ヒトが天敵を持ったら
温暖で湿潤な地球の大地は生物を生み出し、爆発的な勢いでその個体種を増やした。生物は食物連鎖を繰り返しながら、お互いに共依存関係を築いて進化の歴史を辿った。
ヒト以外は。
ヒトは、地球によるほんの瞬きの間に他の生物を一気に駆逐した。
のみならず、およそ消費しきれぬであろう富の確保と蓄積のためだけを目的に、膨大な数の同種を殺戮した。また地球上の生物を完全に消し去っても余りあるだけの、滅殺のみを目的とした道具をも作り出したのはご存じの通りである。
では、ヒトはなぜここまで爆発的に増えてしまったのか。
それは、“天敵がいなかった(・・・・)から”である。
4月2日(日) 14時
どうしよう
どうしよう
どうしよう
どうしよう
どうしよう
どうしよう
…。
目の前でリーマンがオバハンに噛みつかれてた。しかもあんなに血を大量に流して。
そうだ!
見なかったことにしよう。
…そんなこと、できるか!!
今どきの10代ならいざ知らず(偏見)そんなことはオレにはできない。
これでも助け合いの精神を持つ努力・友情・勝利の昭和生まれのジャンプ世代だ。
…助けよう!
そして病院にでも連れていこう…。病気がどうたらで「病院にいくな」ってニュースでやってたけど、噛みつかれてケガなら外科だから大丈夫だよな。
ガチャっ、ドアをそーっと開けてみる。
恐る恐る…一階を見下ろしてみると、そこには血まみれのリーマンが
いない。
血だまりはあるけど
いない。
オバハンもいない。
思ったよりケガは軽かったのかな?
リーマンは自分であるいて病院にいったのかな?
オバハンは逮捕されたのかな?
そうだ。そうに違いないのさ。
そう思うことにしよう。
さっきの決意と矛盾した気がするけど。
とふと服を掴まれた気がして振り替えると
そこにはリーマンがいた。
目は白濁として首筋は噛みちぎられて肉と骨が露出している。
「だ、だいじょうぶ…じゃないですよね」
と言った瞬間、彼は大きな口を開けオレに噛みついてきた。
うわっ!!!
咄嗟にオレはリーマンを突き飛ばした。
すると彼はふわりと後ろに転倒し、ガン!!と、アパートの手すりに強く頭を打ち付けた。
「だだだだいじょうぶ…じゃないですよね」
明らかに…。
声をかけようと近づくと男の白濁とした目がこちらにギョロっと向き、差しのべた手に思いっきり噛みつかれ…
うわっ!!
手を咄嗟に引いたのがよかった。
ガチン!!と男の顎が音をたてる。
うわうわうわ!!なんだ!なんだ!
オレはオバハンじゃないよ!なんで!?助けようとしたのに。
「ちょっ、待った!待った!」
男は次こそはと、変な方向に曲がった首を器用に動かしながら、口から涎をだらしなく垂らしこちらに向かっている。
あっという間に隅っこに追い詰められた。アパートのふきっさらしの廊下の端っこ。錆び付いた手すり。目の前は、白目の涎をたらしたリーマン!
「がぁあ」
と呻きながらオレに思いっきり噛みつこうと口をめいいっぱい開け黄色い歯をむき出しにした。
噛まれる!!オレは咄嗟に、目を閉じてしまった。
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