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抱えきれぬ想い ルーフェイア・シリーズ03  作者: こっこ
Chapter:04 慟哭、そして哀悼
24/27

Episode:24

 表題は「本校特別入学の件について」。日付などと合わせて考えると、ほぼルーフェイアのことに間違いないだろう。

「なんだろ〜」

 興味津々、面白半分で記録を覗く。


 中身は思ったとおり、ルーフェイアに関することだった。だがこの学院内や分校ではなく、誰か学外の人間――おそらくルーフェイアの両親――に宛てたものらしい。

 さすがにこれはまずいと、ロアは記録を閉じかける。

 が、その瞬間目に入った文字に、釘付けになった。


 隣にいる少女の、フルネーム。ロアには名乗らなかった、本当の姓。

――ルーフェイア=グレイス=シュマー。

 今までどれほど探しても見つからなかった、敵の名。


「なるほどね。キミがシュマーの娘だったんだ」

 ロアが立ちあがった。

「そう言えばこの間、『よく砲声が聞こえるところにいた』って言ってたもんね。他にもいろいろ。

――ボクもバカだな。なんで気づかなかったんだろう?」


 思い返せば、何度もそれらしいものは、あったのだ。

 言動のあちこちで、少年兵あがりなことを匂わせていた。事実、桁外れの戦闘力だった。何より、両親が健在ながら前線へと出る子供。ふつうならあり得ない話だ。


 それなのに疑わなかったのは……外見と性格とに騙されたからだ。

 小柄で、折れそうに華奢な美少女。

 おとなしく、すぐ泣き出す性格。

 かのシュマーの人間というなら、もっと猛々しいものだと思い込んでいた。


 いずれにせよ、敵は見つけた。

 ロアの瞳に危険な光が宿る。

 何かを感じ取ったのだろう、少女がうろたえながらも身構える。


「あの……?」

「死ねっ!」


 問答無用とばかりに、ロアが手近にあったペーパーナイフを投げつける。

 たかがペーパーナイフとは言え、これは金属製でしかもそれなりの重量だ。投げ方によっては十分凶器になる。

 正確に少女の眉間へと向かって、至近距離からナイフが飛ぶ。


 だがルーフェイアのほうも、それで決めさせたりはしなかった。

 放たれた凶器を戸惑った表情をしながらも、一瞬のうちに腕をかざして防ぐ。

 にぶい音がしてナイフが少女の腕に突き立った。細いとはいえ鍛えられた筋肉と骨とは、その程度では砕けない。

 が、それでも一瞬の隙が生まれる。


 逃さずロアは間合いを詰めた。同時に強烈な蹴りを繰り出す。

 それをルーフェイアは、ふわりと身体を入れ替えただけで避けてみせた。

(――さすがに、シュマーの人間なだけあるかな)

 生半可な攻撃では仕留められそうにない。


「先輩?」

 可愛らしい顔に困惑を浮かべながら、少女が問う。まさか彼女も、いきなり攻撃されるとは思っていなかったようだ。


「可愛い顔して、とんだ魔物だよね!

 キミたちのおかげで、ボクの家族は全員死んだんだ!!」

「え……」


 ルーフェイアの動きが止まった。

 すかさずロアが跳びかかる。

 そのまま組み敷いて、細い首に手をかけた。


 悲しげな表情。

 だが構わず、ロアは少女の首を締め上げる。

 妹と同い年の少女。

「これでひとつ、貸しを返してもらう!」



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