表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/27

Episode:12

「食堂で食べられないもの、置くわけないじゃん……。ほら、これとかどうかな?」

「これ……ケーキ、ですよね? 何でこんなに、種類……あるんでしょう?」

 何かもう、次元そのものが間違っているらしい。


「まさかさ、食べたことないの?」

「えっと、あります。白いのとか……あと、黒いのも」

 その場で貧血を起こさずに済んでよかった、そうロアは心底思った。


 シエラ学院はワケありの生徒が多く、稀に少年兵上がりまでいるため、たしかに一般常識からズレている者はいる。

 いるのだが……。


「ここまで本気で何も知らないって、初めて見たなぁ」

「すみません……」

 視線を落として謝る姿は可愛いが、この子の知識や能力は、問題になるレベルで偏っているようだった。


「とりあえず、ボクが選ぶよ。えーっと、あんまり甘くないほうがいい? じゃぁこれかな」

 放っておいたら日が暮れるまで迷っていそうで、適当に選んでやる。

「ほら、そこ席空いてるから、座って座って。ボクがこれ持つからさ」

 任せるのは不安すぎて、ロアはトレイを自分で持ち、少女を先に行かせた。ちょこん、と座った目の前に、ケーキと飲み物とを置いてやる。


「きれい……」

 フルーツ類が宝石のように飾り付けられているのを見て、ルーフェイアがうっとりと言う。

「本土からちゃんと、本職来てるからね」

 もうだいぶくたびれたお爺ちゃんなのだが、腕は確かだ。ケンディクの店は子供に譲って、自分は孤児を喜ばせてやろうと、ボランティア同然でここで働いてくれている。


 ひと口食べると、少女の顔がほころんだ。

「……おいしい」

「あはは、お爺ちゃん聞いたら喜ぶよ」

 食べて喜ぶ姿がいちばんのお礼、それがお爺ちゃんの口癖だ。

 おいしそうに食べるルーフェイアを見ながら、ロアもお気に入りを口に運んだ。


「そいえばたしか、クラス分けのテストとか、あったと思うんだけどさ。どだった?」

 食べながら、思い出して訊ねる。

 この学院は毎年春になると、前年の成績でクラスが分けなおされる。そして新入生はあらかじめ、分校で編成用の試験を受けてくるはずだ。

 いまは春ではないが、試験が免除になるとは思えなかった。


「えっと、本校入学の試験は、受けました。

 あと学院長が、クラス分けの試験……たしか、あとでって……」

「うっわ、それヒドっ。一回やってんだから、それ使えばいいのに」

 テストなんていうオソロシイものを何度も受けるなど、考えるだけでも気が滅入る。


「なんか、時期が半端で、分校のテストじゃダメって……」

「あー、そゆことか」

 時期も時期なうえ、分校を飛び越えての特例入学だからだろう。万が一レベルの違いすぎるクラスに入ったりしたら当人とクラスメイトの双方が不幸だ。

 そのために万全を期しての再テストなのだろうが、やはり気の毒だった。


「んじゃさ、教えてあげよっか? 少しでもやっとけば、なんか違うかもだし」

「いいん……ですか?」

「もちろん!」

 ロアとて自学年のAクラスだ。四つも年下の勉強をみるくらいなら、どうということはない。


「このあとどうせ時間あるから、部屋帰ったらおさらいでもしよ」

「はい」

「よし決まり、んじゃまずは腹ごしらえ!」

 よく分からないこじつけをして、ロアはケーキのおかわりをしに立ち上がった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