される前に、【変化帯】を奪わないと……」
と、問題点を明かす神宝。
「それと、【変化帯】には、日幡さんや茨木さんを怪人化させた下位の【変化帯】だけでなく、中位の【化身帯】や上位の【魔人帯】、最上位の【魔神帯】と種類が有るので、中位以上の【変化帯】を確保して欲しいですね。出来るなら白神さんのと同じ、最上位の【魔神帯】の入手ですね」
と、説明する神宝。
「位が上がると、適正者も減りますし、中位以上の【変化帯】は、その数も少ないので、より少なくなる上位以上の物の入手は難しいだろうと思いますけどね……」
と、補足する神宝。
「質問が二つあります」
茨木が聞いてきた。
「はい」
と、神宝。
「【変化帯】の上位は、そんなに能力が違うのかと言うのと、その形状を教えて下さい」
と、神宝に問う茨木。
「相性が有るので、強さの差を数字で出すのは難しいですが、一つランクが違うだけで、【変化帯】を使った時に、倍は力に差が出ます」
と、説明する神宝。
「それは大きな差ですね。そんなにも違うのか……」
と、驚く茨木
「形は、上位になればなるだけ、スロット数が増えて、装飾も豪華になります。下位の【変化帯】と形状が違う物なら、中位以上の物と思ってくれたら良いです」
と、神宝。
「なるほど……」
と、頷く茨木。
「中位の【化身帯】は、スロットの数は下位の【変化帯】と同じですが、手に魔力で形成された武器を持ち、その武器にスロットが付いています」
「上位の【魔人帯】には、スロットが二つです。そして、同じく魔力で形成された武器にスロットが有り、最上位の【魔神帯】には……見たら解る様に…」
「スロットが三つで、武器にもスロットですね。重要な情報を聞けたので、また部下に連絡を入れます」
と、また電話を掛ける茨木。
「うん。頼むよ……」
「そうか?では、出て受け取って貰おう……」
「それでは、居ない間 宜しく頼む……」
「お待たせしました」
と、茨木。
「あ、白神さん おじい様からの荷物を、近くまで警察官が持って来ているそうです。ここは認識されない様だから……」
と、茨木。
「わかりました。受け取りに出ます」
と、白神は辛そうに立ち上がる。
白神がわかりやすい所まで移動すると、鬼や怪人に捕まり、怪人にされ掛けている男が見えた。
「クソッ! でも、【変化帯】や【変化札】を手に入れる良い機会だ!今回は使った事の無いコレを……」
と、【魔神帯】を腰に巻き、【猿王】の【変化札】を挿し込む白神。
「化身!」
の掛け声で光る【魔神帯】。
《マスカレイド ウラ エンオウ》
言霊と共に、【猿王モード】に姿を変える白神。
鬼の面を着けているのは、他のモードと同じで、半面が猿の意匠で茶色だ。
防具も茶色で、三つのモードで、一番 地味だ。
両手の甲には、【猿王】の霊力が顕現した【破邪裂魔爪】が着いている。
左手の平を面に重ね、右手の人差し指で、鬼や怪人を指差すと……
「面の裏の怒りを受けてみろ!」
と叫ぶ温羅。
そして、走って男を助けようとする温羅だが、
しかし、鬼達に阻まれ、襲われている男の近くまで行けない。
「クソッ!邪魔だ!」
怪人備前焼に【破邪裂魔爪】で攻撃を加えるが、硬くて爪で刺したり引っ掻いたりしても、ダメージを与えられず、イライラしている白神。
周囲に障害物が多く、偶然 状況に合ったモードを選べていた様で、雑魚の鬼との戦闘では、弓矢や刀では無くて良かったのだが、怪人との相性が悪かった。
男の巻いている【変化帯】に、今にも【変化札】が挿れられそうだ。
パンッ!パンッ!パンッ!
