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! 彼は驚いていた、初めて見た時は少し怒りの表情が見えたが、今はどうだろう?明確な殺意、何らかのただならぬ意志を持っている顔が見えた
"スライムとはいえこいつもモンスター"
このような考えが頭をよぎった
モンスターであることに変わりはないのだ
見よ!生などは今捨てたと言わんばかりの顔を
見よ!小さき体ながら全身から醸し出す殺意を
彼の驚きが戸惑いへと変わった
考える、この棒で勝てるのか?
考える、そもそもこの棒で一撃をくらわした所で分裂しだすんじゃないかと、あのゼリーのような体に打撃がはたして有効なのかと
彼は少しずつ焦っていた、考えてるこの瞬間にいきなり襲いかかってこないかと
一度嫌な事を考えるとそれが正しいと言わんばかりに押し寄せてくるではないか!負の感情が!
しかし彼はこらえた!押し寄せてくる不安をなんとか踏みこらえたのだ!
この時、彼を踏みとどまらせた言葉があったのだ
"ゼリーに私が負けるのか?"
そう、これだ!この言葉が思い出てくるやいなや
なんとか彼は踏みこらえた
"ゼリーに負けるわけがない"という考えが上回ったのだ
"危なかった"彼はそう思っていた
しかし、スライムの殺意の目を見ると彼は(この戦いは長引きそうだ)と感じていた
この戦いはまだ始まってすらいないのだ!
なのに私は引きずりこまれそうになったではないか、彼のスライムに対する格下という判断が消えた瞬間でもあった
スライムは恋人のことを考えていた
次はいつ会えるのだろうか?次の待ち合わせも何もしてないのに気付き、この人間に対する殺意が増す
次も会うとするなら、この場所しかないだろう
この考えが危険なことは分かっていた
強いモンスターがいる中、この場所にずっと滞在するのは自殺行為だと
しかしそれしか彼女と会う方法が無いことも分かっていた
次の待ち合わせ場所を決めることなく、触れることなく彼女は去っていったからだ!この人間のせいで
今の状況を整理していくと、どんどん冷静になっていく
"そもそもこの人間に勝てるのか"と
もしかすると私は今日で最後なのかもしれない
この考えが嫌でも浮かんで離れない
彼は自分がただのスライムとして終わるのが嫌だった
彼は小さな頃から夢を見ていた、スライムの王として、この世界の頂点に君臨する自分の姿を
この夢が自分から離れることはなかった
だから遠ざけた
ひたすら同じスライムの仲間の中に入り、安心を枕にして寝た
だから遠ざけた
他のモンスターからは逃げ、隠れ、その自分の姿から"一体どうやったらお前は王になれると思ったのか"と現実を背に
だから遠ざけた
あらゆる全ての栄光がお前を横切って通っていくと
その空想を追い求める全てが、お前の生を亡き者にすると
彼は今ここで過去と決別しようとしていた
このまま小さな頃からの夢を、巨大な現実に、種としてあらがえない現状に目を背けるのをやめた