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とある水上機達のお仕事

インド洋上に単独で進む商船がいた。白い航跡を曳き、黒いインド洋を進む。単独航行はたまに見かけるが見つかれば死を意味する。敵には美味しい獲物。

その上を黒い影が通った。上を見る乗員達、急遽付けられた砲塔や機銃が動きだして影に振り向けられるが影はそれより早く側面に付けられた機関砲が火を吹き、あちこちが穴だらけになる。

さらに影が商船の周りを旋回するように飛びながら武装やアンテナを破壊すると信号を送り始める。


ー停戦せよ停戦せよー


商船が白旗を出して止まるのは数分後のこと。その横に影、大型水上機二式大艇が着水しつつ乗員が騒いでいた。


「止まれー!止まれー!」

「ボスー!ゴムボート出しますよー?」

「変なことしたら沈めんかんなー!」


陽気(?)な連中はそのまま船を乗っ取ると積み荷を確認して無線を打った。


「仕事だ出てこい」



とある小島の海岸でビーチにパラソルとビーチチェアの上で優雅に昼寝するパイロットの姿。それはゲームしに来たのではなくバカンスをしに来た感じに見えるその隣を整備員が通りすぎて海水が入ったバケツを汲んで戻る。


「おい」


反応がない。バカンス真っ最中のようだ。


無言で海水をぶちまけるとパイロットは跳ね起きた。


「おわっ!冷たっ!」

「起きたか。仕事だ」

「…あ?」

「仕事だ」


冷酷な目線で彼を睨みながら仕事に行けと言う整備員。

その絵図は寝るだけのダメ父親を働かせに行く母親の構図だ。

目が覚めたパイロットはぶちぶち言いながらスロープに向かう。


「せっかく寝てたってのに何でゲームでも仕事で起こされなきゃならないんだよ…」

「はい、機体の整備費用を稼ぐ為ですよ~と。今日は瑞雲で行きますからね~」


機上員が文句を言うパイロットを説き伏せて台車に乗っている瑞雲を海面に下ろして行く。


「今回はお仲間の後処理です。捕獲した商船の護衛になります」


返事はしないで機体によじ登りエンジンを始動すると機上員が慌てて機体に乗り込む。


「また人が乗り込む前に起動して!自分だけで行けると思っているんですか!」

「えー?乗ってると思ったんだよー?」


スロットルをふかしながら海を叩いて機体が空へ浮かび上がる。


「奴らからの伝言だ。しっかり仕事しろよ。だそうだ」

「目的地は?」

「シンガポール。そこで売却予定だ。しっかり稼いでこい‼ 」

「了解。母さん!」

「誰が母さんじゃー!」


怒り狂う整備員の声を聞きたくないのでOFFにしてシンガポールまで飛ぶ。そこで補給後に商船を目指す。


「補給したら即飛びますからね!」

「無駄足はしないよ。爆弾も無いのにさ~」

「機銃は有りますよね?」

「たかがM2の4丁で何をしろと?」

「例えば~何か?」


無事にシンガポールを経由して拿捕された商船にたどり着く。


「これが目標?」

「そうですよ。ほら手を振ってくれてるじゃないですか」


拿捕する要員がこちらを歓迎してくれていた。対空砲火では無いのでスゴくありがたい。


「合流したらしたでお仕事無いんですね」

「そりゃ処分するための艦艇を派遣しなければならないけどどこも余裕無いだろ?」

「保険ですか?」

「当然保険。しっかり着けば大金だ。いい値が付くぞ」


世の中保険。たらればで途中で巡洋艦とかに遭遇したらどうなるか、せっかくの金鶴を失ってしまう。仲間というくらいの信頼関係がある人にある程度の金で護衛してもらうもこのVR、当たり前にある事であるがなんとも世知辛い。


