表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/27

Episode:18

 その晩、あたしはベッドの中で寝返りばかりうっていた。

 学院の夜は、とても静かだ。

 ここはなんの音もしない。銃撃の音も、砲撃の音もしない。


 静かすぎて眠れなかった。

――これが、平和なのかな?

 こんな穏やかさ、とても信じられない。

 逆に言えばそれだけ、常に気を張っていたんだろう。でもそれは当たり前だったし、何より生き残るにはぜったい必要なものだった。


 そっと起き上がる。

 柔らかいベッド。清潔な部屋。どれもあたしにとっては、馴染みが少ないものばかりだ。

 なんとなく不安になって、枕元に置いておいた太刀を手にする。

 これだけは変わらなかった。


 柄を握っていると、いろんなことが脳裏をよぎる。

 炸裂する砲弾。えぐられていく大地。引き裂かれて死んでいく兵士たち……。


 でもなぜだろう?

 あの地獄の風景が、呼んでいるような気がする。

 無念の死を遂げた亡霊たちが、囁いてる。

 ここへ帰れ、と。


 でももう、あたしはイヤだった。ほんの少しでいいから、血の臭いから離れたかった。

 それなのに亡霊たちは追いかけてきて、囁き続ける。

――ここへ帰れ、と。


 あたしは頭を振ると、立ちあがった。

 確かにいつかは帰るだろう。それが約束だから。

 けど、今だけは……。

 もう寝つけそうになくて、寝室のドアに手をかけた。共用スペースの端末を使えば、なにか適当に暇を潰せるだろう。


 そして、気が付く。

 こんな遅い時間なのに、共用スペースからかすかに物音がしてた。

 魔視鏡の共鳴音――それに、操作盤を叩く音。どうも、先輩も起きてるらしい。

 驚かさないようにと思って、あたしはそっとドアを開けた。


 先輩が端末に向かって、何かしてる。

 なんだかすごく真剣な感じで声をかけられなくて、そのまま魔視鏡に映るものを、あたしは後ろから眺めていた。


――なんだろう、これ。

 ふだん目にする映像とかじゃなくて、何か文字ばっかりだ。それが先輩が操作するたび、すごい勢いで流れていく。

 しばらく見ているうちに、やっと幾つか見知った単語があることに気がついた。これならたぶん……記録石の中のデータ一覧だ。


 けど、自分のをこんなふうにして見るのは、聞いたことがなかった。だいいちこんな変わったことをしなくても、簡単な操作で詳しく見られる。

――だとしたら、何を?

 しばらく考えて、あたしは思い当たった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