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助けに行くよ!深キョン!

「えーと、その、もう一人乗員が増えます」

「「え?!」」

カッパと常さんが声をあわせる。


「てめー!ふざけてんのか!なに黙ってきめてんだよ!」

後部座席から常さんが首を絞める。

「くくく、苦しい!!すすすすみません!とと、とりあえず離して。死ぬ!!」

常さんが手を離す。

げふげふ!!

「黙っていて…すみません(泣)だって、だって、助けてくれって言われたので…」

「助けてって言われたら、なんでも助けるんですか?!」

「「てめーは人のこと言えるかよ!」」

カッパがストーキング相手から襲われかけたところを助けたのはオレ達だ。お前に言われる筋合いはない!!のだ。


「で、どんなヤローだ」

「深キョンです」

「「へ?」」



オレはカナカナといわれる奴のことを話した。

独り暮らしで、Biterが家の前をうろうろしてて、出られないこと。

食べものが底をつきてしまって飢えていること。


…を話した。ここまで話をしても二人は

「そんな奴はどこにでもいるだろ」「いちいち助けてたらキリがないですよ」

…と食いつきが鈍い。


そしてオレは、奴が28歳の女性だということ。深キョン似だということ。スリーサイズも教えてもらったこと(包み隠さず二人教えましたとも)。そして「なんでもします」といわれたこと。

…を言うと


「し、しょーがねえなあ!今回ばかりは助けてやるとするか?う、う飢え死されても寝覚めが悪いしよお」

「たたた、旅はみ、みみみちづれですからね!」

「あ、まあ、これから共同生活をするわけだしよ。その、だ、だだれに惚れても恨みっこなしだぜ」

「ぼぼぼぼぼくも、ととと、年が一番近いでですしね!」

「ば、バカヤロー!大人の魅力にはか、かてない!」


二人の目が豹変した。

…なぜかまだ会ってもない女を頭のなかで妄想を膨らませて、奪い合う童貞臭まるだしの二人にドン引きをする憲和だった。

だが、自分自身がそのひとりだということもいまだに気づかない

「なんでもしてくれるって、頼んだらメールアドレスや電話番号教えてくれたりするんかな…」

崩壊した人類社会においても、童貞臭まるだしで小市民な連中であった (ナレーション)



NAME【ノリノリ】

カナカナちゃん。今、オレの(・・)ロンクルで向かってる。

30分くらいで到着できる。出られるように待っててくれ。

ちなみにオレは堂本コウイチに似てるってよく言われる。

あと、同乗者が二人いる。稲垣ゴロオと甕梨和也を想像してもらったらいいと思う。…と本人たちは


…ほんとかよ!!

アタシはスマホにむかって思わず突っ込んでしまった。

どんだけゲタ履かせてるのか、めっちゃ気になる。ヤンキーみたいな人じゃなきゃいいな。ちゃんとご飯分けてくれるかな。




429号を走り富島町に入る。海岸線をのぞむ二車線の道路には沿道サービスの店舗がならぶ。

本来ならばゴールデンウィーク。たくさんの人で賑わっていたであろう海辺のカフェも、かつては店長と客だったであろうBiterがよだれを垂らしながらこっちを虚ろな目で見ている。


目の前の多島美を眺めるようにたてられた3階建てのビルが見えてきた。“HairSaloon MAKI”の看板が見えてきた。

「あ、マキ美容院だ」

カッパが言った。

アルファベットばかりで見失うとこだったなんて言えない…

。営業の鉄則①知らないことは「知らない」と口にしない だ。


「あれ?もしかしてノリさん英語は読めなかった?」

“ボコッ”「うげっ」

オレは無言でカッパの脇腹を殴った。

営業の鉄則②不用意に相手の失敗を指摘しない だ。


一階はテナント。二階三階は賃貸マンションのようだ。


カナカナちゃんの住まいは三階。一番奥だと聞いた。

一階にはフラフラと動く若い(かったであろう)男のBiterが数人うろうろと動いていた。

ひとりは腹部をひどく損傷しており大腸をだらしなくぶらさげている。

ひとりは下顎を損失し、ひとりは右の二の腕の途中から食いちぎられている。

おそらくひと月ほど前にはなにかしらのパニックが起こったのだろう。ことが想像できた。よくこんな状態でカナカナちゃんは生き残ったのだなと感心する。


「さあて、深キョンを助けに行きますか!」

「「おう!」」


常さんは車に寄ってきたアゴなしの喉に剣先スコップを突っ込んだ。






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