表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/27

Episode:05

「あの、学院長、どこかで……診てもらったほうが」

「そうですね。一応、診療所へ行って、検査でもしてもらいますか」

 学院長の言葉に内心驚く。思ってた以上にこの学院、至れり尽くせりだ。まさか検査の出来る医療施設まで、あるとは思わなかった。


「ついでに寮まで案内しますよ。行きましょう」

「はい」

 いっしょに昇降台で一階まで降りる。

 廊下は変わらずにぎやかだった。


「夏季休業中で、正規授業はありませんからね。この時期は騒がしいのですよ」

 あたしの思いを察したのか、学院長がそんな説明をしてくれた。

「あ、院長だ!」

 あたしと同い年くらいの生徒たちが、集まってくる。


「うっわ、すげー美少女」

「なになに? 新入生?」

 取り囲まれた。


「ねぇ、どこから来たの?」

「え、あ、えっと……」

 初めてのことに戸惑ってると、学院長が助け舟を出してくれた。


「ほらほら、困っていますよ。彼女はルーフェイア、これから学内を案内するところです。

 それよりあなたたち、そろそろ次の自主学習が始まる時間じゃありませんか?」

「あ、ほんとだ」

「やばっ!」


 わっと彼らが駆け出して、急に廊下が静かになる。

 どうやらこの学校は普通と違って、夏休みでも「自主」と称して、ある程度授業が行われてるみたいだった。

 そんな中を、学院長と並んで歩いてく。


「こちらが正面玄関ですね。おや、来るときに通った? それは失礼しました。

 この棟は、事務関係が集中しているんですよ」

 窓の外を指差しながら、いくつもある棟を、院長が順番に教えてくれる。


「あちらに、建物が幾つも並んでいるのが分かりますか?

 いちばん奥の二つは、左が低学年、右が中学年の校舎です。手前の少し低い建物は、高学年の校舎。

 あなたはまだ低学年ですから、奥の左側ですね」

 どれも似たようなデザインの建物だから、最初のうちは間違えそうだ。


「ちなみに管理棟のすぐ後ろが、講堂と図書館です。あと陰になって見えませんが、食堂と診療所がありますよ」

 言いながら学院長が、廊下を曲がった。

 講堂と図書館の間を抜けるとたしかに説明どおり、小さめの建物が二つ見えてくる。ガラス張りのほうが食堂みたいだから、残りが診療所だろう。

 その前で学院長が足を止める。


「ここからまっすぐ行った、校舎の手前が寮です。

 入り口のところに受付がありますから、細かいことはそこで訊いてみてくださいね」

「はい」

 それから学院長は、痛そうに手首を押さえながら、診療所に入っていった。


――何もないと、いいんだけど。


 来た初日に学院長にケガをさせるなんて、きっとこの学校初だろう。あとで結果が出たころに、もう一回謝りに行ったほうがいいかもしれない。

 そんなことを考えながら寮へ行こうとして、あたしは思いなおした。

 食堂のほうに足を向ける。


 まだお昼には早いけど、暑い上に学院長の話をずいぶん聞いてたから、喉が乾いてた。

 人の出入りもあるし、行けばなにかあるはずだ。そう思って食堂のドアに手をかける。

 でもなんか、妙に騒がしい。

 それに、この気配……。


 食堂の中から感じる独特の気配は、精霊を召喚する時のやつだ。

――こんな狭いところで、呼び出すなんて。


 常軌を逸してるってこのことだ。あんな威力があるものを部屋のなかで呼び出したら、よくて巻き込まれて大ケガ、ヘタすれば建物ごと吹き飛ぶ。

 ともかく止めたほうがいいと思って、あたしは建物の中へ急いだ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