Episode:17
どうしていいか分からず、それでも泣くのだけはやめようと必死に涙をぬぐっていると、イマドが苦笑しながら話しだした。
「先輩、こいつここ来る前、けっこーいろいろヤバかったんですよ。んでその反動で、すぐ泣いちまって」
「ありゃ、そうだったんだ」
この程度の説明なのに、意外なくらいあっさりと先輩が納得する。
「学院来てほっとして、そうなる子けっこういるもんね。
――ルーフェイアも大変だったねぇ、でもここならもう、だいじょぶだからさ」
言いながら先輩、あたしの頭を小さい子みたいに、がしがしと撫でた。
「まぁコイツの場合、最初っからそうとう泣き虫ですけどね」
「イマド、ひどい……」
何もそんなこと、ここで大きな声で言わなくたっていいのに。
先輩なんてそれ聞いて、また笑い転げてる。
「俺さ、ヴィオレイ。名前なんての? もうクラス決まったんだ?」
「おい、なに抜け駆けしてんだ!」
こっちはこっちでお構いなしだ。
でも……なんだかちょっと、楽しい。
「ほらキミたち、ルーフェイアおどかさない。あとこの子のクラス、まだ決まってないよ。いまクラス分けのテスト、受けてるとこだから。
――Aクラスだと思うけどね」
なぜか自信たっぷりに、ロア先輩が言う。
「そうそう、それでこれから、この子連れて訓練でもしようかと思ってたんだよね。だから、キミたちも来なさい」
「え、マジっすか?」
さすがにこれにはびっくりしたみたいで、イマドたち三人が目をぱちくりさせる。
「大マジだよ。てかね、キミたちだってこの子、同じクラスのほうがいいんでしょ? なら、協力してあたりまえだし」
反対意見はすべて却下、そんな威圧感で先輩が言い放った。
「おれ、欲しい限定販売あったのに……今日発売なんだぜ……」
「そこ黙る!」
見ているだけで楽しいやりとり。いつの間にか泣くのをやめて、笑っている自分に気づく。
あたしが夢見ていた世界が、いま目の前にあった。