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聞き込み

ハルとフランチェスカは、事件の起きた民家の直近の民家に辿り着く。

事件の起きた民家は、そこからだと豆粒ほどに見える。

また周囲には草木や街路樹が茂っていた。


ハルが玄関をノックする。

しばらく待ったが、誰も出てくる様子は無かった。


「留守……では無いようだな」


「そうみたいですね」


その民家もまた、少し荒れていた。

今はもう誰も住んでいないようだ。


ハルは試しにドアノブを回してみる。

こちらの民家はしっかりと施錠されていた。


「うーん。あの家を視認できる距離の民家はもうここしか無い。もう少し先まで行けばもっと民家はあるだろうが」


「どうしますか?」


「うん、一旦オルヴィエートへ戻ろうか。今日の成果をまとめておこう」


すると二人の元へ一台の自動車が近づいてきた。

ハルがよく目を凝らして見ると、それはどうやら警察車両らしかった。


車は二人のすぐ近くまで来ると停まる。

中から地元の警察官らしき男が二名出てきた。


警察官の二人組はハルとフランチェスカの二人の姿をしばらく見つめていた。

そして、ハル達に向かって何かを話し始めた。


「君達、済まないが私は英語しか話せないんだ。フランカ、彼らはなんと言っているんだ?」


フランチェスカが通訳をしようとするが、それよりも早く警察の一人が英語で話し始めた。


「こんなところで何をなさっているんです? ここは観光で来るような場所じゃありませんよ? ここら辺に来たと言うならオルヴィエートがお目当てでは? もし宜しければ私達が送りますよ?」


「あ、いや、この場所が目的地の一つでもあったんだ。私はハル・ストーナー。探偵業をやっている。ある事件について調査をしているんだ」


「探偵、ですか。事情は分かりましたが、誰の依頼で? それに、この家はもう長い事空き家です。ここも、あっちの方に見える家も、更にその先にある家も、どこも空き家ですよ。許可証か何かは持っているんですか?」


フランチェスカがバッグから許可証を取り出して、警察官へ渡す。

警察官はその内容を読むと、少し険しそうな表情を見せた。


「……なるほど、あの事件を調べているんですか」


「特定の依頼者、というのは今回は居ないのだがね。こちらにいるフランチェスカ、私の助手の為の一種のインターンとしてこの事件を選んだと言う事だ」


「わざわざアメリカからここまで、その為にですか……」


警察官は訝しげにハルに視線を向ける。


「私も驚いたが、君たちの言う通りオルヴィエートへの観光も含めている。良いところだなあの街は」


「ゆっくりしていくと良いですよ。歴史のある街です。しかし困った。たしかに許可証はあるようですが、それはこの家では無く向こうの、ほら、あそこにある民家の物ですよ」


「実は先程そちらからここへ来たのだ。聞き込みを行おうとしていたんだがね。空き家だとは知らなかった」


「あの事件があってから、皆この周りから居なくなってしまったんです。不気味ですからね。犯人は未だに野放しだ」


「無理もない。では、空き家とわかった事だし、私達ももうここを去ろう。フランカ、行こうか」


街まで送るという警察官の好意に感謝しつつ、それを断り、二人はオルヴィエートへと戻る為に街へ向けて歩き出した。


「……どう思うフランカ」


「偶然では無いでしょうね。警察官があそこに来たのは。何か探りを入れられているような感じがしましたし」


「私もそう思う。彼らは何かこう、立ち振る舞いが演技臭かった。第一、私と初対面であそこまで普通に話せる警察官なんぞ居る訳が無い」


「それは根拠としてはどうかと……」


オルヴィエートの街へ二人は戻ってきた。

フランチェスカは街を散策すると言ってハルと一旦別れた。

中世の街並みがそのまま残されているこの街は、確かにいくら歩き回っても飽きる事はなさそうだとハルは思いつつもそのままホテルへと戻った。


昨晩、自分の部屋に届けられた"警告"についてハルは、あえてフランチェスカには話していなかった。


「これは簡単な事件では無さそうだな」


ハルはそう呟きながらラップトップを取り出し、資料を纏め始めた。

事件後に何者が住んでいた痕跡、唯一手つかずのように残っていた書斎と地下室への扉、同じく空き家になっていた近隣の民家、そして突然現れた警察官二人。


資料を整理しながら、ハルは考察を続ける。


「確かに誰の依頼でも無くこんな事をしている私達は怪しまれても仕方がないか。警察官達からしてみれば首を突っ込まれているだけにすぎないからな」


ハルは携帯電話を取り出すと、誰かに電話をかける。


「……おう!? なんだアンタか! 久しぶりだな!」


「突然済まないなラーク。ちょっと相談したいことがあってな。実は今、イタリアである事件の調査をしているんだ。その事で少し君の手を借りたい」


「そう言う話だと思ってたぜ。アンタから連絡が来て遊びに誘われるとは思ってねえからな! ちょっと待ってな、キャメルの奴を起こしてくる」


ハルの電話越しにラークと呼ばれた男の怒号が聞こえてきた。

どうやらキャメルというもう一人の男をラークが叩き起こしているようだ。


ラークとキャメルの二人は、ハルがかつてアメリカで関わった、とある捜査で知り合った捜査官だ。

その事件では、潜入捜査官としてハルとラークが現場に立ち、キャメルは支援役だった。


「……いいぜ。それじゃ話してくれ。スピーカーにしてあるからキャメルもこの会話を聞いてる」


ハルは二人に話し始めた。



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