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【番外編】親父が死にました

父が死んだ。


4月20日(金)某所


避難生活を初めてまだ半月。国はいったい何やってるんだ。しかもあのミミズはなんなんだ。

ちょっと、ふれるだけで知らない間に卵を産み付けられていて、あっというまに身体中に化け物ミミズびっしりだ。

こんな変な生き物は初めてだ。


だからよ、オレはぶっ殺した。親父を。前からムカついてたんだ。成績のいい姉ちゃんばっかり贔屓して、オレには勉強しろ!って怒鳴ってばっか。


あのクソ親父が酔っぱらって帰ってきたと思ったら、だらしなく開いた口からミミズが動いてるのが見えた。


わけのわからないことをしゃべってたけど、近くの親父のアイアンでぶん殴った。アイアンがひん曲がってもまだ生きてた。頭から血がびゅーびゅー吹き出してたのに、平気な顔してまだ生きてた。

次はドライバー、その次はウッドで。精一杯ぶん殴った。気がついたら奴の体はオレの足元でひざまづいて動かなくなってきた。


むしろスカッとしたよ。

前々から憎くて憎くてたまらなかったからね。


死ぬ間際に「ユキオ」ってオレの名前を呼んだ気がしたけたど…気のせいだ。


親父が玄関に垂れ流した血を眺めながら、親父に怒鳴られた日々を思いだし、またムカムカして、動かなくなったそいつの頭を蹴った。


それから数日死体が玄関に転がっていたが、夜中に動き出すんだ。動き出してオレの顔をじーっと見ている。


またある日は、ずり…ずりと足を引きずりながら脳みそを垂れ流しながらリビングを歩いている。


オレはベッドから飛び起きて、子どもの頃親父にねだって買ってもらったバットを振り回すんだ。そいつ(・・・)はいつの間にか消えて、またいつもの玄関に転がっている。




オレは約6年間まったく外に出なかった。小学生時代から勉強ができたオレは私立中学に進学し、陰湿ないじめを受けてから一歩も外に出られなくなった。

靴を履いて玄関まで出ようと思っても足がガクガク震えて、脂汗が垂れ、一気に吐き気がする。胃から酸っぱいものが込み上げてくる。


そんなオレを見て親父はいつも

「軟弱者」

だと言っていた。

姉ちゃんは庇ってくれていたが、それが余計にオレには耐えられなかった。暴れまわって家中の物を壊し、自分の部屋に引きこもった。



今日オレは外に出ようと思った。死んだ親父が毎晩枕元にこられちゃたまらない。

頭のつぶれた死体の脇を通り靴を履く。


靴を履いただけで、動悸は激しくなり、息ができなくなる。吐きそうになる。

オレは目を思いっきり閉じて、そっとドアノブを回した。

4月だというのに冷たい風と焦げ臭い臭いが鼻につく。久しぶりに出た外の世界はまさに地獄だった。


道路向かいの田んぼは数年のうちに4棟ほどの住宅へと変わっていた。

住宅へはなぜかパトカーが突っ込んで丸焦げになっていた。小さな子どもがいたのだろうか。小さなのおもちゃの消防車がパトカーに踏み潰されて転がっていた。


首と手がおかしな方向に向いた女の人が二階からじっとこちらを見ている。

首のない赤ん坊を抱いて。


「おぅぇ!!・・・うぅぇぇっ!!」


オレは胃の内容物を玄関先に吐き出した。

酸っぱい胃液の臭いと焦げくさい臭いがまじわって、また吐き気をおぼえる。


しばらくして、はっと気がつき本来の目的を思いだした。

死体を捨てなきゃ。

両足を持ち、ずりずりと引っ張る。

水気を失った粘り気の強い血のりがべったりと尾を引く。


庭先の田んぼに死体を投げ入れる。ほっとした。これで夜、安心して眠れる。


“バン!!”


“バンバン!!”

パトカーの中から顔が半分崩れた警察官?の男がフロントガラスに頭を打ち付けている。

真っ黒な眼孔はオレにまっすぐ向いている。

“バン!!バンバン!!”


「うっ!」

と後退りしたが、は車から出られないみたいだ。感染したまま民家に突っ込んで閉じ込められてしまったんだろうか。




その時、





“ガシャン!!!”

黒い何かが落ちてきたような音がした。


二階にいた女だった。自らの立ち居地もわからぬかのように、勢いよく窓から転落していった。

黒い固まりにみえたのは、焼け焦げた顔とそれを覆い隠すように振り乱した髪だった。


女は車のボンネットに勢いよく落ち、おかしな方向に脚が折れ曲がったまま、ぬらっと立ちあがり、手だけを前に出し宙をつかもうとするかのように折れ曲がったまま!腕をあげる。


「うぅぅ…まや…ひわや2,たねさ…pd」


苦しそうに声とも悶えともとれぬ音を口から発しながら女は一直線でオレにむかって右脚を引きずりなら前に進む。


「うわっ!!うわ!」


オレは後退りながら家の扉を閉める。震える手でガチャガチャと鍵をしめて血のりの上にしゃがみこんだ。

血のりには糸ミミズのようなものがうにょうにょと動き、オレの手にまとわりついてくる。


「うわっ!!わわわ!」

急いでミミズを払いのけ、台所で手を洗う。


塩素系漂白剤を玄関にぶちまけて血のりを洗い流すと苦しそうに悶えながら糸ミミズは消えた。


「死んだ?よかった…」

思わず言葉が出た。


その時

「バン!!バンバンバンバン!バンバン!!!」

ドアが外から勢いよく叩かれた。


「うわっ!!わわわ!」


オレはまたしりもちをついた。













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