第三話 雉王モードとデニム生地
昭和臭からの脱却!
「さて、日幡さんは聞いてないし、自己紹介するわね……」
「私は、吉備津彦命様の神託を受ける巫女の神宝 咲希よ。よろしくね」
「あ、はい。宜しくお願いします」
と、白神。
「はい……私は……日幡と…言います……」
と、元気無く応える日幡。
「どうしたの?日幡さん?」
神宝は、日幡の元気が無い事に心配する。
「私 ココに居ても良いのかなって……怪人になって暴れていたし……」
日幡は自分が部外者だと思って場違いな気がしている様だ。
「良いのよ。あなたは適性者だから、ここから出ると狙われるわ」
神宝が日幡の身が危険な事を告げる。
「あ、そうだよね。また鬼達に怪人にされてしまうよね」
納得する白神。
「ここは、吉備津彦命様の加護の中に在るから、魔族は入って来れないのよ」
と、この神社の中が安全である事を告げる神宝。
「で、あの鬼達は、魔界から異界の門を抜けて現れた魔族なの」
「あの真っ黒い鬼達は、魔族でも低級な鬼の餓鬼だと思う」
鬼達の正体を告げる神宝。
「そして、適性の有る人間を魔族に変えてしまうのが、【変化帯】で、その中でも最上位の物が、【魔神帯】と呼ばれているの」
「あなたが身に着けたベルトがそうよ」
と、【変化帯】と白神が化身に使った【魔神帯】の説明を神宝はした。
「適性の有る人間を魔族に変えるには、【変化帯】だけでは足りないの」
「一緒に【変化札】も必要なのよ」
「あなたが怪人に変えられた時のこれね」
と、日幡を見ながら、日幡が怪人から人間に戻った時に回収した【備前刀】の【変化札】を出して見せる。
「そうなんです。腰にベルトを巻かれて、それをベルトに挿されたら……」
と、魔族に変えられた時の説明をする日幡。
「でも、これも吉備津彦命様の神聖な霊力で清めると、聖なる力を行使出来る【変化札】に変わるのよ」
と、神社の中の聖なる光が降り注いでいる所に、【備前刀】の【変化札】を置く神宝。
禍々しい力を発していたカードが、
『ウォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!』
と、うめき声をあげながら、聖なる力を発するカードに変わって行く。
「これで半日も置けば浄化されるわ」
と、神宝は説明する。
「で、白神君が化身したモノだけど……」
と、神宝は白神を見る。
「はい。あれは何なんでしょうか?」
と、白神。
「あなたの祖先の鬼神 温羅の力と、犬王様の霊力が化身させたモノよ」
神宝は、白神が化身したモノの説明をする。
「温羅と犬王様ですか……」
と、白神。
「ええ、言霊を聴いていたら【マスカレイド 温羅】と言う名前みたいね」
「それの犬王モードみたいよ」
と、化身後の名前を告げる神宝。
「はい。そうみたいです。化身すると、変化後の名前や力の使い方が解りました」
と、説明する白神。
「そして、さっき渡した2枚の【変化札】は、猿王様と雉王様の霊力で化身して、それぞれのモードに姿を変えられる筈よ」
と、神宝。
「猿王…雉王……」
2枚の【変化札】を見詰めながら呟く白神。
「でね。ここからが一番大事!」
と、力を込めて話し出す神宝。
「あなたのその格好は何なの!?」
「昭和の時代から来たの?何なの?ダサ過ぎ!」
「私がコーディネートするから着替えて!命令よ!一緒に歩けないからっ!」
叫ぶ様に白神に告げる神宝。
そして、その言葉を聞いて、「うんうん」と頷く日幡。
「えーーーーーーーーっ!!!!!」
と、驚愕する白神だが、そのまま裏に連れて行かれる。
三十分程 日幡が待っていると……
「はぁ……取り敢えず、これで良いわ……」
