Episode:22
本当のことを言うとやってみたいけど、怖かった。なにしろやっているのは、見つかったらタダじゃすまないものだ。だから失敗できない。
でもあたしの腕じゃ、何かヘマをする可能性が高かった。
「あはは、ルーフェイアは慎重だねぇ」
ロア先輩が明るく笑う。
「だいじょぶ、ボクが後ろついてって、フォローするからさ」
「あ、それなら……」
気持ちを落ち着けて、教わったとおり始める。
まず全体の構造を見て、どこが動いてるかをチェックして……。
「そうそう、そこ気をつけて。ほら、足跡残してるよ」
「え? あ!」
通信網上に残る痕跡を消しながら、ひとつひとつ教わったとおりやっていく。
――あれ?
気になるものを見つけて、もう一度画面を確認したけど、間違いなかった。
「あの、先輩、これ……」
「学院長の魔視鏡だね。この時間に動いてるなんて、珍しいや」
先輩が言うには学院長、こういった新しい道具は苦手らしい。だから仕事をしている昼間はともかく、夜になると早々に止めてしまうんだそうだ。
「止め忘れかな? 見てみよっか」
「あ、はい……」
ちょっとだけ気が咎めながらも、石の中の記録を覗いてみる。
「ガッコの資料ばっかだなぁ。たいした物ないね」
なんだかほっとする。やっぱりこういうのには、あたしは向いてないのかもしれない。
「学院長も大変だね、こんなくだらないことまで訊かれるんだ。こんど会ったら、親切にしとこっか」
「ですね……」
本当に細かい雑務から院の方針、果ては学院生が起こした不祥事の後始末まで、ありとあらゆることが山盛りだ。
「どうする? も少しやる?」
「え? あ、いえ、今日はもう……」
なんだか疲れてしまって、これ以上続けられそうになかった。前線にいるほうがまだ楽だ。
「そだね、こういうの最初、すっごい疲れるし。
――あ、最後にこれだけ見てこっか」
あたしの代わりに先輩が操作して、記録の一覧が現れる。
「これ……伝言書?」
「そそ。でもこっちも、たいしたもんないね」
言いながら先輩が、一つの伝言に目を留める。
「これ、ルーフェイアのことだよね」
「え?」
驚いて表題を見ると、たしかにあたしの転入に関することらしい。
「なんだろ〜」
興味津々という表情で、先輩が中身を開く。
イヤな予感がした。