何も知らない日常
「はなぞの養護施設」と書かれた表札のある小さな施設から一人の少女が急いで出てきた。
その少女は最寄りのバス停まで走っていた。
少女がバス停に着いた時にはまだバスは来ておらず、ひと安心していた。
「愛莉、今日もギリギリだね」
声のする方へ視線を移せば、赤茶髪が映える美少女が立っていた。
「朝苦手だから、しょうがないよ」
余裕そうな少女に対した愛莉は文句を言ってため息をついた。
少女は微笑むだけでそれ以上は言わない。
バスが来ると二人共、乗り込んだ。
教室に来ると、相変わらずというかいつも通りの騒がしさがあった。
二人共自分の席に鞄を置いて、いつもいるグループのところへ行った。
「おはよ」
一言言えば、全員振り向いた。
少し真剣そうな雰囲気を漂わしていた。
「どうしたの」
「実は、すごい写真を手に入れたんだ」
二人共首を傾げた。
自慢げにいう少年は一枚の写真を出した。
巨大な物が二つ、町の中にある写真だった。
「何これ、全くわかんないけど」
「これは『遺跡』と『ロオズ』が戦っている写真なんだ!」
少女は関心していたが、愛莉はそうでもなかった。
「愛莉はノリ悪いな」
別の少年がいうが愛莉は気にも留めない。
「別に、そこまでどうとかないしさ」
そういいながら愛莉はその写真から視線を外せなかった。
一緒にいた別の少女がいう。
「でも、写真を取るの規則違反じゃないの」
「公共の場に出回せなければいいんだよ」
少女は納得がいってなかったみたいだった。
チャイムが鳴り、それぞれ席に着いた。