と、ため息を吐きながら現れる神宝。
「こんなので良いんですか?」
おどおどしながら白神も現れる。
「そうよ。あなた 素材としては良いんだから、ジーンズと白いシャツと、その上着で合わせたら、それだけで絵になるのよ……」
と、白神を見て、少し恥ずかしそうにする神宝。
「さ、ここに居ても事態は良くならないから、少しでも魔族を退治に行くわよ」
「日幡さんは、ここで待っててね」
と、手に薙刀を持ち、白神と日幡に告げる神宝。
「あ、了解」
と、白神。
「解りました。お世話になります…」
と、日幡。
神社の結界領域から出ると、直ぐに真っ黒な姿の鬼達に遭遇する。
「数が多いわね。今度は雉王様の【変化札】で化身して!」
薙刀で鬼達を斬り倒しながら、白神にアドバイスする神宝。
「おう!解った!」
と、【魔神帯】を腰に巻いて、バックルの真ん中に【雉王】の【変化札】を挿し込む白神。
「化身!」
その叫び声と共に、神々しい光をバックルから放って化身する白神。
《マスカレイド ウラ チオウ》
言霊が発せられ姿を変える。
その姿は、黒を基調としたのは、犬王モードと同じであり、ライオンの様な髪が逆だっているのも同じで、両耳の上の角の形状も同じだが、
鬼の面の上に、赤い鳥の顔を連想させる半面を顔の上半分に着け、下半分は鬼の口を思わせる面が見えている。
胸当ては、緑色。小手や肩や背中の防具は白地に茶色の小さな羽が描かれており、犬王モードより、かなり派手だ。
左手には白地に所々茶色い雉の翼を連想させる弓、【破邪雉翼弓】を持っている。
背中には沢山の十本程の矢(【破邪嘴穿矢】)の入った白地に茶の小さな羽の描かれた矢筒を背負っている。
雉王モードだ。
左手を面の所に持って行き、右手は鬼の群れに向かって指差す。
「面の裏の怒りを受けてみろ!」
温羅は、矢を一度に三本番えると、鬼に向けて発射!
矢は意思を持つかの様に、三本全部 鬼の額に命中して、そのまま突き抜けると、更に三体の鬼の額を撃ち抜く。
そうしている間にも、温羅は次の三体の矢を番え、更に撃ち出す。
最初の三本は、既に九体の鬼の額を撃ち抜いていた。
二射目も三本の矢 全てが、鬼の額を撃ち抜いて行く。
最初の三本は、ブーメランの様にまた戻って来て、鬼の額を撃ち抜いていた。
そうして、三度 矢を三本 発射しただけで、何十と暴れまわっていた鬼達は、全て討伐された。
発射された九本の矢は、全ての鬼達の額を撃ち抜くと、自ら矢筒へと戻って来た。
「自動追尾するし、貫通して何体も倒して、リサイクルされるって、凄まじい能力の矢だな……」
「しかも、能力を僅かかしか使ってないしな……」
と、その威力に呆れる白神。
「雑魚の低級な魔族の鬼だしね。雉王様のお力は、多数の敵に対して、凄く効果的なのよ」
と、説明する神宝。
そこに、他の鬼とは明らかに違う魔族が現れた。
「デニムを纏った怪人かよ!」
思わずツッコミを入れる白神。
「そうみたいね。あなたみたいよね」
と、呆れる神宝。
「デニム大好きなオレには、最悪な相手だな……」
悲壮感 漂う呟きをする白神。
「さて、こんな気分の悪くなる奴は、さっさと倒して……」
と、矢を番えて放つ白神だが……
ドスッ
「えっ?マジかよ!?深く刺さらない!?」
驚く白神。
「あーーー…… デニム生地は破れにくくて、切断にも強いからね……」
と、呟く神宝。
「困ったな……ギャグかと思ってたら、意外と強いじゃん……」
敵の強さに困惑の白神だった。
雑魚には無双した雉王モードですが、デニム生地の強さには完敗の様子です。
流石 岡山のデニムです。
デニム生地の服を買うなら、岡山の物をどうぞ。