事件
イタリアの田舎にある民家。
周りには殆ど家も無い。
正午の太陽が広大な農地を照らす。
「早く隠れなさい!」
父親が叫ぶ。
その言葉を聞いて、少女は急いで地下室に駆け込んだ。
「母さんと父さんも早く!!」
少女は両親に向かって叫ぶ。
母親が地下室の扉の前まで走り寄ってきた。
「私達を待たないで! いいわねアリア、私達が戻ってくるまで絶対に扉を開けては駄目よ」
母親はそう言うと扉を閉めてしまった。
アリアは地下室の扉に鍵を掛け、じっと二人が来るのを待っていた。
扉の向こうから三発の銃声が聞こえた。
アリアは思わず耳を塞ぐ。
寒い地下室で、アリアはただ二人が来るのを待っていた。
どのくらい時間が経ったのかアリアには分からなかった。
扉に耳を当て、外の様子を伺おうとする。
物音一つ聞こえなかった。
「お父さん、お母さん!」
アリアは思わず叫んでいた。
すると、扉の方に近づく足音が聞こえた。
「お父さん? それともお母さんなの? 何があったの!? もう大丈夫なの!?」
アリアは扉越しに声をかける。
しかし、返事をしたその声は聞き覚えの無い男の声だった。
「君がアリアだね。なぜこんな事になったのか、君には分かっているはずだ。私と同じ苦しみを味わうがいい」
「だ、誰なの………? お父さんとお母さんは無事なの!?」
男からの返事は無かった。
黙って男はその場を去ってしまう。
それからおよそ12時間後に、アリアは地元の警察に救助された。
アリアの目に最初に映ったのは、変わり果てた両親の姿だった。