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Episode:06

◇Loa said

「ほんと、エレニアありがとね。どうにか間に合いそう」

「よかったわね。新入生がっかりさせたら可哀想だもの。

 それで、同室なんでしょ?」

「うん、そーなんだよね」

 昼食には早いものの、一仕事終えたロアとエレニアは、食堂でおしゃべりに興じていた。


「まさか、夏休み中に新入生が来るなんて、思わなくてさ。あーあ、これで独り部屋ともサヨナラかぁ」

「ロアったらよく言うわよ。もともと二人部屋なのに、部屋換えのたびに記録に細工して、うまってるように見せかけてたんじゃない」

「それ、言わないでってば」


 新入生の世話は、同室の者の役割だ。そのため空きは年長者の相部屋から、順に埋まっていく。

 だがロアは気楽な独りが好きで、新入生が来る春はいつもこっそり記録を書き換え、相部屋に誰も入らないようにしていたのだ。

 とはいえずっと記録がそのままでは、怪しまれてしまう。そのためシーズンが過ぎると元に戻していたのだが、今回はそれがアダになった。


「それにしたって、珍しいよね。普通は最低でも春までは、分校にいるはずなのに」

「そうよねぇ」

 シエラ学院はもともとが特殊なうえ、本校は分校からの選りすぐりが集まっている。授業の進度も速いし、何よりある程度の訓練がされていなければ、実地で即座に落ちこぼれだ。

 だからここへの直接入学はほとんどなく、年に一度、選抜試験を通り抜けた分校生が、春に入ってくるだけだった。


「まぁ、よっぽどデキるんだろうけど」

 それしか理由は考え付かない。

「そうだとしても、実技をどこで覚えたかよねぇ」

 エレニアの言うとおりだった。学科のほうはまだ分かる。世の中やたらと勉強が出来る人間は、一定数存在するものだ。

 だが実技はそうはいかない。だいいち戦闘技術など、普通は身につける術さえない。


「少年兵上がりとかかなぁ?」

「それも珍しい気がするけど」

 実戦で鍛え上げられたなら、実技のデキの説明はつく。が、それだと今度は学課の説明がつかない。シエラの本校へ直接入れるほど戦闘慣れしているようでは、正規教育など受けていないはずだ。


「……よく分かんないね。まぁ、会えば分かるか」

 ここで考えても仕方ない。悩むのが苦手なロアは、そう結論付けた。

「それでその子、いつ引き取るの?」

「昼ごろってたかな。でもイザとなったら、連絡あるだろうし」

 言いながらロアは、耳飾りに仕立てた通話石をいじる。


 学院が生徒に無償で貸し出している通話石は、何かと便利だ。こういう場合に呼び出してもらえるし、いろいろ制限はあるものの一対一の直接通話も出来る。

 そのほかこの石を使ったシステムは、映像の送信などにも応用され、いまや文明の根幹を成す技術になっている。


「名前は聞いたの?」

「いちおうルーフェイア=グレイスっていう女の子、までは聞いたんだけどね。でも、それだけ」

「ふぅん、そうなの」


 食堂の向こうのほうでは、なにやら食料の争奪戦が始まったようだが、二人は意に介さなかった。

 食べ盛りが多い学院では、この手のコトは日常風景だ。時には魔法や武器を使って、実戦さながらの奪い合いが起こることさえある。


「けどさ、いまさらチビの面倒見るなんて、思いっきりめんどくさくて。あーもうヤダヤダ」

「そうでもないわよ? けっこう可愛いんだから。

 まぁ確かに、その子の性格でかなり左右はされるけど――あ、外行かない?」

「――そうしよっか」


 二人はテーブルの上のトレイをそれぞれ手にとって、立ち上がった。

 後ろのほうで「バカやめろ」とか、「早く逃げろ」などといった声が聞こえてくる。



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