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連休明けの火曜日

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よろしくお願いいたします。

4月3日(火) 9:00

今日は連休明けの火曜日。


30代の独身のオッサンが二人っきりで朝から晩まで部屋に閉じ籠りっきりなんて、絵にならないよな。なろう小説にだって無い設定だな(需要が)


仕事人間はまんまと外に出てやつらの仲間入りをはたしているのだろうか。オレは今日は休みだ。といっても会社がまだ存在するかどうか。


公務員であるハズの常さんは仕事にも行かず、朝から晩までおんなじことしか言わないラジオのチャンネルを回しながら聞き耳をたてている。

常さん曰く同じことを言っていても、昨日と今日では録音されたであろう音声が違うらしいということだ。


若い女性の声なんだけど、

「喋ってるのはたぶん同一人物だ。だけど、微妙に違うんだよ。音声が。たぶん、ほぼ毎日録音しなおしている。まあ聞き始めてまだ3日だけどな」

常さんは一人で首をかしげてはなにかを考えているようだった。


オレはこのとき、このオッサンは童貞を拗らせすぎて、ラジオの女の人の声に妄想と股間をふくらませてるのか、マジでキモいな。と思ったが命が大事だから言わない。

オトナなのだ。


この世界で生きているのはネットの世界だけだ。




おかしなことに、SNSでも「ゾンビ」だとか「リビングデッド」だとか言うキーワードがあるとUPできないし、サーチかけても出てこない。

GoogloでもYahhou!でも検索できない。


「おそらくこの国の政治が情報の錯綜による混乱を避けるために、キーワードの情報統制をかけているのだろう」

と常さん。


しかし、ムダなことを。と思う。

伏せ字、隠語、略語、新語、暗号、3ch語…

ネットでの会話なんて普段からインターネットスラングだらけである。すぐいろんな名前がつけられた。


代表的なのは“Biter”だ。

噛む-の動詞。世界的に広くこの言葉が広がった。

(ここでは暫定的に以後Biterと呼ぶことにする)



SAAEの感染が爆発的に拡大するなかで情報に飢えた生き残りたちはこぞってネットの世界に入り込んだようだ。

避難所の開設情報やどこそこで物資を配っているだとか、情報が共有されているが、実際に「行ってみた」「物資を受け取った」などという人はいないので、たぶん噂にすぎないのだろうな。



4月3日 11:30

春の柔らかな太陽はもうすぐ頂点に達しようとしている。


「助けてくれ~!」

ほら、今日もどこかで…

男の悲痛な声が静かな住宅街に響く。


「なあああにってば、怒ってないよおぉぉう」


あきらかに正常ではない甲高い女の声があとに続く。

あれはBiter?じゃない?


感染したBiterが喋れるなんてネットにも書かれていないぞ。てことは追いかけてるのも人間?

常さんも気づいたのであろう、オレと同じくびくりと反応する。


「ちょっと見てみよう」

常さんは立ち上がった。


オレたちはそ~っと扉を明け…

外を覗きこみ周囲の安全を確認する。


先日殺したリーマンBiterの血痕がある以外は安全なようだ。

ひんやりとした空気。


春の花の香りと同時に腐臭が鼻につく。

階段下へと蹴り落としたリーマンBiterの死骸から漂う腐臭だ。


「やめて、違うんだよ!人違いだー!」


「なあああにってば、怒ってないよおぉぉう」


逃げる男と追う女。

女の眼はあきらかに白濁しており、ノンスリーブの肩口が大きく抉られ、ぶらりと右腕がぶら下がってる。


オレは驚いた。

「しゃべるBiter?」

「はじめてだな」


必死になって逃げる男をBiterであろう女は必死になって追いかける。

男はガリガリの某お笑いコンビのように、あか抜けない。上のボタンまでしっかりとめたチェックのシャツにジーンズ。

「オレはおまえなんて知らない!知らないってばー!」


「なあああにってば、怒ってないよおぉぉう」


「こりゃ人違いだ」

「あんなオタクっぽい男が女に追いかけられるハズがない」


「よし、助けよう」

常さんはそう言うと剣先スコップを握りしめた。

「今宵の虎鉄は血に餓えておる」

「いやいや近藤勇さん、そりゃ刀じゃなくてスコップですけどー」

なんて、軽口を言いつつオレはバールを構える。

「菊一文字がまいる!」









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