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菊一文字参る

常山高男


年齢36歳

職業 富岡市役所水道局 水道保全課主任

独身(彼女いない歷10年)

趣味 家庭菜園 スナック通い

「よし、助けよう」

常さんはそう言うと剣先スコップを握りしめた。

「今宵の虎鉄は血に餓えておる」

「いやいや近藤勇さん、そりゃ刀じゃなくてスコップですけどー」


なんて、軽口を言いつつオレはバールを構える。


「菊一文字がまいる!」


「総司!そりゃバールだ!」

何て言いながらオレたちは階段を駆けおりる。


カッパのような頭をしたガリガリオタク男はこっちに気づかず逃げまくっている。


「やめて~」

「なあああにぃ!!怒ってないよお!」


情けない悲鳴をあげている。そのすぐ後ろには壊れたテープレコーダーのようなリプレイを繰り返す女Biter。

ブラウンカラーの髪を振り乱す女Biterは20代の前半くらいか。

ノンスリーブの白いシャツはこの季節にしては早い気がする。

白いシャツ、白い腕はどす黒い血で濡れていた。


「やめやめやめてー明美ちゃん!ごめん、もう知らないなんて言わない。愛してるから!」

あんな大声出してたら他にも寄って来ちゃうだろバカ!


常さんは「バカが」

とだけ呟いてぽっこりお腹を震わせて、女Biterに向かって走る。

オレも負けじと菊一文字(バール)を握りしめて走る。

幸い閑静な住宅街の中、オンボロアパートの周辺には人気はない。


カッパ男がつまずき姿勢を崩した瞬間


「ちええええすとぉー!」


常さんが振りかぶりスコップを投げる。しかし、それは示現流だよ常さん。

あんた近藤勇さんじゃなかったのかよ。

もはや時代考証なんぞなんでもいいのだが、ムダに頭が冴えていた。


常さんの剣先スコップ(虎鉄)は女Biterの背中を突き刺した。やせ形Biterは「ぐぇ」と喉を鳴らし地面に突っ伏した。


「…大丈夫か」

息を切らしながら常さんはカッパ男に手を差しのべる。


「ひひひひ!ひとごろし!」

なんかつい2日前の自分を棚にあげて、無性にムカついた。

カッパのようにてっぺんはハゲていて、チェックのシャツをジーパンの中に入れている。


「ななななんでで、明美ちゃんをこここころしたんだ!!ぼぼぼくの太陽だったのににに!」

唾を撒き散らしながら、涙ながらに言う。


なんだこのカッパ。


Biterから逃げ回っていたところを助けたのにその言いぐさ。ムカつく。


「お前なあ!」


常さんも同じことを思っているであろう。青筋たてている。


すぐ後ろの女の死骸がぴくりと動いた気がした。




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