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睡の先、森林  作者: 欅いらくさ
第一章
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”パスト=リストア”へ

せっかくのフレンチが、ログハウスではないとは。

道端みちばたを行く若者たちが、何かを話しながら「えぇ~?ありえないわ!」と通過つうかしていった。


まったくだ。ありえちゃあいけない。


ふんわりした手作りの食パン、マイルドな香りをただわせるコクのあるコーヒー・・・。

そこまでは許せよう。なんでまたこんなさわがしく、悪寒おかんのする場所に来なければ?

どうにもこうにも、「アルバス」。君のせいだ。誰だかは知らんが。

畜生ちくしょうめ。


そんな悪態あくたいをついていても、ニコラスはふと視界に入った書籍しょせきに見入った。

『愛する人、秘密を』・・・愛し合っていた夫婦の話だ。

老衰ろうすい死した夫の遺書いしょを読むと、思い出とその一つ一つの隠し事がつづられている。

が、その秘密の中には、実は妻の――。


「ニコラス・バーモントさん。3番カウンターへどうぞ。」

「あぁ、はいはい・・・」

案内の女が目の前なのにもかかわらず、マイクで呼びかけてきた。うえ、香水くさい。

「で、バーモントさん。メモリー閲覧会館えつらんかいかんへ、どのようなご用件で?」

「あぁ、いや、、ニコラスでいい」

「えぇ。ニコラスさん」

「妻の…手紙に知らない男の名前がってたんだ。その、、、」

「あぁ、浮気調査うわきちょうさですね。自身のメモリーではなく、他者たしゃのメモリーでしたら――」

「私自身の、記憶が見たいんだ!」

年寄りだからとたたみかける女と、香水の香りに腹が立った。

女は一瞬いっしゅんたじろいだが、すぐに続けた。

「なるほど。ご自身じしんの忘れた記憶を、確認かくにんしたいと?」

「えぇ。その通りです」

「では、こちらへうかがってみてはどうでしょう」

彼女が資料しりょうとメモ書きをクリップした、ファイルを差し出してきた。

そこには、”パスト=リストアセンター”。要は過去復元かこふくげんである。

「え、こちらでなら記憶を思い出せるかと・・・?」

「申し訳ございません。こちらで管理が可能、そして閲覧許可を出せるのは、

亡くなった方の覚えている限りの記憶、そして生きている現在覚えているものだけなんです」

「そうですか…わかりました。そちらへ伺ってみます」

「こちらも、知り合いに連絡れんらくしておきますので、こちらに連絡先を書いておきます」


「どうも」


そういってカウンターを去る老人を、彼女は先ほどとは打って変わって心配そうに見つめた。

過去復元をしたいという客は、大概たいがいは嫌な記憶を忘れている故に、思い出したために心身しんしんに傷を負った者が多いのだ。


一方いっぽう彼は、すぐには確認できないことと

記憶を思い出すことに大きな不安をさらに抱える結果となった。

更新、遅れてすみません。

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