「大丈夫ですか!?」
と、拳銃で男を襲っていた鬼達を撃ち、男に駆け寄る警察官が現れた。
白神の祖父から荷物を預かっていた警察官だ。
「これを使って下さい!」
と、権造から渡されていた【変化札】を男、日幡 優美子の兄、宣明に渡す。
「えっ!?(さっき目の前で変身した奴みたいに使えって事か!?)」
考える余裕も無く、【変化札】を受け取る宣明。
腰の【化身帯】に、受け取った【碧亀】の【変化札】を挿し込む宣明。
「化身!」
《ナズケ ジッコウ》
頭の中に使い方が流れ込んでくる。
最初に化身後の名前を決める必要がある様だ。
「武!」
武家の家系の日幡の人間として、最初に思い浮かんだ名前を叫ぶ。
《マスカレイド タケル ヘキキ》
言霊と共に腰の【化身帯】が眩く輝き、姿を変える宣明。
鎧武者を連想させる姿だ。
顔には、鎧武者の面の上半分に、暗い緑色の亀の頭の意匠の半面が着いている。
全身の防具も碧色で、背や肩に着いている防具は、亀の甲羅の様だ。
両手の甲には、【霊獣】の【碧亀】の霊力が顕現した、亀の甲羅に似ている【破邪碧亀盾】が着いていて、盾の内側の持ち手を握っている。
その先の部分には、水墨画の亀の毛の様に、刃が着いている。
【マスカレイド 武】の【碧亀モード】だ。
右手の拳を前に突き出し
「俺の熱い血の猛りでぶっ飛ばす!」
と、叫ぶ武。
化身後に一斉に鬼達に襲われる武だが、鉄壁の防御でビクともしない。
「おりゃ!おらおらおらおら!」
盾の先の刃で切り裂いたり、盾で殴って鬼達を全て退治していく。
そして、怪人備前焼に苦戦している温羅の所に移動すると、
「助太刀するぜ!」
と、怪人備前焼との戦闘に参加する。
温羅は爪、武は刃で切りつけるが、ほとんどダメージを与えられない。
流石は日本を代表する焼き物の一つの備前焼だ。
仕方が無いので、温羅が攻撃力を上げようと、【犬王モード】に変えようかと思っていたら、横の武がブチ切れた。
「この野郎!これでも喰らえ!」
と、両手を振り回し、盾をぶつけて攻撃する武。
ボコッ!ボコッ!ガツッ!
怪人備前焼は、ひび割れたり欠けたりして、切りつけていた時より、明らかにダメージを受けている。
「必殺!破邪乱打甲!!!」
ガッ!ガゴッ!ガガッ!ガゴッ!ガッ!ガゴンッ!
回転しながら両手の盾をぶつける武。
怪人備前焼はボッコボコだ。
武の回転が止まると、その場に仰向けに倒れ込む怪人備前焼。
そして、一枚の下位の【変化札】【陶磁器 備前焼量産】を残して、女性の姿を現す。
「うっ……」
女性は直ぐに意識を取り戻した。
「「「大丈夫ですか!?」」」
白神と宣明と宣明を助けた警察官が、人の姿に戻った女性に声を掛ける。
本職である警察官に、女性の事を任せて、白神は、二枚の【変化札】を拾う。
一枚は【陶磁器 備前焼量産】、
もう一枚は、鬼が宣明に使おうとしていた中位の【変化札】の【紺狼】だ。
「白神さんですよね?おじい様から荷物を預かってきました」
女性を介抱しながら、警察官が白神に声を掛けてきた。
「あ、ありがとうございます。このままでは危険なので、移動しましょう」
と、怪人だった女性と警察官と宣明の三人を連れて、吉備津彦命の隠れ神社に移動する白神。
「では、これがおじい様から預かった物です」
と、歩きながら荷物と封筒を白神に渡す警察官。
「助かりました」
と、白神が受け取ると、
「早く優美子の所まで案内してくれ!」
と、急かす宣明。
そんな宣明の押しの強さに、
「ふぅ……」
とため息を吐く白神だった。
新しく変身ヒーローの武が登場しました。
読んでいて解る様に、まだまだ変身する人は増えます。
武の設定を決めるのに苦労しました。
特に化身に使う【変化札】を霊獣を何にするかとか、中位の【変化札】の霊獣は、名前に色を入れようと決まっていましたが、何色にしようかとか、頭の中で、かなり試行錯誤して、霊獣を亀にする事が決まっても、色は投稿直前で、紺から碧に変えると言う感じで、ギリギリまで決まり切りませんでした。
頑張りました。