日中にぐるぐると回って敵がいないのを見る日にちを送る数日、目標を視認した。


「あれ、どう思う?」

「仮装数割、商船5割ですかね」

「敵?」

「敵ですよ。あの旗はうちら水上機連合の敵ですよ」

「なんでここに?」

「シンガポールって中立海上都市なんですよね」

「知ってる」


シンガポールは取り取られをすると東南アジアの情勢がコロコロ変わる場所なので運営が優しく中立都市にしてくれた。他にもスエズやパナマも同じ扱いであり、パナマ運河を破壊するともれなく犯罪者として世界に触れ出される。

パナマ運河上にいた敵を撃沈したとあるチームはパナマ運河を管理する政府より宣戦布告と懸賞金をかけられて壊滅に陥った。沈んだ船を回収するまでの間、パナマ運河は使用不能になったのだからその怒りは凄まじいものだったらしい


「で、あれはアフリカ大陸への補給かと」

「普通は船団とな空母使わない?」

「貴重なんでしょう。それか平和ボケかのどっちかです」


そこまで言いながら二人揃って右を見て、左を見て、上を見た。見た感じ、敵は居ない。なので多分敵は居ない。


「居るかー?」

「居ませんねぇ」


安全装置を解除して高度を気休めながらに上げる。二人して見たのなら敵機は居ない!(ここ重要)


「では…」

「行きましょう!」


反転して海に突っ込み、ダイブブレーキを展開。下の船は慌てるが無視して高度計を読み上げる声に聞いていた。


「…500!」


爆弾を投下し、機体を上昇。後ろから「命中!」の声を聞きながら機体を上昇させた。高度が3000を示すと下を見る。船は煙を吹き出し傾き始め、乗員は逃げ出していた。6番2つでも商船には大被害だったみたいだ。


「帰るよー」

「進路は90度違う方向で行ってから曲げましょう」

「怒りの攻撃か」

「有っても可笑しくありませんよ」


無事帰ると攻撃をしたことを報告。船の連中は大喜びをした。日頃入らない情報が来て敵勢力の船を撃沈してくれたのだ。喜ばない訳がない。

その後もつつがなく、何もない航海を終えて無事にシンガポールへ入港した。


「ボスから連絡だ。厄介な獲物が出たから対処しろと」

「どこよ?」


あの連中が使う機体は24時間飛行が出来るヤバい代物。適当に頷くと喜望峰を越えかねない。(前に頷いたら昨日はインド洋、明後日は太平洋マリアナ海域のお仕事を押し付けられた)


「えーと…喜望峰を越えて…」

「南アフリカを過ぎたら追加じゃねえよ!せめてジャカルタとかあるだろ!」

「えーだってボスがあいつなら適当に燃料を手に入れて来るだろうって言ってたしさー」


こいつら人をなんだと思っているんだ‼俺は急に現れる便利屋じゃねぇ!


内心で叫びながらため息をつく


「いいか?瑞雲は1400海里しか飛べん。増漕を着けても200海里追加だぞ!」

「なんだそれしか跳べないんだ」


真顔で言われて殴らなかった俺を誉めて欲しい。


「単発と4発を比べるなよ」


一応、お客様みたいな連中だからのろま鯨とは付けてやらなかっただけの分別はある。


「それに2人以上も運べないなんて役にたたないよねー」

「全くだ。疲れたら交代して昼寝も出来るのにさー」


なるほど、よっぽど運んで欲しいらしい。怒りに染まった自分は悪くない。気づいたら必死に止めてる機上員。お前も手伝えよ縛り上げたこの馬鹿共でお届け爆撃訓練出来るじゃねぇか。


「だ、誰か助けて!」

「俺は悪くないんだ~!」

「お助けを~!」

「うるせーなー運んでやるんだよ文句言うなよ」


5人まとめて縛り上げた塊をジャッキーに乗せて瑞雲の下に向かう。


「あの~本気で運ぶんですか?」

「本気だ本気!アンダマン経由でスリランカまで運んでやるよ!」

「ガス代とかはどうするんですか?結構使いますし」

「奴ら宛に請求だ!」


出発前に撮った写真を奴当てに郵送(メッセージ機能)すると出発後に連絡が来た。


ーコタバルにて受け取るー


彼らの運命は定かではない


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